自宅での介護が難しい場合の助けとなってくれるのが「介護施設」です。介護施設には、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホームなどさまざまな種類があり、利用できる条件や受けられるサービスはそれぞれで違います。
今回は「公的施設」と「民間施設」に分け、代表的な10種類の介護施設の特徴や違いについて、わかりやすく解説します。
それぞれの施設の特性を知り、施設探しにご活用ください。
「公的施設」の種類5つ
自治体や社会福祉法人などが運営している介護施設は「公的施設」に分類されます。
代表的な公的施設とその特徴を以下の表にまとめます。
施設名 | 対象 | 月額費用目安 |
---|---|---|
特別養護老人ホーム (特養) | 要介護3以上 | 7~15万円 |
介護老人保健施設 (老健) | 要介護1以上+自宅に戻ることを前提とした方 | 9〜20万円 |
介護医療院 (介護療養型医療施設) | 要介護1以上 | 10~20万円 |
ケアハウス | 一般型:自立 介護型:要介護1以上 | 8~20万円+初期費用 |
養護老人ホーム | 自立 | 0円~14万円 |
公的施設は、要介護者や低所得者を支えることに重きを置いているため、後述する民間施設に比べると月額費用は安いことが多いです。
ただしその分希望者が多く、施設によっては入居まで何か月も待たされるケースもあります。
以降ではそれぞれの施設の詳細を解説します。
特別養護老人ホーム(特養)
「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」は、要介護者を対象とした入居型の介護施設(老人ホーム)です。原則として要介護3以上で、65歳以上(特定16疾病と認められている場合は40~64歳も対象)の方が入居対象となります。
施設内には介護職員、生活相談員、栄養士、機能訓練指導員、介護支援専門員など、各方面の介護スタッフが常駐し、食事、掃除、排泄、更衣、洗面などさまざまな介護行為を受けながら生活をおくることができます。
手厚い介護が受けられる割に、月額費用はさほど高くないことから、要介護者の入居先の第一候補にあがることも多い施設です。人気が高く、入居まで3か月以上かかる地域もあります。
介護老人保健施設(老健)
「介護老人保健施設」は、要介護1以上の方を対象とした入居型の介護施設です。
前述した特別養護老人ホームと同じく、入居後は介護を受けながらの生活ができます。特別養護老人ホームとの大きな違いとして、介護老人保健施設の場合は自宅に戻って生活することを前提としており、終身利用はできないことです。入居期間は3~6か月程度と定められており、あくまで一時的な入居先として考えておかなければなりません。
介護医療院(介護療養型医療施設)
「介護医療院」は、要介護1以上の方を対象とした入居型の介護施設です。
長期の医療的ケアを必要とした要介護者を主な対象としており、一般的な施設では対応が難しい緊急対応が行える設備が用意され、医師や看護師も配置されています。
2024年3月に廃止される「介護療養型医療施設(介護療養型病床)」の代わりにあたる施設でもあります。
ケアハウス
「ケアハウス」は、高齢者向けの公的な生活支援施設です。
以下、「一般型」と「介護型」の2タイプがあり、仕組みが異なります。
ケアハウス(一般型):
家庭環境および住宅事情の理由により、自宅での生活が困難な60歳以上の人が入居対象。食事、掃除・洗濯等の生活支援サービスは受けられるが、介護サービスは用意されていない(ただし自主的に外部の介護事業者を利用することは可能)。そのため基本的には自立した生活が行える人が対象となる。
ケアハウス(介護型):
65歳以上で要介護度1以上の高齢者が対象。生活支援サービスだけでなく、入浴、排泄、機能訓練などの介護サービスを施設内で受けられる。
養護老人ホーム
「養護老人ホーム」は、現在の環境では生活が難しく、経済的にも困窮している65歳以上の高齢者を対象とした老人ホームです。
高齢の生活困窮者向けの施設となり、住まいの提供と自立支援を行っています。月額費用は前年度の収入額などから算出され、月額0円で利用できるケースもあります。
養護老人ホームは厳密には介護施設ではないため、施設内で介護サービスは受けられず、介護スタッフなども基本的には配置されていません。
「民間施設」の種類5つ
民間の企業が運営している介護施設や介護事業所は「民間施設」に分類されます。
代表的な民間施設とその特徴を以下の表にまとめます。
施設名 | 対象 | 月額費用目安 |
---|---|---|
介護付有料老人ホーム | 要支援1以上(自立で入居できるケースもあり) | 15~35万円+初期費用 |
住宅型有料老人ホーム | 自立~要介護まで幅広い | 15~35万円+初期費用 |
健康型有料老人ホーム | 自立 | 15~40万円+初期費用 |
グループホーム | 認知症をもつ方 | 15~30万円 |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 自立~ | 10~30万円 |
民間施設は、企業が運営していることから営利目的の側面もあるため、月額費用や初期費用は公的施設と違い高額となることが多いです。その分「部屋が広い」「娯楽設備が充実してる」など、より快適な生活がおくれる環境が用意されています。
また、民間施設の場合、施設の数自体も多いため、お金さえ余裕があれば、選択肢が無数にあり、入居先を見つけやすいこともメリットとなります。
以降ではそれぞれの施設の詳細を解説します。
介護付有料老人ホーム
「介護付有料老人ホーム」は、施設内で介護サービスを受けられる民間の入居施設です。
介護スタッフが常駐し24時間体制で見守ってくれ、食事、掃除、排泄、更衣といった身体介護サービスを、その場で受けられる環境で暮らすことができます。
一般的には要支援・要介護状態の人を入居対象とした施設が多いものの、中には自立した生活をおくれる方が入居可能な介護付有料老人ホームもあります。
住宅型有料老人ホーム
「住宅型有料老人ホーム」は、食事、洗濯、清掃、見守りなどの生活支援サービスを受けられる民間の入居施設です。
あくまで生活支援にとどまり、介護サービスの提供は行っていません。もしも介護サービスを受けたい場合には、個人的に外部業者と契約する形となります。
住宅型有料老人ホームの場合、自立している方、要介護状態の方どちらでも入居が可能ですが、あまりに病状が重い方は入居できないこともあります。
健康型有料老人ホーム
「健康型有料老人ホーム」は、厳密には介護施設とは対局にある施設であり、元気な高齢者を対象とした民間の入居施設です。
家事手伝いなどのサポートを受けつつ優雅な老後生活をおくることができ、中にはジムや温泉などが設置された施設や、高級ホテルのような作りの施設もあります。
注意点として、健康型有料老人ホームでは、要介護状態となると退去しなければならないケースがあるため、入居し続けるには健康を維持しなければなりません。
グループホーム
「グループホーム」は、認知症の方を対象とした民間の入居施設です。認知症患者が少人数(5~9人程度)で共同生活をおくれる施設であり、専門の介護スタッフが24時間体制で認知症の方の介護や見守りを行ってくれます。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、高齢者が安心して暮らせる配慮が施された住宅(賃貸住宅)のことです。
サービス付き高齢者向け住宅では、一般の住宅と違い、以下のような設備やサービスが用意されています。
- バリアフリー設計
- 日中は介護スタッフが常駐(夜間は任意)
- 安否確認や生活相談サービスが受けられる など
さらに、近年は介護サービスも受けられるサービス付き高齢者向け住宅も増えてきており、老人ホームとの境界線が曖昧になりつつもあります。入居対象者は特に制限はなく、自立している方、要介護状態の方まで幅広いです。ただし施設によっては、症状の重い方や、認知症がある方などは入居できないこともあります。
介護施設の選び方のポイント
最後に、自分にあった介護施設を選ぶうえでのポイントや注意点について解説します。
ポイント1.入居条件をよく確認する
介護施設にはそれぞれ入居条件があります。「特別養護老人ホーム」のように要介護3以上でないと入居できない施設もあれば、反対に「ケアハウス(一般型)」「健康型有料老人ホーム」のように、自立した生活が行える状態でないと入居させてくれない施設もあります。
さらに入居後に要介護状態となると退去しなければならない施設もあるため、現状の身体の状態、また今後も健康でいられる身体であるかも踏まえた上で、施設を選ぶことが大切です。
ポイント2.費用を考える
介護施設に入居すると、毎月入居費用を払い続ける必要があり、加えて入居時には初期費用が発生する施設もあります。一般的に民間施設の方が費用は高くなりやすく、特に有料老人ホームの場合は毎月の入居費用が20万円を超える施設や、数百万円の初期費用が発生する施設もあります。
家計を破綻させないためにも、支払いが行えるかをよくシミュレーションした上で施設を選ぶことが大切です。生活費、保険料、医療費などそのほかに掛かる費用も含めて、よくシミュレーションするようにしましょう。
ポイント3.住みやすさや立地を考える
「設備が不便でないか」「部屋の大きさや間取りは問題ないか」「施設の雰囲気やサービスに不満はないか」など、入居するご家族の気持ちや希望をよく聞き取ったうえで施設を選んであげましょう。
また、遠方地の介護施設を選ぶ場合には「遠く離れた地で過ごすことにクライアント本人は抵抗がないか」「家族が面会する上で距離的に支障はないか」なども考えておきたいところです。
毎日暮らすことになるため、よく考えて決めよう
以上のように、介護施設にはさまざまな種類があり、入居できる条件や受けられるサービスなどは施設によって違います。
入居後は、選んだ介護施設がクライアント本人にとっての新しい家となり、その施設内で毎日暮らすことになります。
一度入居すると変更や退去というのは気軽にできるものではないため、施設の特徴を理解し、よく吟味して決めたいところです。
実際に入居することになるご家族ともよく相談し、その人の要望にできるだけマッチした施設を探してあげてください。