誤嚥性肺炎を防ぎたい。高齢者の食事はどのような点に注意が必要なの?

気管に入ってしまった食べ物のかすや唾液に含まれる細菌が原因で発症する可能性がある病気が、誤嚥性肺炎です。

特に高齢者は嚥下機能の低下による誤嚥が多かったり、むせ込む力が弱くなることで気管から異物を排出できなくなるなど、誤嚥性肺炎を発症するリスクが非常に高い状態にあります。

誤嚥性肺炎の発症リスクを抑えるためには、年齢に合わせた食事内容の調整が必要です。

今回の記事では、誤嚥性肺炎を意識した高齢者の食事についてご紹介していきます。

大切な家族に美味しい食事を楽しんでほしいと考えている方は必見です。

目次

高齢者の身体機能

年齢を重ねた人間の体は、筋肉を構成する筋繊維数が減少してしまう上に、筋繊維が萎縮することによって、筋肉量が失われていきます。

筋肉量の減少によって歩行や姿勢保持に影響があることは広く知られていますが、食べ物をかみ砕く力や飲み込む力にも筋肉は必要になります。

そのため高齢になると今までと同じような食事を咀嚼したり飲み込んだりすることが困難になります。

そのため食事の内容を見直し、一人ひとりの状態に合わせて体に負担なく楽しむことのできる食事に調整していく必要があるのです。

誤嚥性肺炎のリスクを下げる、高齢者の食事

誤嚥性肺炎のリスクを下げるためには高齢者の身体機能に合わせた食事内容にすることが大切になってきますが、実際にどのような食事が適しているのでしょうか。

具体的に確認していきましょう。

キーワードは「とろみ」

高齢者の食事でまず心がけたいのは、とろみです。

口の中でばらばらになる食事は飲み込むタイミングをつかみにくく、一部が気管に侵入しやすい状態になってしまいます。

そのためあんかけや卵とじのようなメニューを考案したり、市販のとろみをつける製品などを活用して、トロッと飲み込みやすい食事にすることがおすすめです。

一口の目安は「スプーン一杯分」

高齢者の食事は、誤嚥性肺炎や窒息のリスクを軽減するためにも、一口がスプーン一杯分になるように調整しましょう。

肉団子やお刺身のように高齢者から人気の高いメニューも、意識して小さめを心がけておくと安心です。

また海苔のようにのどに張り付きやすいものは佃煮状にまとめてスプーン一杯ずつたべてもらう、お餅やお麩はさらに小さいサイズに調整するなど、極力リスクを下げた内容に調整していくことが大切です。

野菜は特に注意が必要

食物繊維やビタミン類が豊富な野菜は、健康維持のために欠かすことのできない栄養素です。

しかしながら繊維質が残りやすく、形状もぺらぺらしていて喉や歯にくっつきやすいことから、高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐためには要注意の食べ物となっています。

先ほどご紹介したあんかけや卵とじなどにアレンジすると食べやすくなりますが、くたくたになるまで煮る・小さめに刻むなどの手間を惜しまず、咀嚼のしやすさを重視するように心がけましょう。

市販品を積極的に活用する

近年では高齢者の食事に適している商品として介護食専用のレトルト食品や、ユニバーサルデザインフード、高齢者向けソフト食などが市場に展開されています。

忙しい日や慌ただしい朝の時間帯などはこのような食品を上手に活用することで、高齢者の食事の準備にかかる手間を軽くすることができます。

また離れて暮らす家族には、高齢者専門の宅配食を手配する方も増えてきています。

栄養バランスや塩分量、そしてなにより誤嚥を防ぐ食べやすさにこだわって、市販品を積極的に活用していきましょう。

誤嚥性肺炎のリスクを下げるためには、高齢者の食事姿勢にも注意

食事の内容にこだわると同時に気をつけたいのが、食事の姿勢です。

食べ物がスムーズに食道に流れていかない状態で食事をしていると、食べかすや唾液が気道に入り込んでしまい、誤嚥につながりかねません。

そのため座位を保つことができる場合は椅子に深く腰掛け、かかとを床につけた状態で食事がとれるような環境を整えましょう。

頭が上を向いていたり、背中を背もたれに預けてしまっていると、正しい嚥下が出来なくなってしまいます。

軽い前かがみの姿勢を意識して、声かけを行いながらゆっくりと食事を進めてもらいましょう。

寝たきりの高齢者の場合も、上半身を極力90度に近づける・顎があがらないように注意する・膝を曲げた下にクッションを入れ、かかとを踏ん張れるような位置に調整するなど、一人ひとりの状態に合わせた姿勢をサポートしてあげましょう。

高齢者の食事は、時間にも要注意

しっかりと栄養を摂取してほしい気持ちはありますが、高齢者の食事は長くても40分以内に収めるのが理想とされています。

これは食事時間が長くなることで疲労を感じ、十分な咀嚼や嚥下が行えなくなることから誘発される誤嚥を防ぐためです。

また「食べてほしい」という気持ちから、次々と食事を口に運ぶことは大変危険です。

基本的なスプーン一杯分の一口が完全に口の中からなくなってから、次のスプーンを口元に運ぶようにしましょう。

その際に、おかゆや肉・魚のようなのどに残りやすいメニューと、ゼリーやあんかけのようにのどごしがよいメニューを交互に口に運ぶことを意識すると、口の中やのどがさっぱりとして、食欲につながります。

食事のあとは口腔ケアを忘れずに

食べ物のかすに含まれる細菌や唾液内の細菌は、気管から肺に入り込んでしまうと誤嚥性肺炎を誘発してしまいます。

特に高齢者の場合、唾液の分泌量が年齢と共に減少してしまい、口の中の細菌が自然と体外に排出されなくなってしまいます。

そのため食事のあとは口をゆすいだり、歯磨きや舌磨きをするなどの口腔ケアが欠かせません。

口の中を傷つけない柔らかい歯ブラシを用いて汚れを落としたり、うがいでよくゆすぐなど、食事のあとの口腔内を清潔に保つことを忘れないようにしましょう。

誤嚥性肺炎のケアと高齢者の食事は切っても切れない関係。毎日の生活で心がけよう。

誤嚥性肺炎と密接な関係にある、高齢者の食事についてご紹介いたしました。

年齢とともに発症のリスクがある誤嚥性肺炎は、食事の内容を見直して正しくケアすることである程度の不安を軽減することができます。

高齢者の毎日の食事内容や姿勢などを見直して、正しく誤嚥性肺炎を予防しましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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