誤嚥性肺炎は、年齢を重ねるとともに発症しやすい病気のひとつです。
筋力の衰えによって気管に食べ物や唾液が入り込んでしまうと、それらに含まれている細菌から誤嚥性肺炎を発症してしまう可能性があります。
基礎疾患や免疫不全に悩むクライアントの場合、はじめは軽度の誤嚥性肺炎だったとしても、急速に症状が進行してしまう恐れがありますので、在宅介護においてはケアの注意点をしっかりと守り、正しくクライアントを見守っていくことが大切になります。
誤嚥性肺炎は初期の薬物治療によって重症化のリスクを軽減できる病気でもありますので、改めてケアの注意点を確認していきましょう。
誤嚥性肺炎の症状
本来であれば肺炎は、高熱や咳などですぐに気付きやすい症状が表れる可能性が高い病気です。
しかしながら誤嚥性肺炎患者の多くを占める高齢者の場合、明らかな症状としての変化が出現しにくく、気が付くと誤嚥性肺炎が進行していたというケースが多く見受けられます。
そのため在宅介護の中では、クライアントのちょっとした変化を見落とさず、ケアの注意点を意識していきましょう。
誤嚥性肺炎の初期症状①食欲減退
「食事の量が減った」「いつまでも口の中のものを飲み込まない」というように、嚥下機能に明白な変化がみられるようになったときは、無意識下で体に倦怠感が表れているのかもしれません。
また食事に要する時間が長くなったり、食後にしんどそうな様子が見られる場合は、なにかしらの体調変化が生じている可能性があります。
むせこみ方なども含めて総合的にクライアントの様子を判断し、なるべく早い段階で医師や看護師などに相談をするようにしましょう。
誤嚥性肺炎の初期症状②風邪のような症状
風邪をひいた時のような軽い咳込みやむせこみ、発熱、肺の雑音などは、誤嚥性肺炎の症状です。
「風邪かな?」と思って放置していると、急激な悪化が見られることもあります。
誤嚥性肺炎はなるべく初期に薬物治療をはじめることが大切なので、在宅ケアの注意点として覚えておきましょう。
誤嚥性肺炎のケア
誤嚥性肺炎と診断された場合、まずは点滴で抗生物質を注入して症状の改善を図ります。
薬物治療期間中は経口での食事を中止し、口腔内を清潔に保つためのケアが大切になってきますので、注意しましょう。
器質的口腔ケア
誤嚥性肺炎を発症しているクライアントに必要な口腔ケアが、器質的口腔ケアです。
器質的口腔ケアとは歯や歯茎・舌などに付いてしまった食べかすや歯垢を除去することで、口腔内の細菌発生を抑制し、口腔内を清潔に保つためのケアです。
特に唾液の分泌が減少しつつある高齢クライアントの場合は、唾液がもつ細菌への自浄作用が不足してしまい、細菌が繁殖してしまう可能性があります。
座位を保つことができる方であれば柔らかい歯ブラシを用いた歯磨きやうがいも有効ですが、寝たきりで難しい場合は使い捨てのスポンジブラシや、口腔用ウェットティッシュを用いた口腔ケアがおすすめです。
必要に応じて訪問歯科や訪問看護など、専門的なケアをお願いすることも非常に有効な手段です。
脱水・低栄養に注意する
誤嚥性肺炎に対するケアの注意点としては、脱水や低栄養に対する危機管理を怠らないということも大切です。
誤嚥性肺炎によって経口での食事や飲み物の摂取が難しくなった場合、脱水症状や低栄養による体重の減少などが見られるケースがあります。
排せつの回数や体重の状態をいつも以上に確認し、健康状態の悪化を未然に防ぎましょう。
誤嚥性肺炎を繰り返させないために
誤嚥性肺炎は一度薬物治療を行って症状が改善した場合であっても、口腔環境の悪化や筋力の低下など誤嚥性肺炎を誘発する原因が改善されていないと、再び発症してしまう恐れのある病気です。
先ほどご紹介した器質的口腔ケアを回復後も心がけた上で、誤嚥性肺炎を繰り返させないような在宅ケアを行っていきましょう。
口腔体操を行う
年齢を重ねると筋力の低下が見られるようになりますが、舌やくちびる、頬、のど周辺の筋肉も徐々に力を失ってきます。
低下していく口やのど周り筋力を放置していると、咀嚼や飲み込みに影響が生じ、再びの誤嚥性肺炎発症を防ぐことができなくなってしまいます。
そのため誤嚥性肺炎に対するケアの注意点としては、口やのど周りの筋力を維持するための口腔体操を定期的に行うという点が挙げられます。
クライアントの健康状態に合わせた口腔体操の内容をホームヘルパーや看護師、訪問歯科医などに相談し、疲れない程度に促していきましょう。
食事の体位を見直す
誤嚥性肺炎を発症する直接のきっかけとなりやすいのは、食べ物の誤嚥です。
そのため誤嚥性肺炎のケアの注意点として、やはり食事の際の姿勢を見直すことは欠かせません。
座位を保つことのできるクライアントであれば「両足を床につけること」「椅子に深く腰掛け、背もたれを利用せずに背中を伸ばすこと」などの正しい食事姿勢を維持していきましょう。
姿勢保持が難しいクライアントの場合は、頭の下やひざ下にクッションを挟むことによって頭の角度や食事中にズレが生じない体位のサポートを行うことが大切です。
また誤嚥性肺炎は、経管経鼻栄養のクライアントでも発症する可能性がある病気です。
経管経鼻栄養を利用しているクライアントも、胃の中身が逆流しない体位を整える、栄養剤の注入スピードを調整するなどのケアに注意する必要がありますので、今一度ケアの注意点を確認しておきましょう。
食事内容にも注意
一人ひとりのクライアントの嚥下機能の状態や健康状態によって、食事の内容を調整していくことも在宅ケアの注意点の一つです。
食材の大きさやとろみの具合、また食事の量など、食事の内容はクライアントの体調に合わせた柔軟な調整が必要になります。
誤嚥を起こしにくい食事内容を検討していくと同時に、クライアントの嚥下機能に合わせた食事量で脱水や低栄養などの症状がみられた場合は速やかに医師に相談をするよう注意しましょう。
誤嚥性肺炎におけるケアの注意点を再確認して、在宅ケアを行いましょう。
誤嚥性肺炎は高齢者の発症率が非常に高く、在宅ケアをしていく中では最も注意したい病気の一つです。
誤嚥やむせ込みは誰にでも起こりえることではありますが、普段から誤嚥性肺炎に対するケアの注意点を意識して、発症のリスクを押さえながらの在宅介護や、医療との連携体制の構築を行っておくと安心です。
毎日の介護の中で誤嚥性肺炎に対する正しいケアを心がけ、注意点を意識していきましょう。