「認知症の親を介護しているが限界を感じている」「徘徊や暴言などが繰り返されとても耐えられない」など、辛さを感じているアテンダントの方は少なくありません。
アテンダントのほうが不眠やうつ病などを患ってしまうこともあるため、苦しい状況であれば無理をせず、早めにSOSを出し状況を変えていくことが大切です。
今回は、認知症の介護が辛い場合の改善策や対処法を紹介しますので、ご自身の状況を照らし合わせながらご検討ください。
相談し周囲の見解を交える
認知症の親の介護で行き詰っている場合、一人だけで悩まずに「周囲」と相談し、自分以外の人間の見解も交え客観的に対策を考えていくことが大切です。
特に何でも自分一人で抱えようとする生真面目な方や、シングル介護の方などですと「このままずっと一人でやり続けられるのだろうか」とネガティブな思考に陥りやすく、冷静に対策を検討できないことがあります。
また、自分の抱えている悩みや課題を他者に吐き出すだけでも、精神的にもだいぶ楽になることがあります。自分の心を守ることにも繋がりますので、早めにSOSを出していくことが大切です。
具体的に、周囲と相談し解決策を見つけていく方法として、以下のような手段があります。
- 家族と対話
- 担当のケアマネージャーに相談
- 地域包括支援センターに行く
- 認知症専用ダイヤルに電話
- 認知症カフェに行く
以降ではそれぞれの詳細を解説します。
家族と対話
まずは、親、兄弟、親戚など家族や近い間柄の人間に対して、認知症を患っている親の介護について役割分担ができないか等を、いま一度相談してみることが大切です。
介護を行っている当事者でないと、その辛さを十分に把握できないことがあるため、しっかりと現状を伝えることがポイントです。
担当のケアマネージャーに相談
既に介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネージャーも身近な相談先です。
ケアプランや利用する介護サービスを見直すことで、現状の負担や悩みが改善されることもあります。
また、介護認定の再申請を行うこともでき、認知症の症状が重くなっている場合は、要介護度が引き上げられ、より手厚い介護サービスが受けられることもあります。
ケアマネージャーは、介護サービスや介護制度に精通している、アテンダントの身近な強い味方であるため、今抱えてる悩みをしっかりと伝えることが大切です。
地域包括支援センターに行く
「地域包括支援センター」は、高齢者の健康面や生活全般の相談、保健医療・介護に関する相談などを受け付けている地域に密着した総合相談窓口です。
認知症患者の介護に関する相談も可能であり、相談は無料です。
認知症疾患医療センターや認知症初期支援チームなどの関係機関とも連携しつつ、その人にとって最適な保健福祉サービスや制度が利用できるようサポートしてくれます。
地域包括支援センターは、全ての市町村に設置されており、厚生労働省の公式サイトで調べられます(※リンク先の「全国の地域包括支援センターの一覧」が該当)。
認知症専用ダイヤルに電話
厚生労働省「認知症に関する相談先」に、認知症の相談ダイヤルが掲載されています。認知症の専門家が認知症に関わるさまざまな悩みの相談に乗ってくれます。
フリーダイヤルであり通話料無料で利用できるため(携帯からかける場合は有料)、些細なことでも一人で悩まずに相談してみることをおすすめします。
認知症カフェに行く
「認知症カフェ」は、認知症の人、その家族、地域住民、認知症の専門家などが集うカフェです。全国で6000カ所程度あります。
一般的な喫茶店やカフェのように気軽に利用でき、飲食をしながら、来店した人たちと交流ができます。
自分と同じように認知症の家族を介護する方々と悩みを共有できたり、情報交換ができることもあり、ちょっとした気晴らしにもなります。
認知症カフェは、地域によってはオレンジカフェなどと呼ばれることもあります。詳しくはお住まいの自治体の高齢者福祉担当課、地域包括支援センターなどにお問合わせください。
利用する介護サービスを見直して負担を減らす
要介護・要支援の介護認定を受けている場合は「介護サービス」が利用できます。
既に認知症を患った親御さんが介護認定を受け、介護サービスを利用している方も多いかと思いますが、これまでとは違った介護サービスに変えたり、組み合わせを変えることで、今よりもアテンダントに掛かる負担を減らせることがあります。
以下は、各介護サービスの特徴と対象者をまとめた表となります。
介護サービス名 | 対象者 | タイプ | サービス内容 |
---|---|---|---|
訪問介護 | 要介護1以上 | 訪問 | ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排泄、食事等の介護、掃除、洗濯、調理等の生活援助を行う。 |
訪問看護 | 要支援1以上 | 訪問 | 看護師が自宅を訪問し、病気や障がいに応じた看護を行う。主治医の指示を受けた場合、病院と同じような医療処置も行える。 |
訪問入浴 | 要支援1以上 | 訪問 | 介護スタッフや看護師が簡易浴槽を持って自宅を訪問し、入浴介護を行う。 |
デイサービス | 要介護1以上 | 通所 | デイサービスセンター等へ通い、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練を「日帰り」で行う。送迎もしてもらえる。 |
ショートステイ | 要支援1以上 | 宿泊 | 特養や老健などの介護施設に短期間「宿泊」し、身体介護や食事、健康管理、リハビリ、レクリエーションなどのサービスを受けられる。 |
グループホーム | 要支援2以上(かつ認知症の診断を受けている) | 入所 | 認知症と診断された方が「入所」できる共同住宅の形態の介護サービス。施設内には介護スタッフが24時間体制で常駐し、スタッフの支援を受けながら自立した生活がおくれる。 |
老健(介護老人保健施設) | 要介護1以上 | 入所 | 病状が安定している方を対象に、在宅復帰に向けたリハビリを行う入所施設。終身施設ではなく、入所できるのは3ヵ月~6ヵ月程度。 |
特養(特別養護老人ホーム) | 要介護3以上 | 入所 | 介護スタッフが24時間体制で常駐し、スタッフの支援を受けながら自立した生活がおくれる。終身施設のため、看取りまで対応。グループホームや有料老人ホームより料金が安め。 |
小規模多機能型居宅介護 | 要支援1以上 | 訪問、通所、宿泊 | 「訪問(訪問介護)」「通所(デイサービス)」「宿泊(デイサービス)」の3つのサービスを使い分けられる。 |
このように介護認定を受けていれば、さまざまな介護サービスが活用できます。
「デイサービス」や「ショートステイ」を使えば、1日から数日の間、介護から解放されますので、アテンダントの心身の負担を軽減できます。
「小規模多機能型居宅介護」も便利なサービスであり、訪問、通所、宿泊の3つのサービスをその時々の状況に合わせて柔軟に使い分けられ、基本的に同じ介護スタッフが3つのサービスを担当してくれますので安心して任せられます。
さらに小規模多機能型居宅介護では、24時間365日制限なく利用でき、月額定額料金のため多用しても料金が変わらないという利点もあります(食費など一部の費用は除く)。
繰り返しとなりますが、介護認定は再申請を行うこともでき、以前より症状が重くなっている場合は要介護度が引き上げられ、より充実したサービスを受けられることがあります。
現状が辛い場合は、介護認定を再申請し、いま一度介護サービスの利用方法を見直してみるのも現状を打開する突破口となりえます。
頑張りすぎないことも大切
認知症の介護はアテンダント側に掛かる精神的な負担も大きく「自分の親のことだから」と一人で抱え込んでしまうと、自分が潰れてしまうことがあります。頑張りすぎないようにし、時には自身を労りリフレッシュすることも大切です。
たとえばデイサービスに親御さんを一日預け、その日はこれまで我慢してできなかった自分の好きなことを思い切り楽しんでも問題ありません。介護サービスには、アテンダントが一時的に休息やリフレッシュをするレスパイトケアの側面もあります。
また、不満や弱音を吐くことも精神衛生上大切です。介護スタッフや主治医などに日頃の悩みや辛さを打ち明けてみることで、心が晴れたり、よい対策が見つかることがあります。
インターネット上やSNS上にも認知症のコミュニティは多々存在しますので、そうした会ったことはないけれど同じ悩みを抱える仲間に対して打ち明けてみるのも一つの方法です。
早めにSOSを出し、使えるサービスは積極的に使う
毎日新聞が2016年に行ったアンケートでは約7割の在宅介護者が精神的・肉体的に限界を感じているという集計も出ています。
介護はそれだけ多くの方が負担を感じるものであり、自分だけの力ではどうにもならないこともあります。
そのため、辛さを感じている場合は自分一人で抱えようとせず、早めにSOSを出して周囲と相談すること、そして頼れるサービスは積極的に活用していくことが大切です。