家族の認知症介護に限界を感じたら。在宅介護の次のステップはどうなるの?

大切な家族に認知症の症状が現れてしまった時、まずは在宅介護で向き合うというご家庭は非常に多いです。

超高齢化社会の日本では誰もが介護の問題を避けて通ることは難しい状況にありますが、なかでも認知症は進行性の脳の病気ですので、家族の力だけで向き合うことは非常に困難です。

株式会社土屋グループでもこれまでに日本中からたくさんの「認知症の在宅介護に限界を感じています」という相談を伺ってきました。

現在の日本では認知症に対する理解が進み、介護保険制度に基づく介護サービスなどでも認知症のクライアントに寄り添ったサービスを提供できる場がどんどんと増えてきています。

そこで今回は認知症の介護に限界を感じる前に考えてほしい、解決策や介護施設の選択肢などについてご紹介していきます。

目次

認知症介護の辛さ

認知症は脳の神経細胞が壊死したり損傷することによって起こる、認知機能の低下がみられる状態のことです。

特に高齢者の発症リスクが高いと考えられており、2025年には65歳以上の認知症患者数は675万人、高齢者のおよそ5.4人に1人は認知症ということになると推計されています。

身近な存在である認知症ですが、根本から症状を改善する治療薬は見つかっておらず、徐々に進行する認知機能の低下やせん妄・徘徊などの周辺症状に向き合いながら過ごしていかなくてはいけません。

また本人に認知症の自覚がないことが多く、在宅介護を行う家族は周囲や地域に配慮しながら認知症の症状に24時間向きあうことになり、体力的にも精神的にも大きな負担が伴います。

【参照】日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(国立保健医療科学院)

認知症の介護に限界を感じた時の解決策

認知症の介護を頑張るなかで「もう無理かも」「つらくて限界」という感情が芽生えてしまったら、すぐに行政や自治体に相談すべき段階です。

できれば「そろそろ無理かも」「ちょっとしんどいなぁ」という段階でSOSを発信し、以下にご紹介するような解決策を検討してみましょう。

利用する介護サービスの見直し

在宅で認知症介護を行っている方は、現在利用している居宅サービスの量を見直したり、新しいサービスの利用を検討してみましょう。

特におすすめなのは、認知症クライアントにとって日中の居場所となるデイサービスの利用です。

物理的に日中の数時間を離れて過ごすことで、お互いに安心してリフレッシュすることができるデイサービスは、認知症のクライアントに特化した事業所も普及しつつあります。

近隣に認知症の介護を専門とするデイサービスがあるかどうか探してみましょう。

またデイサービス以外にも、訪問介護や定期巡回など認知症のクライアントが自宅で暮らし続けるための居宅介護サービスはいくつか展開されています。

改めてケアマネージャーに現状を説明し、利用することができる介護サービスを積極的に活用していきましょう。

介護認定の再申請

すでにデイサービスや訪問介護などを利用している場合でも、認知症の症状が進行していて要介護度が高くなっていると認められたときには、利用することができる介護サービスの量が増えるかもしれません。

今現在利用している介護サービスだけでは限界という場合は、ケアマネージャーに相談して、必要に応じて介護度を再認定する手続きをとることをおすすめいたします。

介護施設への入所を検討する

認知症のクライアントに対して24時間体制での介護を提供しているのが、入所型の介護施設です。

現在の介護保険制度では、クライアントの要介護度に応じて利用できる介護施設が複数タイプ展開されています。

介護施設は、要介護度3以上で入所可能な特別養護老人ホーム(特養)、要支援2以上の認知症クライアントが共同生活を送るグループホームなど様々な形態で運営されており、費用や提供されるサービスなどはそれぞれの施設によって大きく異なります。

特に認知症の症状が出現しているクライアントは、症状が進行すると今以上に集団生活に馴染むことが難しくなったり、入所したいと思った時に地域の施設に空きがないなど、スムーズに施設探しが進まない場合もあります。

認知症の介護に限界を感じてしまったり、限界が見えてきた段階で、将来的な可能性のためにも一度介護施設への入所を検討し、見学に行くことをおすすめいたします。

自分自身を大切にする

認知症のクライアントと在宅介護で向き合っていらっしゃるご家族の多くは、認知症を発症している方をとても大切に思い、一生懸命介護していらっしゃる方ばかりです。

しかしながら家族を大切にするあまり、自分自身の心身のケアを忘れがちになってしまっている方が非常に多い印象です。

例えば近年では認知症カフェ(オレンジカフェ)と呼ばれる、認知症のクライアントやその家族が集まって会話を楽しむことができる場所が展開されている地域もあります。

家族会や交流会などが自治体の主導で行われていたり、オンラインの掲示版やSNSでの相談の場など、認知症を発症した本人だけでなく、在宅介護を続けるご家族が孤立しないように支える場所が様々に展開されています。

自分にあった居場所を見つけて、同じ思いを抱える仲間との時間を共有することで、限界を感じていた心に余裕を感じることもできますので、おすすめです。

認知症の介護に限界を感じたら。遠慮なく周りにSOSを発信しよう。

大切な家族を最後まで支えたいと思う一方で、進行していく症状によって介護を担当する家族に大きな負担がかかるのが、認知症の在宅介護の特徴です。

認知症の介護で限界を感じる度に「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込んでしまう方も多くいらっしゃいますが、認知症は家族だけで抱えるべき問題ではありません。

行政や仲間にSOSを発信し、しかるべき支援を受けることこそが、認知症の介護を成功させる秘訣なのです。

認知症の介護で限界を感じそうになったとき、また限界に達したと思ったときは、遠慮なく周囲のサポートを利用していきましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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