高次脳機能障害がある人を介護するご家族は「どう介護したら良いのかわからない」「自宅介護のポイントが知りたい」と思うのではないでしょうか。
高次脳機能障害による症状はさまざまですので、症状に適した介護をすることがポイントです。
この記事では、高次脳機能障害とは何かを紹介しながら、症状別自宅介護のポイントを紹介しています。
介護をするご家族の負担が少しでも軽減できる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、人間に備わっている高次脳の部分が、病気やけがによって障害を受けた状態のことをいいます。
脳には食べる・眠るなどすべての動物が持つ部分と、考える・覚えるなど人間が特に発達している部分があります。
この人間が特に発達している脳の機能を高次脳機能といい、社会で生きていくために重要な役割を担っているのです。
脳の部位によって高次脳機能の働きが異なるため、損傷を受けた部位によって高次脳機能障害の症状は異なります。
そのため、出現している高次脳機能障害に適した介護をすることが重要です。
高次脳機能障害の自宅介護のポイント
高次脳機能障害の自宅介護のポイントを、高次脳機能障害の症状別に紹介します。
障害のあるご本人の症状と照らし合わせながら、自宅介護の参考にしてください。
記憶障害
高次脳機能障害の記憶障害は、新しいことを覚えるのが難しく、長期記憶ができないのが特徴です。
認知症による記憶障害と異なる点は、脳への損傷が起きる前の記憶を忘れることはまれであることです。
自宅介護のポイントは、ご本人が忘れても支障のない環境をつくることです。
カレンダーに1日の予定を記入しておくと、その日のスケジュールがいつでも確認できます。
鍵や財布などは決まった場所に保管しておくと、どこかに置き忘れるのを予防できます。
またご本人がメモをとる、スマホに入力するといったことも、忘れたときに対応できる方法です。
注意障害
注意障害は周りの影響をうけすぎて集中できない、またはひとつのことに集中しすぎる症状です。
会話に注意が向けられない、いわゆる「うわの空」が生じることや、外出すると歩くことに集中しすぎて、車や自転車に注意が向けられないこともあります。
自宅介護のポイントは、話すときは相手が自分を見ているのか確認し、端的に伝えるようにしましょう。
何かに固執して集中しすぎていたら、安全を確認して声をかけましょう。
感情障害
感情障害とは、感情のコントロールが上手くできない障害です。
突然怒って他人を攻撃しだしたり、周囲の状況にそぐわないことを言ったりし、対人関係に影響を及ぼすことがあります。
意欲が低下しうつ傾向になることや、反対に気分が異常に高ぶった躁状態になることもあります。
またご本人の意思とは関係なく、泣いたり笑ったりすることもあるため、ご家族は感情をそのまま受け取らないことも大切です。
自宅介護のポイントは、感情障害に振り回されず落ち着いて対応することです。
抑制の効かないひとつひとつの感情にご家族が左右されると、精神的にまいってしまいます。
落ち着いて対応すると、感情障害を起こしている人も徐々に冷静になることが多いと言われています。
遂行機能障害
遂行機能障害とは目的を達成するための段取りが上手くできない、融通がきかないといった症状が現れます。
例えばお風呂に入っても体を洗えない、外出の予定があるのに時間までに準備ができない、雨が降っても庭で水やりをし続けるなどがあります。
物事を順序だてて行動する遂行機能は、記憶力と注意力が正常に働くことで達成できるため、記憶障害と注意障害があると遂行機能障害が起きやすいです。
自宅介護のポイントは、ご本人が行動できない時は指示の声かけをしたり、最初少し手伝ったりすると行動できるようになります。
融通がきかない行動をしていたら、危険でなければ無理に止めなくてもよいです。
失語
失語には、言葉が上手く発せない、言葉の意味を理解できない、文字が読めない・書けないといった症状があります。
脳の損傷を受けている部位によって、失語の種類が全く異なります。
自宅介護のポイントは、話すときはゆっくり・はっきりと簡単な言葉で伝えましょう。
質問するときは「はい」「いいえ」で答えられる質問にすると、相手が答えやすいです。
またジェスチャーやイラストを用いて会話すると、言葉の意味が理解しやすいです。
半側空間無視
半側空間無視は左右どちらかの空間が認識できない状態で、左側の空間無視が多く見られます。
左側の空間が見えているにも関わらず認識ができないため、右ばかり向く、左側にぶつかる、食事の際に左側のものを残すなどの症状がみられます。
自宅介護のポイントは、ご本人の右側から声をかけることで認識されやすく、会話がスムーズになります。
また移動の際にぶつかって転ばないように、廊下や階段など移動するスペースには物を置かないようにしましょう。
食事の際は、左側にのこった食事を食べてもらえるように、食器を半回転すると食べてもらえます。
ご家族が気をつけたいこと
高次脳機能障害は、杖や車いすといった誰もがみても見てわかる障害ではなく、見えない障害です。
そのため他の人の協力や理解が得にくく、ご本人やご家族はつらい気持ちを抱えることがあるでしょう。
またご本人自身が高次脳機能障害であるという病識がなく、脳が損傷する前と同じように生活をしようとするケースもあります。
そういった場合、日常生活や社会生活が上手くいかずストレスを抱えやすくなり、うつ状態になったり、さらに感情のコントロールが効きづらくなったりします。
ご家族はご本人に病識がないからといって、病気を発症する前と同じように接するのではなく、高次脳機能障害であると理解し接することが大切です。
また身近な人に高次脳機能障害を理解してもらうことで、ご本人もご家族も生活しやすくなります。
高次脳機能障害の自宅介護のポイントまとめ
高次脳機能障害とは、人間に備わっている高次脳の部分が、病気やけがによって障害を受けた状態のことです。
障害を受けた脳の部位によって症状は異なるため、症状に適した介護をすることが自宅介護のポイントです。
またご家族は高次脳機能障害をよく理解し、脳の障害によってご本人が今までとは違う言動をとっていることを心に留めておきましょう。