食事介護を家族がするとき、介護士が気をつけること。事故を予防するために

施設へ面会にきたご家族から「食事介護をしたい」と希望があったとき、介護士は不安に思うのではないでしょうか。

というのも、食事介助は窒息事故のリスクが少なからずあるため、許可は安易にしづらいものです。

しかしご家族の「食事介護をしたい」という気持ちをくみ取ることも大切です。

そこで今回は、食事介護をご家族がするときに介護士が気をつけることを紹介します。

目次

食事介護をご家族・介護士がするときの違い

まず、食事介助を家族・介護士がするときの違いから紹介します。

違いを知っておくと、どのような点に気をつけたらよいのかわかります。

病気・嚥下の理解

介護士はクライアントの病気と嚥下状態を理解しているため、どのように食事介助をしたらよいのか把握しています。

例えば脳梗塞の既往がある軽度片麻痺のクライアントには、ご本人が食べやすい姿勢を整え、食事介助の際は健側に座り、健側から適したスプーンで口元へ運びます。

また嚥下状態に合わせて食事を運ぶタイミングを考えたり、途中で水分を運んだりもするでしょう。

ご家族によっては、病気や嚥下の理解ができていないケースがあり、そのようなご家族が食事介助をすると窒息するリスクが高まります。

食事介助の方法

食事介助は介護における専門的な技術であり、介護士は必要な知識とスキルが身に付いているため安全な食事介助ができます。

日々の業務で食事介助をしているため、特別であることを感じないかもしれませんが、介護士は一人ひとりのクライアントに適した食事介助をしているでしょう。

食事介助の知識とスキルがないご家族が食事介助をする場合は、介護士が指導しなければなりません。

ご本人の体調

介護士は24時間クライアントと関わっているため、「なんとなく調子が悪そう」「今日の飲み込みはよくない」といったご本人の変化に気づきやすいです。

ご本人の状態によっては、食事を控えたほうがよいことや、食事を中断することもあるでしょう。

ご家族は体調の変化に気づくことはあっても、些細な変化には気づきづらいことがあります。

また食事介助を時々するご家族や、したことがないご家族だと、飲み込みがよい・悪いといった変化には気づきません。

家族の食事介護に関する施設の方針は?

施設によって家族の食事介護に関する方針は異なるため、ご家族から希望されたときに備えて、まずは施設の方針を確認しましょう。

たとえ「家族が食事介護を希望したときは許可して良い」「家族が食事介護中の事故責任は家族にある」という施設の方針でも、介護士はご家族に丸投げしてはいけません。

介護士はクライアントとそのご家族の状態から、食事介助をご家族がしてもよいのかをアセスメントする必要があります。

ご家族の食事介助が困難であると判断した場合は、なぜ困難であるのか理由をご家族へ伝えましょう。

アセスメントは悲しい事故を回避することはもちろん、自分の身を守るためにも大切なことです。

自分で判断できないときは介護職員で話し合う

働いて間もない介護士にとっては、1人でアセスメントし判断することは難しいかもしれません。

そのような時は介護職員で話し合い、ご家族が食事介助をしてもよいのか判断します。

ご家族には「ご家族が食事介護をするときは介護職員でまず相談しますので、お待ちいただいて良いですか」と伝えれば納得されるでしょう。

また介護職員が、ご家族が食事介助をしていると把握していると、部屋を通りかかった時に様子を見たり、何かあった場合は駆けつけられたりと協力しやすい環境ができます。

家族の食事介護の事故を予防するために介護士がすること

ご家族が食事介助をしてもよいとアセスメントした場合、食事介助の事故を予防するために、介護士は以下のことをする必要があります。

  1. クライアントの状態を説明する
  2. 食事介護の注意点を説明する
  3. 介護士の食事介護を見てもらう
  4. ご家族の食事介護を確認する
  5. 食事介護が終わったら声をかけてもらう

それぞれ詳しく紹介します。

クライアントの状態を説明する

まずはクライアントの状態をご家族へ説明しましょう。

病気と普段の嚥下の様子、今日の体調も伝えます。

食事介護の注意点を説明する

食事介護をするときに注意点を説明します。

以下の点に注意するよう、実際に食事とスプーンを用いながら説明しましょう。

  • 車いすやベッドでのクライアントの姿勢
  • 食事介護するときの介護者の位置
  • 一口の量
  • 口元への運び方
  • 口元へ運ぶタイミング
  • 水分をはさむタイミング
  • 食事をやめるタイミング

むせた時や口の中に食べものが残っている時は、食事を運ばないように指導します。

ご家族は「食事を全部食べてほしい」という気持ちから、無理してでも全部食べてもらおうとするかもしれません。

しかしご本人の食欲がないのに無理に口へ運ぶと誤嚥する危険があります。

ご本人がいつもどのくらい食べるのか説明しながら、食事をやめるタイミングについても話しておきましょう。

介護士の食事介護を見てもらう

クライアントの姿勢をととのえ、介護士の食事介助をご家族に見てもらいます。

実際に食事介助を見てもらうことで、ご家族がイメージがつかみやすいです。

ご家族の食事介護を確認する

ご家族の食事介助を確認し、安全にできていれば、そのまま食事介助をしていただきましょう。

ご家族は「介護士は大変そう」「声をかけるのが申し訳ない」と思うことがありますので、不安なことがあれば遠慮なく声をかけていただくように伝えましょう。

また食事介助が終わった時も、介護士まで声をかけていただくように伝えます。

むせ込みが強いとき、様子がおかしいと思ったらナースコールを押すように指導します。

食事介護が終わったら声をかけてもらう

食事介助が終わったらご家族に声をかけてもらい、ご本人の様子を確認しましょう。

ご家族へ食事はどれくらい食べれたか、食事の様子など聞きましょう。

食事介護を家族がするときは介護士のサポートが必要

食事介護は窒息事故のリスクが少なからずあります。

介護士は食事介助の知識とスキルが身に付いており、一人ひとりに合わせた食事介助ができますが、ご家族はそうではありません。

ご家族から食事介護の希望があったときは、食事介護をしても良いのか、ご本人とご家族の状態からアセスメントをすることが必要です。

ご家族が食事介護をしてもよいとアセスメントしたときは、食事介助を実際に見てもらいながら注意点を伝え、安全に食事ができるようにしましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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