高齢者の生活を支える施設である「老人ホーム」にはさまざまなタイプがありますが、なかでも需要が増えているのが「特別養護老人ホーム」です。
この特別養護老人ホームは、一般的な「養護老人ホーム」や「有料老人ホーム」と何が違うのでしょう。
今回は、特別養護老人ホームと一般的な老人ホームとの違いを、サービス内容や費用などを交え解説します。
老人ホームの違いを比較
最初に、比較対象となる「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「有料老人ホーム」の3つの老人ホームについて、サービス内容や費用などの違いを表にまとめます。
のちほど詳細を解説しますので、ここでは概要をご確認ください。
特別養護老人ホーム | 養護老人ホーム | 有料老人ホーム | |
---|---|---|---|
運営 | 公的施設 (地方公共団体・社会福祉法人などが運営) | 公的施設 (地方公共団体・社会福祉法人などが運営) | 民間施設 (民間企業などが運営) |
入居条件 | (原則)要介護3以上 | 自立した高齢者 | 自立・要支援1~要介護5 |
施設の目的 | 要介護者の身体介護と生活支援 | 生活環境や経済的に困窮した高齢者を「養護」し、社会復帰を目指す | 高齢者の生活支援 (「介護付き」施設では身体介護も行う) |
サービス内容 | 身体介護を中心とした自立支援 | 食事の提供、健康管理を含む自立支援 | 施設によりさまざま |
費用 | 入居一時金:なし 月額:8万~13万円程度 | 入居一時金:なし 月額:0円~14万円程度 | 入居一時金:なし~数千万円 月額:15万~40万円程度 |
入居難易度 | 入居希望者が多く数か月待ちになりやすい | 生活の困窮度による | 資金があれば選択肢が増え入居先を探しやすくなる |
大きな違いとしては、特別養護老人ホームと養護老人ホームはいずれも「公的施設」となり、サービス内容や費用水準がある程度決まっています。
一方、有料老人ホームは「民間施設」となり、施設によってサービス内容や費用水準はさまざまです。中には富裕層向けのホテルのような有料老人ホームも存在します。
特別養護老人ホームについて
ここでは1つ目の「特別養護老人ホーム」ついて、詳細を解説します。
特別養護老人ホームとは?
特別養護老人ホームとは、要介護状態にある方を対象とした老人ホームです。具体的には、原則として要介護3以上で、65歳以上(特定16疾病と認められている場合は40~64歳も対象)の方が入居対象となっています。
老人福祉法では、特別養護老人ホームについて以下のような定めがあります。
六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。
老人福祉法:第十一条の二より
どのようなサービスが受けられる?
特別養護老人ホームは、介護を目的とした施設であるため、介護サービスが充実しています。食事や掃除だけでなく、排泄、更衣、洗面といった身体介護、ほかにも機能訓練や療養上の世話なども提供します。
特別養護老人ホームには、介護職員、生活相談員、栄養士、機能訓練指導員、介護支援専門員などの介護スタッフが最低でも各1名ずつ配置されているため、各方面からの手厚い介護が受けられます。
費用は?
特別養護老人ホームの費用は、公的施設であることから安めであり、月額8万〜13万円程度です。入居一時金なども発生しません。所得が低く資産が少ない場合には、居住費や食費の軽減を受けることも可能です。
なお、部屋のタイプによっても料金が変わり、料金が安い順に「従来型個室」「多床室」「ユニット型個室」「ユニット型個室的多床室」の4タイプが用意されています。
入居の難易度について
特別養護老人ホームは需要が高く、一つの施設に入居申し込みが殺到し、待機者が多数いるのが現状です。都内では数百人待ちの施設もあります。
そのため、空きがでるまで入居待ちとなることが多く、数か月待ちになることも珍しくありません。
養護老人ホームついて
ここでは2つ目の「養護老人ホーム」ついて、詳細を解説します。
養護老人ホームとは?
養護老人ホームとは、現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも困窮している65歳以上の高齢者が入居できる老人ホームです。
老人福祉法では、養護老人ホームについて以下のような定めがあります。
養護老人ホームは、第十一条第一項第一号の措置に係る者を入所させ、養護するとともに、その者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導及び訓練その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
老人福祉法:第二十条の四
どのようなサービスが受けられる?
養護老人ホームは、入居する高齢者を「養護」し、本人の社会復帰を支援する施設です。そのため、提供されるのは、食事の提供や健康管理、自立支援などの生活支援サービスです。
特別養護老人ホームのように、介護サービスは提供しておらず、介護職員なども基本的には配置されていません。
費用は?
養護老人ホームも、公的施設であることから費用は安めであり、月額0円~14万円程度です。入居一時金なども発生しません。前年度の収入額などから算出される形となり、収入が少ない方や困窮している方の場合、費用は減額されます。
入居の難易度について
養護老人ホームは、現状特別養護老人ホームのように入居待ちとなることは少ないですが、今後需要が増えるとも考えられています。
また、入居するためには市区町村により「入居が必要」と判断されなければなりません。入居する人は、主に生活に困窮している高齢者、自宅で虐待を受けており居場所に困っている高齢者などです。
有料老人ホームについて
ここでは3つ目の「有料老人ホーム」ついて、詳細を解説します。
有料老人ホームとは?
有料老人ホームとは、民間企業などが運営している老人ホームです。
厳密には、食事の提供、介護の提供、家事の供与、健康管理のうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供している施設とされています。
どのようなサービスが受けられる?
有料老人ホームは、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」の大きく3つのタイプがあり、どのタイプの施設であるかによってもサービス内容が変わります。
タイプ | サービス内容 |
---|---|
介護付有料老人ホーム | 食事、洗濯、清掃などの生活支援サービスに加え、施設内で身体介護をはじめとした「介護サービス」の提供を行う。介護職員の配置も義務付けられている。 入居条件: 原則として要支援・要介護状態の人が入居対象となるが、入居時自立型であれば要介護認定は問われない。 |
住宅型有料老人ホーム | 食事、洗濯、清掃などの生活支援サービスを提供する。介護サービスは提供していないため、介護が必要になった場合、訪問看護、デイサービス等の外部介護サービスを利用しながら生活することになる。 入居条件: 自立した生活をおくれる人から要介状態の人まで幅広く入居できる。 |
健康型有料老人ホーム | 家事手伝いなどのサポートを受けられ、日常生活を楽しむための設備が充実しているタイプ。温泉やジムなどが設置されていることもあり。 入居条件: 自立して生活できる高齢者を対象としており、要介護状態となると退去する必要あり。 |
費用は?
有料老人ホームは民間施設となるため、施設によって料金はまちまちです。
一般的には、入居一時金はなし~数千万円、月額費用は15万~40万円程度が目安とされていますが、富裕層向けの高額な有料老人ホームもありますので、上を見るとキリがありません。
入居の難易度について
有料老人ホームの場合、入居条件はさほど厳しくはありませんが、高額な費用が課題となります。言い換えれば資金力さえあれば選べる施設も増えるため、入居の難易度は下がります。
入居条件を考えつつ自分に合った施設を探そう
以上、「特別養護老人ホーム」と「養護老人ホーム」や「有料老人ホーム」との違いについて解説しました。
入居する施設を探す上で、まずは前提として、入居できるかがポイントとなります。
特別養護老人ホームを利用する上では、要介護3以上である必要があり、養護老人ホームにおいても、生活環境や経済的に困窮していることが条件として必要になります。
該当しない場合には、有料老人ホームのような入居条件の緩い老人ホームを候補として検討していく必要がでてきます。
また、今回紹介した以外にも「介護老人保健施設(老健)」や「ケアハウス」など、まだまだ高齢者向けの施設はありますので、現在の身体の状態や求めるサービスを整理しながら、自分にあった施設を探していきましょう。