介護と深い関係の褥瘡。床ずれとの違いは?原因や症状を徹底解説。

褥瘡(じょくそう)は、体の一部が圧迫され続けることによって栄養が行き届かず、皮膚の一部が壊死してしまうことによって起こる症状です。

特に褥瘡は皮膚潰瘍(ひふかいよう)と呼ばれる状態まで症状が進行してしまった場合、適切な処置を怠ると、細菌が侵入して感染症を引き起こし、死因にまでつながりかねません。

そのため介護を行う上では、褥瘡に対する適切な処置を心がける必要があります。

今回の記事では褥瘡の原因や症状を解説しながら、床ずれとの違いについてご紹介していきます。

目次

介護で注意したい褥瘡

高齢や認知症、また脳卒中の後遺症などにより、介護が必要な状態となったクライアントに対して気を付けたいケアの一つが褥瘡です。

寝たきりや座りっぱなしという体の一部分に圧がかかりやすい状態で過ごすことが多く、また皮膚そのものがもつ弾力性を失われた肌状態の高齢者は、特に褥瘡が生じやすい状態にあります。

また介護を必要としているクライアントは皮膚の感覚や痛覚が麻痺してしまっているケースも多く、気が付くと褥瘡の状態に陥ってしまっている事例も報告されています。

改めて褥瘡には家族やアテンダントが注意を払い、よく状態を確認していきましょう。

褥瘡と床ずれの違い

褥瘡は床ずれという言葉でも表現される皮膚の状態です。

床ずれを専門的な用語で言い表した言葉が褥瘡になりますので、介護の現場で「褥瘡」や「床ずれ」という表現が出てきた場合は、どちらも同じ皮膚の状態を意味していて、専門的なケアが必要な状態であると認識しておきましょう。

褥瘡の度合い

褥瘡はその度合いによって4つのステージに分類されます。

ステージⅣが最も感染症の原因となりやすい危険な状態ですが、ステージⅠの段階から適切な処置を心がける必要があります。

ステージⅠ

ステージⅠは、皮膚に圧迫しても消えない赤みや、内出血などがみられる状態です。

皮膚のめくれや出血などの症状がないことから、クライアント本人はもちろんのことアテンダントも気が付きにくい段階です。

入浴介助や着替えの際には、皮膚に原因不明の赤みが見られないか、しっかりと確認しておきましょう。

ステージⅡ

ステージⅡは、ステージⅠの状態にある肌に摩擦力が加わることで、水ぶくれや皮膚のただれ、一部の皮膚がはがれてしまっているような状態です。

皮膚の損傷はまだ表皮層までしか進行していない段階ですが、適切な消毒・処置などを必要とする段階にあります。

この段階の褥瘡に気付いた場合は必ず家族やアテンダント、そして医療関係者間で情報を共有し、悪化を防ぐ対策を取る必要があります。

ステージⅢ

ステージⅢの段階になると、組織の欠陥が皮下組織にまで及んでしまっています。

患部からの膿や液のにじみなど、衛生的にもかなり気になる段階にまで症状が進行していることになります。

この状態にまで症状が進行してしまうと細菌への感染リスクが非常に高くなっていますので、早急な対策が必要です。

ステージⅣ

組織欠陥が肌、皮下組織に続いて筋肉や骨、腱などにまで達してしまっている状態です。

傷口が大きく広がり、状態によっては患部から骨が見えてしまったり、悪臭が発生したりするケースも珍しくありません。

早急な医療処置を必要としている段階ですので、速やかに医師への相談を行いましょう。

褥瘡の原因と頻発部位

褥瘡は、患部に圧力がかかる状態が続くことによって生じます。

そのため寝たきりのクライアントの場合は、お尻やかかと、後頭部に代表される部分で、横向きのクライアントの場合は横向きの場合は肩や腰骨部分で褥瘡が発生しやすくなっています。

また圧力が加わるのは寝具との接面には限りませんので、座位が多いクライアントや、コルセットやおむつを装着しているクライアントなどでも褥瘡が生じるリスクは高くなっています。

特に高齢のクライアントの場合は、皮膚の弾力がなくなった部分や骨のでっぱり部分などが、寝具や装身具などと長時間接していると危険な状態といえます。

日頃から着替えや入浴の際には赤みが生じていないかを確認し、早めに患部への負荷を減らす対策を行いましょう。

褥瘡の予防策

褥瘡の予防としては、なんといっても体の特定の部分に圧力がかからないような姿勢のサポートが大切になってきます。

また筋力や皮下脂肪のバランスなどが崩れる高齢のクライアントに対しては、より一層の見守り体制でしっかりと心身の健康状態を見守る必要があります。

寝具の改善

褥瘡の予防策として基本になってくるのは、体にかかる圧力を分散させたり軽くしたりする「除圧」です。

特に寝たきりのクライアントや座りっぱなしのクライアントに対しては、低反発のマットレスや座布団の使用、除圧枕の導入などが有効な予防策といえます。

また寝具を見直しても、決まった体位で過ごす時間が長すぎる場合は褥瘡が生じかねません。

家族による定期的な体位変換のほか、必要に応じて訪問介護に体位変換の定期利用をお願いするなどして、24時間体制で寝具と特定の部位が接触し続けないような介護を心がけましょう。

スキンケアの徹底

スキンケアと聞くと肌の保湿というイメージがありますが、介護現場におけるスキンケアでは、保湿と同様に清潔を保つケアが大切になってきます。

特におむつを着用している部分や、汗をかきやすい頭やワキなどの部分を清潔に保ち、乾燥を防ぐための保湿を行うことは、褥瘡を未然に防ぐ観点からも非常に有効的な手段といえます。

皮膚の清潔・保湿・保護を普段の介護の中で徹底していきましょう。

栄養の見直し

体のなかからの健康を考えることも、介護ではとても大切になってきます。

特に体内の水分量や脂肪量、筋肉量に衰えを感じやすい高齢者の場合、栄養価の高い食事を摂って必要な水分補給を行うことは、皮膚状態の健康はもちろんのこと、免疫面でも重要なポイントです。

看護師や医療機関などに相談の上、普段の食事で体内から健康もサポートしていきましょう。

褥瘡や床ずれの症状には最大限の配慮を。正しい知識で悪化を防ごう。

褥瘡と呼ばれるいわゆる床ずれは、要介護のクライアントであれば避けては通れない皮膚疾患の一つです。

改めて褥瘡の起こる原因と4段階の症状を理解したうえで、毎日の介護の中で皮膚の様子を見守っていくことが大切です。

必要に応じて医学的なアドバイスを参考にして、褥瘡や床ずれを極力未然に防ぐケアを意識していきましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

目次