認知症の介護負担。家族が感じる負担やストレスと、その解決方法とは。

認知症は、脳細胞が損傷してしまったり壊死してしまうことによって、周囲の物事や自分の状態を正しく把握して適切に行動する「認知機能」に異常が生じてしまう状態です。

もの忘れや失行・失認に代表される中核症状のほかに、せん妄や徘徊・他害などの行動・心理症状が出現し、日常生活にサポートが必要になってきます。

日本では2012年時点で、65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症を発症していると推計されており、今後も高齢者の人口比率が高まることによって認知症と介護の問題は、より一層大きな社会問題になることが予想されています。

そこで今回は、大切な家族が認知症と診断されたときに在宅介護で生じる介護負担を中心にご紹介していきます。

【参照】知っておきたい認知症の基本 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)

目次

認知症の在宅介護とは

認知症は脳細胞のどの部分がダメージを受けたのかによって、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・血管性認知症・前頭側頭型認知症などに分類されます。

それぞれの認知症によって出現しやすい症状や症状の進行スピードは様々ですが、いずれの場合も認知機能の低下に伴って、日常生活に支障をきたし、段階を追うごとに介護が必要な状態となります。

認知症で在宅介護が必要となる症状の具体例は、以下の通りです。

記憶障害

健忘症によるもの忘れとは異なり、認知症に伴うもの忘れは体験したこと自体を丸まる忘れてしまう傾向にあります。

そのため調理中であることを忘れて火をつけたまま外出する、現金の置き場所を忘れる、薬を常用していることを忘れているので飲み忘れが生じるなど、日常生活に様々なトラブルが発生します。

せん妄や幻覚等の行動・心理症状を併発するケースも多く、危険やトラブルが発生していないかどうか、常に介護者が意識を配らなくてはいけません。

見当識障害

時間や場所が認識できなくなり、家族や友人の見分けがつかなくなる症状が、見当識障害です。

特に昼夜の概念がなくなることによる睡眠障害や徘徊、また季節にあった服装を選ぶことができなくなる、自宅を忘れ帰宅できなくなるなど、24時間体制での見守りが必要になります。

実行機能障害

物事の段取りが理解できなくなってしまうのが、実行機能障害です。

リモコンの使い方がわからなくなって室温の管理ができない、入浴のためにお湯を張ったり着替えを準備することができないなど、日常生活の手順を忘れてしまう症状です。

抑うつや無為・無関心などから食欲減退につながってしまうと一気に衰弱が進んでしまうため、定期的な見守りで声かけを行わなくてはいけません。

認知症の見守りで生じる介護負担

認知機能の低下に伴う上記のような症状が原因で見守りが必要となる認知症のクライアントに対して、家族にはどのような介護負担が生じているのでしょうか。

肉体的な負担

認知症の特徴として、時間の概念が喪失してしまったり、睡眠障害を伴う点が挙げられます。

そのため夜間であっても家を飛び出してしまったり、夜間に突拍子もない行動を始めたりしてしまうため、24時間体制での介護が必要となるケースが多くなっています。

介護者である家族にとっては体を休めるべき時間であっても常に気が休まらず、肉体的にしんどいと大きな介護負担を感じる声が寄せられています。

心労

認知症を発症しても大切な家族であることには変わりありませんが、自分のことを忘れられたり、また被害妄想から悪人扱いされたりすることによって、心に大きなダメージを負ってしまう介護者の方は少なくありません。

認知症の進行を緩やかにするためには介護者の穏やかな接し方も重要になってきますが、あまりにも認知症クライアントの傍若無人な振る舞いに心が折れてしまい、家族には大きな介護負担としてのしかかってきます。

介護離職

認知症の在宅介護をしていくなかで、家族の大きな介護負担となっているのが介護離職の問題です。

症状の進行に伴って24時間体制での見守りが必要になってくると、同居家族の誰かが介護離職をすることでしか対応しきれなくなってしまいます。

特にターミナル期が近づいて寝たきりの状態が続くようになると、身体介護の負担も増し、家族にとって大きな介護負担としてのしかかります。

認知症の介護負担を軽減するためには

認知症の在宅介護で家族にかかる負担を少しでも軽減させるためには、家族だけで問題を抱え込まないということが大切になってきます。

介護保険制度の利用検討や地域の方とのコミュニケーションを通して、少しでも認知症介護の負担を軽くし、笑顔で家族が過ごすことのできる方法を模索しましょう。

介護保険制度の利用

認知症が原因であっても、症状の進行から介護が必要と認定された場合、高齢者に対する介護サービスと同様に、必要量の介護保険サービスを利用することが可能です。

特別養護老人ホームに代表されるような入居型施設への入居、24時間体制で定期的な巡回サービスを利用することができる定期巡回・随時対応型訪問介護看護など、認知症の在宅介護をサポートする仕組みは少しずつ拡充されています。

地域とのコミュニケーション

認知症の介護を行っていると、どうしても家に閉じこもりがちになってしまい、孤独を強める介護者の方が非常に多くいらっしゃいます。

大きな介護負担を感じている方のほっと一息をつける場所として、現在では日本全国で認知症家族の会や認知症カフェなどが開かれています。

また担当のケアマネージャーや地域包括支援センターなど、専門知識をもつアテンダントに対しても積極的に相談を行い、認知症の介護負担を軽減できる方法を探していきましょう。

認知症の介護負担は、家族だけで抱え込まないで。

高齢者の人口比率が高まることで、増加傾向にある認知症の在宅介護について、介護負担の大きさと対処法を中心にご紹介いたしました。

大好きな家族であっても、認知症と向き合いながら介護者自身の生活も大切にすることは、とても難しいといえます。

介護保険サービスや相談窓口をうまく活用しながら、少しでも介護負担を減らして認知症と向き合っていきましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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