認知症介護は、認知症患者さんだけではなく、その家族にとっても非常に大きなことです。
この記事では、認知症介護の現実や家族の役割、介護の限界を感じた時のサイン、負担を軽減するための支援サービス、心のケア、介護施設の活用、そして支えるコミュニティと情報源などについて、詳しく紹介していきます。
少しでも、家族介護の負担を軽減し、認知症患者さんとその家族がより良い生活を送るためのヒントがご提供できれば幸いです。
認知症介護の現実と家族の役割
認知症介護の特徴のひとつに、症状の進行があげられます。
認知症の症状は徐々に進行し、記憶障害や判断力の低下、行動の変化など、日常生活に支障をきたすことが多いため、突然介護が必要となるというよりは、徐々に介護の負担が大きくなってくるというイメージです。
そのため、家族介護者(介護をする家族)は、日々の生活の中で、愛する人の変化に直面しながら、身体的・精神的なサポートを提供し続けることが求められます。
認知症患者さん自身の変化はもちろん、介護をする側の家族も変化がありますので、状況に応じた対応が求められます。
家族が介護者として果たす役割は、単に日常の世話をするだけではありません。
認知症という病気の病状の理解、医療やケアの選択、法的・財政的な問題への対処など、多岐にわたる知識とスキルが必要とされます。
このような大きなプレッシャーによって、介護をする家族にも、身体的、精神的な影響が生じる可能性があり、それが時として「介護疲れ」として表れることがあります。
家族介護の役割を果たす中で、自分自身の限界を認識し、適切な支援を求めることが重要です。
家族介護の限界を感じた時のサイン
家族介護の限界は、身体的、精神的な様々なサインを通じて現れます。
これらを見逃さず、早期に対応することが、介護者自身の健康を守る上で非常に重要です。
主なサインには以下のようなものがあります。
身体的なサイン
- 常に疲れを感じる
- 睡眠障害(睡眠不足や過度な睡眠)
- 頭痛や胃痛など、ストレスによる身体的な症状
- 免疫力の低下による病気の頻発
精神的なサイン
- 焦燥感やイライラが増える
- 悲観的な考えやうつ症状
- 孤独感や孤立感を強く感じる
- 介護する家族への罪悪感や怒り
これらのサインは、介護が家族にとって重荷となっていることを示しています。
介護者自身が燃え尽き症候群やうつ病を発症するリスクもあり、早期の対処が必要です。
大切な家族の介護が「負担」と感じてしまうことそのものが、自分自身への自己嫌悪となってしまう可能性もあるため、負担を受け入れることは簡単ではありませんが、自分の健康を維持することこそが、家族の介護を継続するためには重要です。
家族介護の限界を感じたら、まずは自分の健康と幸福を優先する必要があります。
家族や友人、専門の支援サービスに支援を求めることが大切です。
家族の負担軽減のために利用できる支援サービス
家族介護の負担を軽減するためには、外部の支援サービスを積極的に活用することが重要です。
認知症患者さんやその家族を支援するための様々なサービスが提供されていますので、状況に応じて最適なサービスを使用していくことが大切です。
ここでは、主に利用できるサービスの種類と特徴を紹介します。
訪問介護サービス
訪問介護は、介護が必要な人が自宅で生活を続けることができるように、食事の準備や入浴、排せつなどの日常生活の支援を受けることができます。
利用者(クライアント)のニーズに合わせて、サービスの頻度や時間を調整することが可能です。
介護認定の状況にもよりますが、認知症の場合であっても、訪問介護サービスを受けられる場合もあります。
通所介護サービス(デイサービス)
デイサービスは、介護が必要な人が日中に施設を訪れ、リハビリテーションやレクリエーション、入浴などのサービスを受けることができる介護サービスです。
社会的交流の場としても機能し、利用者の心身の健康維持に役立ちます。
認知症の進行を緩やかにする方法のひとつが「交流」です。
家族以外の人との交流を通じて、脳に刺激を与えていくことが重要です。
ショートステイ(短期入所生活介護)
家族介護者が休息を取るために、一時的に施設を利用することができる介護サービスです。
旅行や病気、家族の介護をする人の状況に合わせて利用でき、数日間から数週間の利用が可能です。
認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
認知症の人が少人数で共同生活をするための住居で、家庭的な環境の中で生活の支援を受けながら、自立した日常生活を営むことを目指とした、認知症グループホームというサービスがあります。
認知症グループホームでは、共同生活を通じて、社会性や自立性を促進する効果が期待できます。
認知症グループホームの定義
認知症(急性を除く)の高齢者に対して、共同生活住居で、家庭的な環境と地域住民との交流の下、入浴・排せつ・食事等の介護などの日常生活上の世話と機能訓練を行い、能力に応じ自立した日常生活を営めるようにするもの。
介護サービスの参考例
以下に代表的な介護サービスを紹介します。
定期巡回サービス
デイサービス
訪問看護
心のケアやメンタルケアを大切にしよう
認知症介護を担う家族は、多くの場合、精神的な負担を抱えています。
愛する人の変化、介護の責任、そして将来への不安は、大きな心理的ストレスとなり得ます。
家族が抱える感情と健康的に向き合うことは、介護の質を高め、家族の幸福感を維持するために不可欠です。
心のケアを行うことは、自分自身を守るためであり、家族を守るためでもあります。
限界を迎える前に、定期的にケアをしていきましょう。
メンタルケアのコツを解説します。
ぜひ実践してみてください。
自分の感情を認識する
介護をする中で生じる感情は、怒り、悲しみ、不安、孤独感など多岐にわたります。
これらの感情は自然なものであり、自分自身の感情を正直に認めることが大切です。
感情を認識することで、適切なサポートを求めやすくなります。
ノートなどに感情を書き出してみることがおすすめです。
自分自身の感情と客観的に向かい合うことができます。
介護サポートグループへの参加
介護者向けのサポートグループに参加することで、同じような状況にある他の家族と情報や経験を共有することができます。
他の介護者との交流は、孤独感を軽減し、新たな解決策を見出す機会となり得ます。
単純なことですが、「自分だけじゃない」というのは非常に大きな安心感となります。
プロのメンタルサポートの活用
心理的なストレスが強い場合、専門家によるカウンセリングを受けることも一つの選択肢です。
専門家は、介護者が抱えるストレスや感情を理解し、対処するための具体的なアドバイスを提供できます。
現代において、心療内科や精神科などを利用することは特別なことではありません。
気軽にカウンセリングを受けるような気持ちで相談してみましょう。
【限界になる前に】認知症に対して家族としてできることは
認知症患者さんにとって、家族は非常に大きな支えであることは言うまでもありません。
認知症患者さん自身が、「家族に負担をかけてしまっている」というプレッシャーによって、メンタル的に落ち込んでしまうケースも少なくありません。
だからこそ、介護をする家族は心身ともに健康でいる必要があるのです。
家族としてのサポートが、認知症患者とその家族の幸せな生活を支える鍵となります。
適切な介護サービスを利用しながら、介護を行う自分自身のケアもしっかりとおこなっていきましょう。
限界を感じる前に、介護疲れをおこしてしまう前に、できるだけ早くから自分のケアを始めましょう。