認知症と向き合うために。どのような介護施設に入居することができるの?

脳に様々なトラブルが生じることで記憶や思考などの認知機能に影響が出てしまう、認知症。

種類や原因は様々ですが、認知症とよばれる状態になると中核症状(記憶障害・実行機能障害・失語や失認識など)と周辺症状(抑うつ・徘徊・暴言・せん妄失禁など)が表れ、日常生活を手助けなく送ることが困難になってきます。

そのような認知症クライアントの日常生活を支える役割を担っているのが、介護保険制度に基づいて提供される介護サービスです。

今回は認知症と判断されて要介護認定を受けたクライアントが入居することのできる介護施設についてご紹介していきます。

目次

認知症クライアントに対する介護サービス

認知症は脳の細胞や機能に異常が生じることで出現する症状です。

進行を遅らせたり、症状を緩和したりする効果のある薬はいくつか開発が進んでいますが、現在の医学では根本的な治療薬は見つかっていません。

そのため認知症クライアントに対して介護サービスを提供する場合は、認知症の症状を正しく理解し、その特徴に合わせた対応を行う必要があります。

たとえば認知症の代表的な症状として、記憶障害が挙げられます。

高齢が原因の健忘症の場合は「待ち合わせの時間を忘れた」「買い物で何を買ったか忘れた」などのもの忘れを起こすことがありますが、記憶障害の症状が出現している認知症のクライアントは、例えば待ち合わせをしたことや、買い物をしたことを記憶しておくことができません。

さらにせん妄の症状も発症した場合は「相手が自分を陥れようとウソをついている」「財布からお金を取られた」というような被害妄想に陥ることがあります。

このようにもの忘れと記憶障害だけでも高齢者と認知症クライアントには大きな症状の違いがありますので、認知症に悩んで介護施設への入所を検討している場合は、認知症の対応に適した施設を探す必要があります。

認知症クライアントが入所可能な介護施設

現在の日本では、認知症の状態にあるクライアントが入所できる介護施設としては4形態が該当します。

それぞれの介護施設ごとに予算や介護サービスの内容が異なりますので、メリット・デメリットを鑑みながら入所施設を検討していきましょう。

また認知症クライアントが介護施設に入所する場合は、要介護度に応じた施設を探す必要がありますので、合わせてチェックしていきましょう。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは、介護保険制度に基づく公的な介護施設です。

認知症の有無に関わらず、介護度認定で要介護3以上と認定されているクライアントが入所することが可能となっています。

また例外として、要介護1もしくは2に該当するクライアントであっても、認知症が原因で日常生活を送ることが困難な場合は特例として入所が認められるケースもあります。

特養の費用

費用は個室や多床などの部屋条件、また近年人気の高い少人数制施設のユニット型などの運営形態によって異なりますが、一般的には自己負担が10万円以内に収まるケースがほとんどです。

また公的な介護施設のため、入所一時金がかからないという特徴があります。

特養で提供されるサービス

特養では中程度から重度の要介護クライアントを対象に、24時間の介護サービスを提供しています。

リハビリを中心に食事や入浴の身体介助、掃除や洗濯などの生活支援、また看取りの提供を行っています。

ただし24時間体制での医療提供体制の整備は義務となっていますので、常時の医療的ケアを必要とされているクライアントの入所は断られるケースもあります。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

グループホームのうち、要支援2もしくは要介護1以上の認知症クライアントが入所することのできる施設が、認知症対応型共同生活介護です。

認知症の特性に合わせてユニット制で運営されており、1施設あたりの入所者が最大でも18人という小規模な介護施設になりますので、落ち着いて生活を送りやすいという特徴があります。

グループホームの費用

グループホームへ入所する際は、おおよそ7万円前後の入居一時金が必要となります。

月額の利用料金は12万円程度ですが、地域によって利用料金に含まれる賃料に大きな差がありますので、事前にチェックしておきましょう。

グループホームで提供されるサービス

グループホームでは、1ユニット5人~9人の少人数集団で共同生活を送ります。

料理や掃除などは各自で分担して行い、手助けが必要な部分に対してアテンダントからの介助を受けるイメージです。

認知症の症状が表れていても、共同で自立した生活を送りたいという考えを持っているクライアントに適した施設です。

介護付き有料老人ホーム

高齢者向け住宅の中でも、認知症クライアントの利用率が高いのが介護付き有料老人ホームです。

要介護1~5に該当するクライアントが入居することのできる介護施設となっています。

また介護付き有料老人ホームは特定施設入居者生活介護(特定施設)に指定されているため、施設設備や提供サービスの内容が必ず一定基準を満たしているという安心感があります。

介護付き有料老人ホームの費用

介護付き有料老人ホームは民間企業が運営していることが多く、その料金に大きな幅があります。

入居一時金に関しては平均値で25万円程度となっていますが、100万円単位で必要な施設も珍しくありません。

また月額の利用料金も平均値20万円を基準に、大きく幅があります。

提供されるサービスの内容や施設設備など中心に大きく差が生じますので、入居を決める前に複数の施設を見学させるようおすすめいたします。

介護付き有料老人ホームで提供されるサービス

民間によって運営されている介護付き有料老人ホームは、他者の介護施設との差別化を図るために、各施設で食事やイベント、レクリエーションなどに趣向をこらして様々なサービスを提供しています。

施設によっては運営基準以上に手厚い人員体制を敷いており、充実のサービスを提供しています。

介護型サービス付き高齢者住宅(介護型サ高住)

近年は、民間企業が運営しているバリアフリー対応の賃貸住宅であるサービス付き高齢者住宅のなかでも介護サービスが付帯した形態も充実しています。

特に介護型サ高住のなかでも認知症に対応している介護施設であれば、生活の自由度を保ちながら必要な支援を受けて過ごすことが可能です。

介護型サ高住の費用

サ高住は民間企業が運営しており、入居一時金・月額費用ともに施設ごとの差が大きくなっています。

特に認知症にも対応している介護型サ高住の場合は入居一時金が10万円~50万円程度、月額費用が10万円~40万円程度であることが一般的です。

サービスの内容や提供体制によって価格が変動しますので、家計と希望するサービスを鑑みた選択が必要です。

介護型サ高住で提供されるサービス

一般的にサ高住は、賃貸住宅に近い形態で過ごすことができる介護施設です。

基本的には自立した生活を送りながら、必要に応じて食事の手配や生活支援サービスの提供をお願いすることも可能になっています。

認知症のクライアントが介護施設を探すときは、必ず「認知症対応」の施設をチョイスしよう。

認知症の症状は、健康な高齢者のもの忘れ(健忘症)や運動機能の低下と異なります。

そのため認知症に悩むクライアントが介護施設を検討する際は、きちんと認知症の知識をもち、正しい対応をしてくれる介護施設への入所希望を出す必要があります。

料金や提供されるサービスの内容、そしてクライアントの状態をしっかりと吟味して、認知症をもつクライアントに適した介護施設を選択するよう心がけましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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