人間は年齢を重ねるごとに筋力が衰え、運動機能をはじめとして様々な場面で人の助けを必要とするようになります。
また近年では長寿化に伴って、認知症や脳卒中の発症率も上昇傾向にあります。
認知症に伴って認知機能に異常が現れたり、脳卒中の後遺症で寝たきりや言語障害などが残ってしまった場合も同様に、日常生活において様々なサポートが必要になってきます。
ご紹介したような理由から家族が手助けを必要としている状態になると、介護の悩みがつきなくなってきます。
介護の悩みについては家族の問題として抱え込んでしまい、介護をする側の家族が大きな負担を抱え込んでしまっていることも珍しくありません。
そこで今回は、主に家族に対する介護の悩みを誰に相談すればいいのか、どんな場所が共に解決に向かって歩んでくれる存在なのかについてご紹介していきます。
今まさに介護の悩みを抱えている方はもちろんのこと、家族の様子に違和感を感じている方も是非参考になさってくださいね。
みんなが感じる介護の悩みとは
介護の悩みで最も多く寄せられるのは、肉体的な辛さです。
大切な家族とはいえ、1人の大人に対する食事や排泄、また入浴に関する介助を行うことは肉体労働に近い負担がかかり、辛いと感じる方がほとんどです。
また介護が必要な状態からクライアントが運動機能や認知機能を回復させることは非常に稀有な例で、大半の方は日を追うごとに介護が必要な時間や量が増えていきます。
24時間体制での介護が必要になってきたり、数時間おきの見守りが恒常的になってくると、介護を担当する家族の睡眠時間が削られ、肉体的な疲れが慢性化してしまいます。
同時に精神的な辛さも、介護の大きな悩みです。
家族の老いや認知機能の低下と向き合うこと、時にせん妄や他害といった症状と向き合うことは、介護をする側の家族にとって、精神的な苦痛を伴います。
介護の悩みは誰に相談すればいいの?
介護の悩みは、どんなに家族のことを大切に思っていても誰しもが抱くものです。
一人で悩みを抱えたり、家族間でのみ抱え込むのではなく、関係各所に相談を行って社会全体で介護の悩みに向き合うことが大切です。
介護保険制度をまだ使っていない場合の介護の悩み
クライアントが65歳以上であっても、介護保険制度を利用することなく家族だけで在宅介護を行っている場合は、一番初めに地域包括支援センターに連絡をとりましょう。
地域包括支援センターは社会福祉に関する相談を受け付けている窓口で、市区町村によって設置されています。
様々な介護サービスや行政とクライアントを結ぶ架け橋となってくれる存在ですので、介護の悩みはまず地域包括支援センターと覚えておきましょう。
地域包括支援センターの業務内容
地域包括支援センターは、主に4つの業務を中心にサービスを提供しています。
地域包括支援センターの業務①総合相談・支援
介護の悩みに対して一番最初に相談に対応してもらう窓口が、地域包括支援センターのなかでも総合相談・支援に関する業務を担っている部署です。
介護保険制度を利用する際の手続き方法や、現状を打開するために必要と思われるサービスの選択・紹介など、介護の悩みならどんなことでも対応してもらえます。
地域包括支援センターの業務②介護予防ケアマネジメント
介護度認定において「今は介護を必要としていないが、近い将来介護が必要になる兆候が見られる」と認定されると、「要支援」という区分になり、介護予防サービスの利用が可能になります。
介護予防サービスの案内や介護予防ケアプランの作成なども、地域包括支援センターでおこなっていますので、介護サービスを利用する前の段階から、地域包括支援センターにお世話になることもできます。
地域包括支援センターの業務③権利保護
高齢になり認知機能や身体機能に衰えがみられるようになった状態であっても、地域のなかで安全に暮していくためには、人としての尊厳や権利が守られている必要があります。
そのため地域包括支援センターでは、高齢者の権利に関する相談を受け付けています。
具体的な例としては、以下の通りです。
- 消費者被害の相談と対応
- 虐待の早期発見と対応
- 成年後見制度の紹介
高齢の家族に上記のような問題が発覚した場合は、介護の悩みと併せて地域包括支援センターに相談しましょう。
地域包括支援センターの業務④包括的・継続的ケアマネジメント支援
直接クライアントや家族に関わる部分ではありませんが、介護サービスを利用中のクライアントや家族が真っ先に頼る存在であるケアマネージャーの教育・指導的な業務を行うのも、地域包括支援センターの役割です。
介護保険制度を利用中の介護の悩み
要介護1〜5に該当し、介護保険制度を利用していても、介護の悩みはつきません。
介護保険制度を利用中している間の介護の悩みは、介護保険サービスを利用している事業所のアテンダントや、ケアプランを作成してくれているケアマネージャーなどに相談すると対応がスムーズです。
例えば「認知症が進行しており、日中の訪問介護だけでは支援が足りないと感じる」「在宅介護に限界を感じているので、介護施設への入所を検討したい」という場合は、ケアマネージャーの判断により介護度の再認定を申請し、現状に見合った介護度の認定とサービス受給量を増やすことが可能になってきます。
何かあったらまずはケアマネージャーかアテンダントに連絡を取りましょう。
介護カフェや認知症カフェの利用もおすすめ
「介護の悩みや愚痴を聞いてほしい」「介護のストレスを誰かと共有したい」という時には、近年広がりをみせている介護カフェや認知症カフェなど、同じ悩みをもつ人たちが集うコミュニティへの参加もおすすめです。
「介護の悩みを誰に相談すればいいか分からない」「知り合いには家族のことを相談しづらい」という場合は、介護の悩みを抱える仲間同士で会話をすることで、気分転換につながったり、悩み解決の糸口が見えてきたりします。
外出が難しい方にはオンラインサロンなども普及しつつありますので、自身のライフスタイルや介護のスタンスに合った居場所を見つけてみてください。
介護の悩みは、家族で抱え込まないで
介護の悩みに押しつぶされそうなとき、誰に相談するとよいのかについて簡単にご紹介いたしました。
近年は親戚付き合いや近所付き合いが希薄になりつつあり、介護の悩みを家族のみで抱えてしまいがちです。
介護の悩みは社会制度として全国の市区町村が運営している地域包括支援センターを中心に、介護サービスの事業所やアテンダント、ケアマネージャー、地域の人々に打ち明け、共に解決していくことが大切です。
クライアント自身も、そして介護をする側の人たちも笑顔で介護生活を送ることができるよう、協力して対策をしていきましょう。