70歳頃から増え始める認知症、70代80代に認知症患者が多い理由は?


「認知症」は、年齢が高いほど患いやすい脳の病気です。特に「70歳」が一つのラインであり、70歳頃を超えると認知症患者が増えはじめる傾向にあります。

なぜ認知症は、70代80代の高齢者に多いのでしょう。

今回は、70代80代の認知症患者の現状や認知症発症の原因、また70歳からできる認知症対策について紹介していきます。

目次

70歳頃から増える認知症

認知症は、「若年性認知症」として65歳未満で発症するケースもありますが、大多数の方は70代80代の高齢になってから発症します。

以下の表は、厚生労働省の資料をもとに「年齢層別の認知症有病率」をまとめたものです。

年齢層全体男性女性
65~69歳1.5%1.5%1.6%
70~74歳3.6%3.4%3.8%
75~79歳10.4%9.6%11.0%
80~84歳22.4%20.0%24.0%
85~89歳44.3%35.6%48.5%
90歳以上64.2%42.4%71.8%
出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について:一万人コホート年齢階級別の認知症有病率より」


「65~69歳」の認知症有病率は1.5%(全体)となり、この年齢層ではまだほとんどの方が認知症を患っていない状況です。

しかし「70~74歳」では3.6%(全体)となり、「65~69歳」の1.5%と比べた場合、一気に2.4倍に増えています。同様に「75~79歳」では約2.8倍、「80~84歳」では約2.1倍、「85~89歳」では約1.9倍と、5歳毎に有病率が倍増している傾向にあります。

70歳という年齢は、その倍増の起点とも見て取れますので、認知症に対しての警戒を高めなければならない年齢ともいえるでしょう。

今後高齢者の5人に1人が認知症になる可能性

日本における65歳以上の認知症患者数は、2012年の段階で462万人(高齢者の約7人に1人)と集計されています。

今後はさらに認知症患者が増える可能性が高く、2025年には約650〜700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症患者になると予測されています。

2025年には第一次ベビーブームとなる1947年~1949年に生まれた団塊の世代が、2025年には76~78歳になります。人口の多い世代が認知症を患いやすい年齢に突入するため、この先は認知症がさらに身近な社会となる可能性が高いのです。

認知症患者が70代80代に多い理由は?

なぜ認知症患者は70代80代の高齢者に多いのでしょう。

認知症のメカニズムはまだまだ解明されていない部分も多いですが、一般的に以下のような要素が認知症発症に関係していると考えられています。

  • 老化
  • 病気(生活習慣病を含む)
  • ストレス

以降では、それぞれの原因について詳細を解説します。

原因1.老化

認知症にはいくつかのタイプがありますが、なかでも最も患者数が多いのは「アルツハイマー型認知症」と呼ばれるタイプであり、認知症患者全体の約7割を占めます。

アルツハイマー型認知症の原因は、老化に伴い「アミロイドβ」や「タウ」などの蛋白が異常構造となり脳内にたまり、神経細胞が死滅して、認知に関連する大脳機能が低下することが一つの原因として考えられています。

アミロイドβは長い時間を掛けて溜まると考えられているため、70歳以上の高齢となると、これまでに蓄積したアミロイドβに注意しなければなりません。

※ただし、アミロイドβがたまる原因については、加齢や遺伝が影響するとされているものの、明確なことは分かっていないのが現状です。

原因2.病気(生活習慣病を含む)

認知症は、脳梗塞、脳出血、脳梗塞、脳出血など、さまざまな病気が原因となり発症することがあります。

もっと身近な病気としては、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)も認知症との関係が深いといわれています(アルツハイマー型認知症や血管性認知症の場合)。

生活習慣病は、年齢と比例して患者数が増える傾向にあります。

70歳を超えると多くの方が高血圧や糖尿病を患っている状況のため、こうしたことも70歳以降に認知症が増える原因の一つとして考えられます。

原因3.ストレス

長期的にストレスを受けたり、鬱状態にあると、ストレスホルモンが蓄積することで脳に悪影響を与えることがあります。

他にも、難聴などを患い他者との会話がスムーズにできなくなり引きこもりがちになると、軽度認知障害(MCI)を発症するケースもあります。

70歳となると仕事は引退し、業務のストレスからは解放されている方が多いかと思いますが、引退後の生活の中で行き場のない気持ちを抱え、ストレスをため込んでしまうケースもあります。

70歳からできる認知症対策

認知症を予防するためには、基本的なことではありますが「生活習慣」を見直すことが一つの対策となります。

具体的には、以下のような点に気を配り、生活習慣を見直すことが大切です。

  • バランスの良い食事(1日20~30品目)
  • 適度な運動
  • 適度な昼寝(30分以内の昼寝は、アルツハイマー型認知症予防に効果があるとされている)
  • 喫煙やお酒を控える  など

こうした対策は、認知症だけでなく高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防にも繋がるため、一石二鳥です。

加えて、ストレスをためないことが重要であり、メリハリを付けながら精神面のリフレッシュをすることが大切です。

たとえば「人と話すことを心掛ける」「楽器の演奏、読書、パズルなど趣味をもち知的活動を行う」といった行動は、ストレス解消し、さらに適度な刺激にもなるため、脳の健康を保つことができます。

反対に、誰とも話さず、趣味も持たず、刺激のない生活を繰り返していると、認知機能が低下する恐れがあります。

楽しく生きることが大切

以上、認知症について70歳という年齢も交え解説しました。

70歳という年齢は、肉体的な面での衰えに注意しなければなりませんが、同時に精神的な面での衰えにも注意したいところです。

特にこれまで仕事一筋できた方などですと、引退後の生活に上手く馴染めずにストレスを抱えたり、脳が衰えてしまうこともあります。

「病は気から」ということわざがあるように、認知症の予防には「楽しんで生きること」「無理なく生きること」も大事です。

いくつになっても、楽しく生きることを心掛ければ、脳や気持ちを若々しく保ちやすいため、認知症に限らずさまざまな病気の改善にも繋がっていくかもしれません。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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