せん妄の自宅介護のポイント~予防方法とやってはいけないことも解説~

ご家族がせん妄になると「どうやって対応したらいい?」と悩むのではないでしょうか。

この記事では、せん妄の自宅介護のポイントとせん妄の予防方法、せん妄の対応でやってはいけないことについて紹介します。

せん妄の対応に悩まれている方の参考になる内容となっていますので、最後まで読み進めてください。

目次

せん妄とは?

せん妄とは、高齢者によく見られる一過性の意識障害です。

せん妄は急に発症し、症状が落ち着くまでに数時間から数日、または数週間かかることがあります。

1日の中で症状の変動があるのが特徴で、夕方から夜間はせん妄が悪化することが多いです。

せん妄と似た疾患で認知症がありますが、せん妄は認知症とは異なります。

認知症は徐々にもの忘れなどの症状が出現し、一過性ではなく永続的であり、1日の変動は大きくありません。

また、せん妄は慢性脳疾患があると発症しやすいといわれており、高齢者で認知症の方はせん妄になるリスクが高いといえます。

せん妄の自宅介護のポイント

せん妄の自宅介護のポイントを紹介します。

落ち着いて話を聞く

せん妄は興奮して叫ぶ、落ち着きがなくなるなどの症状が見られます。

その時、介護されているご家族も驚きパニックになるかもしれませんが、まずは落ち着きましょう。

せん妄が起きているご本人は強い不安に駆られており、ご家族がパニックになるとご本人のせん妄を助長してしまいます。

部屋が暗い場合は部屋を明るくし、ご本人の話を聞きましょう。

幻覚がある場合は

せん妄は「誰かいる」「虫がいる」といった幻覚症状があります。

「誰かいる」と訴えた場合は「様子を見てくる」と伝えて確認し、いなくなったことを伝えましょう。

「虫がいる」という場合は「掃除をするね」と伝え、掃除をする動作をしましょう。

演技にはなりますが、ご本人にとっての不安要素をなくすだけで、安心して過ごせるようになります。

また「少しお茶を一緒に飲もう」など、気分を紛らわすのもひとつの手段です。

なお幻覚に対して「どんな人だった」「どういう虫だった」という声掛けは、幻覚を助長しますので控えましょう。

主治医に相談する

せん妄が出現したときは、翌日以降でもかまいませんので、かかりつけ医を受診し主治医に相談しましょう。

相談するときは、せん妄が起きた時間やご本人の様子を伝えます。

せん妄は体の調子が悪いときや、内服している薬の影響によって出現するケースがあります。

そういった場合は、体の調子が悪いところを治療したり、内服している薬を変更したりすることでせん妄が落ち着くことがあります。

せん妄の要因を医学的な面から判断するために、主治医に相談することは大切です。

せん妄を予防する・軽減できる自宅介護のポイント

せん妄は一過性であるとはいえ、介護するご家族は大変ですし、ご本人も辛い気持ちになります。

そのためせん妄を予防すること、せん妄になった後に少しでも軽減できるような自宅介護が必要です。

せん妄が予防・軽減できる自宅介護のポイントを紹介します。

生活リズムを整える

私たちは昼起きて活動し夜眠りますが、せん妄の人は夜起きて昼眠る、いわゆる昼夜逆転の状態になっていることが少なくありません。

夜眠れないと寝不足となり心身の疲れがしっかりとれず、記憶が曖昧になったり、不安から興奮しやすくなったりします。

そのため夜間に眠れるように、昼は疲れるような活動を促していきましょう。

例えば一緒に散歩をする、家事をするといったことでも、ご本人にとっては刺激となり疲労を感じることが多くあります。

また太陽の光を浴びることは、体内のリズムをととのえることができるため、昼夜逆転の予防・改善に効果的です。

環境に配慮する

環境に配慮することもせん妄を予防・軽減する大切なポイントです。

高齢者は新しい環境の変化や今までと異なることが起きると、せん妄となるリスクが高まることがわかっています。

なるべく今まで通りの生活ができるように、住み慣れた環境を大きく変えないように配慮しましょう。

また、はさみなど危険なものは、ご本人のそばに置かないようにしましょう。

ご本人が興奮したときに、誤って手が触れケガをするケースがあります。

体の調子を整える

せん妄になる理由のひとつに体調が悪いことが挙げられ、具体的には脱水や発熱、貧血などの症状があります。

特に高齢者は喉の渇きと暑さを感じる機能が低下しているため、積極的な水分摂取と温度調節ができない傾向にあります。

加えて尿をつくる腎臓の機能も低下していることから、脱水となるリスクが高いのです。

そのためご家族が積極的に水分摂取を促し、空調や衣類の調整ができるようにすることで、脱水が予防できます。

一般的な貧血の症状は動悸や息切れ、ふらつきなどがあります。

しかし活動量が少ない高齢者だと、動悸や息切れを訴えることがなく「何となく元気がない」「反応が鈍い」という症状がみられます。

心当たりがありましたら、かかりつけ医を受診しましょう。

せん妄のときにやってはいけないこと

せん妄が起きたとき、ご家族の対応方法によっては刺激になってしまい、興奮を助長するケースがあります。

せん妄のときにやってはいけないことを紹介します。

怒る・命令する

せん妄が起きたときに「静かにして」「夜だから寝て」というように、怒ったり命令したりすると、高齢者はさらに興奮してしまいます。

高齢者は「自分の訴えを聞いてくれない」「理解してもらえない」と辛い気持ちになり精神的なストレスを抱え、さらにせん妄を引き起こすこともあります。

しかし介護をするご家族が、大変である気持ちはとてもわかります。

せん妄が起きたときは一旦深呼吸し、気持ちを落ち着かせてから対応すると良いでしょう。

幻覚を否定する

せん妄の症状である幻覚を否定すると、高齢者は「本当に自分は見たのに」「なぜ信じてもらえないのか」と興奮してしまいます。

せん妄が起きている高齢者にとっては、幻覚が事実なのです。

幻覚を否定せず、上で述べたような幻覚の対応方法を参考にしてください。

せん妄はご本人に寄り添うことが自宅介護のポイント

せん妄は一過性の意識障害であり、急に発症し夕方から夜間は症状が悪化するのが特徴で、認知症とは異なる病気です。

一過性とはいえ、介護をするご家族はどのように対応したら良いのか不安になると思いますので、記事で紹介した対応方法を参考にしてください。

自宅介護のポイントは、せん妄を訴えているご本人に寄り添うことです。

またせん妄は予防・軽減ができますので、生活リズムや環境、体調をととのえていきましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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