「この介護、いつまで続くの?」認知症の家族に対する介護期間の平均を徹底解説。

家族が認知症と診断されると、戸惑いや不安を感じながらも介護が必要になってきます。

認知症は脳細胞が損傷を受けたり壊死することによって引き起こされる認知機能の低下が中核症状として出現する病気で、徐々に記憶障害や見当識障害などが見られるようになります。

また妄想や幻覚、徘徊などの行動・心理症状が誘発されることによって、介護者への負担はより大きなものになります。

先の見えない認知症の介護に「介護期間はどれくらいなんだろう」と落ち込んでしまう家族も少なくありません。

そこで今回の記事では、認知症の平均的な介護期間や、認知症の介護に不安を感じてしまったときはどうすれば良いのかをご紹介していきます。

目次

認知症の発症率とは

認知症は、年齢とともに発症のリスクが上がることが分かっている病気です。

2012年時点での研究データによると、65歳以上の約15%が認知症と推計されているのに対し、85歳-89歳の場合は男性35.6%・女性48.5%、90歳以上の場合は男性42.4%・女性の71.8%が認知症であると考えられています。

現在の日本では生産人口が減少し、高齢者の人口比率が増加する人口構造となっていますので、今後は人口における認知症のクライアント率がさらに高まり、2025年時点では高齢者の5人に1人、また国民の17人に1人が認知症クライアントになると推計されています。

【参照】認知症施策の総合的な推進について

認知症の介護期間

認知症は症状の進行が非常に早い病気として知られています。

個人差や認知症の種類(アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など)による差はあるものの、一般的にはもの忘れや判断力の低下などに代表される初期症状から始まり、失禁や筋固縮・嚥下障害・歩行障害などが誘発され、寝たきりの状態から感染症や誤嚥性肺炎のり患、そして旅立ちという順で症状が進行することが多いとされています。

イギリスの5つの地域で1991年から2003年に実施された調査によると、認知症の診断から旅立ちまでの期間は平均4.5年とされています。

一方で公益社団法人認知症の人と家族の会に寄せられた声では、介護を始めてから17年が経過した方もいらっしゃいます。

個人の状態によって大きく差はあるものの、一般的には認知症になると衰弱が全体的に早いスピードで進行し、5年程度が平均余命の参考値と考えられます。

【参照】
Jing Xie, Carol Brayne, Fiona E. Survival times in people with dementia : analysis from population based cohort study with 14 year follow-up.BMJ 2008;336:258-262
No.21–思いも寄らぬ衰弱の速さ-介護期間は決して長くない(公益社団法人認知症の人と家族の会)

認知症の介護期間の特徴

認知症は症状が慢性的に進行し、もの忘れや失語などから症状が始まり、徐々に無気力や食べ物に対する失認・失行が引き金となって寝たきりなどに症状の段階が移行します。

約5年が目安となる認知症の介護期間は、どのように過ごす必要があるのでしょうか。

薬物療法と非薬物療法

認知症に対しては確立された治療法が見つかっていないものの、薬物療法と非薬物療法を積極的に取り入れていくことによって症状の進行を緩やかにする効果があると考えられています。

かかりつけ医やもの忘れ外来、認知症疾患医療センターなどに相談し、専門家とともに適切な介護の方針を考えていくことが大切になってきます。

家族の対話を大切に

認知症によって認知機能が低下すると言語障害や失語などの中核症状が表れるほか、介護期間の後期になると、寝たきりや衰弱から意思の疎通が図れなくなるケースが多いです。

認知症の初期段階であれば、症状が落ち着いているタイミングで認知症発症以前のように会話をすることができたり、本人の意志を確認することができたりすることもあります。

なるべく認知症の初期段階において家族でコミュニケーションを取っておくと、終末期や旅立ち後に後悔の念を和らげることができます。

介護保険制度を活用する

認知症の介護期間が5年と聞くと「たった5年しか一緒にいられないのであれば、住み慣れた自宅で介護し続けたい」「認知症を発症する前に本人が希望していたので、在宅介護で看取りたい」と考える家族は非常に多いです。

しかしながら認知症の症状が徐々に進行して行動・心理症状が出現してくると、せん妄や異食・徘徊・昼夜逆転などの問題行動に悩み、24時間体制での在宅介護に心身の大きな負担を感じたり、介護離職などにつながるケースもあります。

無理に家族だけで認知症の介護期間を乗り切ろうと考えず、介護保険制度をはじめとする行政支援を積極的に活用し、地域の人ともコミュニケーションをとりながら介護期間を過ごすようにしましょう。

介護者の心身の健康は、認知症のクライアントのケアと同じくらい大切ですので、決して無理をしないようにしてくださいね。

最期の時まで在宅介護を手助けできる介護保険サービスも

認知症の方に向けた介護保険制度と言えば訪問介護やデイサービス、もしくは入居型施設の利用が広く知られていますが、看取りの時まで自宅で過ごしたいと考えるクライアントや家族からの需要が高いサービスの一つに、定期巡回・随時対応型訪問介護看護があります。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護では24時間365日、決まった月額で自宅への定期巡回サービスや訪問看護サービスを利用することができるほか、緊急時の相談や訪問にも対応しています。

ターミナル期や看取りのケアにも対応しており、介護と看護が一体となった地域密着型のケアが受けられることから、認知症の介護期間に利用される方が増えています。

株式会社土屋でも定期巡回サービス土屋として、日本各地で定期巡回・随時対応型訪問介護看護を提供しています。

認知症の介護期間は、個人差があるものの約5年。旅立ちに向けて後悔のない介護期間を。

認知症の症状が出現すると、初期段階では認知機能の低下による言語障害や記憶障害などにより日常生活に影響が生じはじめます。

さらに認知機能が低下すると食事をすることが困難になったり、嚥下機能の低下が誘発され誤嚥性肺炎を発症したり、もしくは感染症にり患しても体調の異変を口に出して伝えることができなかったりと、寝たきりや衰弱状態に陥り、平均的な認知症の介護期間は5年程度とされています。

この介護期間に後悔のない介護、そして介護者にとって負担の少ない介護を送ることが非常に重要になってきます。

介護保険制度や医療機関、自治体と連携することによって認知症の介護期間を乗り切りましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

目次