誤って気管に入ってしまった食べ物のかすや唾液に含まれる細菌が肺炎を引き起こす症状が、誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎は加齢や脳卒中の後遺症に伴って食べ物を飲み込む力やむせる力を失ったクライアントや、寝たきりによって口腔環境が芳しくないクライアントなどが発症しやすく、最悪の場合は死につながる病気です。
誤嚥性肺炎のリスクを下げるためには、誤嚥が起こりにくい食事メニューを徹底することが大切です。
のど周辺の筋力が落ちてしまったクライアントであっても飲み込みやすく、自分の歯を失ってしまったクライアントであっても食べやすい食事メニューを徹底していきましょう。
誤嚥性肺炎のリスクを下げる食事メニューを考案するポイント
誤嚥性肺炎を防ぐためには、飲み込みやすい食事メニュー(嚥下食メニュー)を考案することが重要です。
嚥下食では「適度なとろみで飲み込みやすい」「歯茎でもすりつぶせる」の2点を意識して、クライアントの状態に適した食事メニューを考案していきましょう。
嚥下食の反対!飲み込みにくい食事メニューとは?
飲み込みやすい食事メニューを考える前に、クライアントがどのような食事で誤嚥しやすいのかを確認しておきましょう。
- サラサラしているもの……水やお茶のように、粘度のない液体はむせこみやすいメニューの一つです。
- バラバラとまとまりにくい食べ物……こんにゃくやタコ・イカ、たけのこやレンコンのように、咀嚼してもある程度の固さが残り、まとまりにくい食べ物は飲み込みにくい食事メニューの代表例です。また柔らかいと思われがちのそぼろも口の中でまとまりにくく、一部が気管に入り込みやすい食事メニューの一つですので注意をしましょう。
- 水分の少ない食べ物……パンやカステラ、ゆで卵、クッキーのように「口の中の水分をもっていかれやすい」と表現されるような食事メニューは、非常に飲み込みにくい食事メニューといえます。またウエハースやわかめのように、口の中にくっつきやすい食事メニューも可能な限り避けると安心です。
このほかにもすっぱい食べ物や極度に粘度が高い餅のような食べ物、固い豆のような食べ物を避けて、飲み込みやすい食事を考えていきましょう。
誤嚥性肺炎のリスクを下げる、飲み込みやすい食事メニュー
先ほどご紹介した飲み込みやすい食事メニューも「とろみ」「やわらかさ」をキーワードに調整していくと、飲み込みやすさが増して誤嚥性肺炎のリスクを軽減することができます。
クライアントの好きな食べ物を中心に、栄養バランスを考えた食事メニューを考えましょう。
主食メニューはおかゆがおすすめ
体を動かすエネルギーとなる炭水化物は、おかゆの形状で飲み込みやすくするとよいでしょう。
ごはんのおかゆはもちろんのこと、そのままでは飲み込みにくいパンもパンがゆの形に調理すると飲み込みやすくなります。
うどんやそうめんの場合は通常よりもくたくたに、歯茎ですりつぶせる柔らかさまで煮込んで、短く切ってから口に運ぶとより安心です。
たんぱく質は蒸し調理で
肉や魚など、身体機能の維持に欠かすことのできない重要なたんぱく質は、蒸し調理で風味と柔らかさを残した調理がおすすめです。
特にかれいや鱈、ほたて貝柱などの魚介類、またしゅうまいや肉団子などの肉類は、蒸すことで甘みが際立ち、美味しく食べることのできる食事メニューです。
ただし魚介類をメニューに活用する場合は、骨を丁寧に除去しておくことを忘れないようにしましょう。
野菜類はすりつぶして柔らかく
不足しがちな食物繊維やビタミン類を補うためには、なんといっても野菜が欠かせません。
かぼちゃや芋のような食品は煮込みや蒸し調理を行い、歯茎ですりつぶせる柔らかさにまで調整していきましょう。
葉物のように繊維が残りやすい食べ物は、ミキサーにかけてペースト状にするなどの工夫が有効です。
食物繊維やビタミンのためには、果物も積極的な摂取を
また野菜以外にも、果物からも食物繊維やビタミンは摂取することが可能です。
バナナやいちご、メロンのような食べ物は大きさを調整することでそのまま食べることができる食品です。
桃や梨のような果物の場合は、コンポートに調理したり缶詰を活用すると、満足度の高い食事メニューにすることが出来ます。
卵や大豆の摂取も忘れずに
高野豆腐やきな粉、ゆで卵、大豆そのものといった食品は、非常に誤嚥を誘発しやすい食事メニューです。
そのため卵や大豆を嚥下食に取り入れる場合は、加工品を中心に食事メニューを考えていきましょう。
たとえば絹豆腐やひきわり納豆、茶碗蒸し、温泉豆腐などは、嚥下機能に不安の残るクライアントであっても咀嚼しやすく、飲み込みやすい食事メニューとなっていますので、オススメです。
適度に市販品の活用も
誤嚥性肺炎のリスクを下げるために必要な食事メニューを考えるなかでは、市販品も上手く取り入れていきましょう。
先ほどご紹介した絹豆腐やひきわり納豆の他にも、卵豆腐やゼリー、プリンのような食べ物は、のどごしもよく誤嚥のリスクを下げることが可能です。
また近年では「高齢者ソフト食」「ユニバーサルデザインフード」のように、飲み込みやすい食事メニューの市販品が充実しています。
さらに飲み込みやすい食事には必須ともいえるとろみに関しても、片栗粉やコーンスターチ以外にも簡単にとろみをつけることのできる商品が流通していますので、状況に応じて活用していきましょう。
嚥下機能はクライアント一人ひとりによって異なりますので、クライアントが口にする前には必ず食べ物の柔らかさや大きさを確認し、調整してからの提供を心がけましょう。
誤嚥性肺炎のリスクを下げるためには、飲み込みやすい食事メニューが必須!
誤嚥性肺炎のリスクを下げる上で有効とされている、飲み込みやすい食事メニューの取り入れ方をご紹介いたしました。
誤嚥性肺炎は日本の死因第6位にもなっており、高齢のクライアントを介護する上では最も注意をしたい病気の一つです。
改めて食事メニューを見直し、誤嚥性肺炎のリスクを下げる飲み込みやすい食事を取り入れていきましょう。