認知症になりやすい人には、いくつか共通する点があり、そのひとつが「口癖」です。口癖というのは行動にも繋がりやすいため、ネガティブな口癖や批判的な口癖などを繰り返していると、認知症に繋がる土台を作ってしまうこともあります。
今回はそうした認知症になりやすい人の口癖を各観点からピックアップします。認知症が不安な方は、心当たりがないかチェックしてみて下さい。
認知症になりやすい人の口癖
ここでは、認知症になりやすい人の口癖を、以下7つの観点からピックアップします。
- 心配性、ネガティブな口癖
- 批判的、皮肉交じりの口癖
- 運動不足に関連する口癖
- 難聴に関連する口癖
- 睡眠不足に関連する口癖
- 好き嫌いに関連する口癖
- 刺激がないことに関連する口癖
該当する点が多い場合には、将来的に認知症になるリスクも高まりますので、注意したいところです。
心配性、ネガティブな口癖
- 「〇〇だったらどうしよう」
- 「とても不安だ、心配だ」
- 「どうせ自分なんて」
- 「もう無理だ」
- 「つらい」「もうやめたい」 など
スウェーデンのイエーテポリ大学による研究では、心配性の度合いが高い人は、低い人に比べ認知症発症のリスクが約2倍高いことが報告されています。
また、心配性の方やネガティブな考えの方はストレスを溜めやすく、ストレスを受けると「コルチゾール」というホルモンが分泌され、これが慢性化すると「記憶力の低下」「注意力の低下」「感情の乱れ」などにつながります。
批判的、皮肉交じりの口癖
- 「この人はダメだ」
- 「このやり方はダメだ」
- 「これだから最近の若者は~」
- 「違う」「間違っている」
- 「世の中がおかしい」 など
東フィンランド大学の脳神経学者トルパネン博士の論文によると、批判的な発言や皮肉が多い人は、そうでない人に比べ認知症発症のリスクが約3倍高くなることが報告されています。
また、批判的で皮肉の多い方は、周りの人を遠ざけ孤立しがちです。人との交流が少なく刺激のない環境というのも認知症になる可能性を高めるため、批判的になりすぎず、人と適度に関わり、柔軟な発想を持つことが大切です。
運動不足に関連する口癖
- 「だるい」
- 「動きたくない」
- 「ゴロゴロしていたい」
- 「早く家に帰ろう」 など
認知症の発症に関連する因子の一つに、身体活動低下(運動不足)があげられています。
慢性的な運動不足は「肥満」「高血圧」「糖尿病」にも繋がり、それぞれ認知症の発症を促す原因の代表格とされています(肥満は中年期(40~64歳)の場合)。
普段から「だるい」「動きたくない」が口癖になっている方は、いずれ歳をとると余計に運動不足が深刻化することもありますので、早めに運動する習慣を身に着けていきたいところです。
難聴に関連する口癖
- 「今なんていった」
- 「よく聞こえないよ」
- 「もう1回いってくれる」 など
耳の聞こえにくさは認知症の危険因子となると考えられています。
国立長寿医療研究センター発行の「MCIハンドブック」では、耳の聞こえにくさがあると認知症を発症するリスクが1.9倍になると示されています。特に中等度から重度の聞こえにくさがある人の場合、認知症を患う可能性が高まります。
また、耳が聞こえにくくなると、他者との会話がスムーズにできなくなるため、引きこもりがちになりやすいです。そうした孤立した環境が精神的なストレスとなり、余計に認知機能を低下させてしまうことがあります。
睡眠不足に関連する口癖
- 「ねむい」
- 「ねてない」
- 「今日もよく眠れなかった」 など
近年、認知症の中でも最も患者数の多い「アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)」と睡眠障害の間に関連があることがわかってきました。
アルツハイマー型認知症の発症原因として、脳内で作られるたんぱく質である「アミロイドβ」の長年の蓄積が有力視されています。そしてこのアミロイドβが睡眠不足や徹夜などにより生成されやすくなることがわかってきました。
普段「ねむい」が口癖の方は、睡眠が十分に取れておらず、知らず知らずのうちにアミロイドβの蓄積がはじまっている可能性がありますので、睡眠の改善が大切です。
好き嫌いに関連する口癖
- 「〇〇(食べ物)は嫌い」
- 「こんな料理食べたくない」
- 「いまは食事いらない」 など
規則正しい食事や栄養バランスのよい食事は、健康を支えるために必要不可欠なものであり、認知症予防にも効果があります。
反対に「これが食べたい」「あれは食べたくない」と好き嫌いが口癖になっており偏食や不規則な食生活が続いていると、肥満、高血圧、糖尿病などを患いやすく、前述もしたようにこれらの生活習慣病は認知症の原因に直結します。
プラスとなる食べ物については、特に、野菜、果物、魚などに含まれる栄養素が、認知症発症予防に有効と考えられています(アルツハイマー型認知症の場合)。ただしそれ以上に、バランスの良い食生活をおくることがなりより大切です。
刺激がないことに関連する口癖
- 「やることがない、暇」
- 「毎日同じことの繰り返しだ」
- 「つまらない」「刺激がない」 など
認知症を予防するためには、脳にある程度の「刺激」を与えることも大切であると考えられています。
同じことを繰り返す日々、新しいことに関わらない日々を続け、「つまらない」「刺激がない」が口癖になっている人の場合、脳が衰え、認知症を促す間接的な要因となってしまうことがあります。
一方で「読書」や「脳トレゲーム」など、頭を使うような活動は認知症予防に効果的とされています。他にも「人と交流する」「音楽活動」「芸術(創作)活動」も脳によい刺激を与える効果があります。
すでに発症している可能性も。認知症が疑われる口癖
「認知症になりやすい」ではなく「すでに認知症を発症している」場合に口にする口癖もあります。
具体的に以下のような口癖は、認知症もしくは軽度認知障害(MCI)の初期症状として見られる口癖です。
- 同じことを繰り返し発言する
- 些細なことでも怒る、暴言を繰り返す
- 「あれどこに置いたっけ」など、置き忘れやしまい忘れの発言が目立つ
- 「昨日どこに行ったっけ」「昨日誰と会ったっけ」など、直前の行動を忘れる発言が目立つ
- 「くだらない」「どうでもいい」など、ニュースや以前関心のあったものに興味を示さない、否定的な発言が目立つ
- 「財布を盗まれた(実際は盗まれていない)」という など
たとえば、「同じことを繰り返し発言する」「置き忘れやしまい忘れの発言が目立つ」に当てはまる場合は、認知症の中核症状の一つ「記憶障害(物忘れ)」が生じている可能性があります。
こうした口癖は、認知症でなくとも口に出てしまうことはありますが、目立つ場合には安易に考えず認知症を疑うことも大切です。
軽度認知障害(MCI)について
MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)とは、認知症と診断される一歩手前の状態を指します。
認知症の場合は、一度発症すると完治は難しいとされていますが、MCIであれば、1年で約16~41%の人が健常な状態になることがわかっています。
一方で、1年で約5~15%の人がMCIから認知症に移行しているため、認知症の前段階として注意しなければなりません。
MCIの症状は認知症の初期症状と似ており、前述もしたように、同じことを繰り返し発言したり、置き忘れやしまい忘れの発言が目立つことがあります。また、注意力や集中力の低下、無気力な状態となることもあります。
口癖から改善しよう
口癖というのは行動に直結しやすいため、今回紹介したような口癖を続けていると、自然とそれが普段の行動に現われていき、結果的に認知症発症の土台作りとなってしまうことがあります。
認知症は高齢者だけの問題ではなく「若年性認知症」として65歳より前に発病することもあります。誰にでも起こりうることであるため、今回紹介した口癖に心当たりのある方は、まずは口癖から改善していくことが大切です。