おむつを使用しているクライアント。褥瘡のケアはどうすればいいの?

褥瘡は床ずれとも表現されるように、主に寝たきりのクライアントの体の一部に体重が集中してかかることによって生じる皮膚の炎症です。

症状が進行すると皮膚の潰瘍が進行し、組織破壊が皮膚から皮下組織に及んでしまったり、細菌感染などを引き起こしてしまったり、クライアントの命に関わるトラブルへとつながります。

特におむつをしているクライアントの場合、おむつの中の蒸れやすい環境が褥瘡を悪化させやすい環境にあるとされています。

今回の記事ではおむつを使用しているクライアントの褥瘡ケアで気を付けたいポイントについてご紹介していきます。

目次

褥瘡について

褥瘡は、主にクライアント自身の体重が一か所に集中して圧力としてのしかかることで、骨によって圧迫された組織の血流が低下することで生じる、阻血性障害のひとつです。

圧迫によって血流が低下した部分が衣類や寝具、またはおむつなどとこすれることによって肌の潰瘍化が進行してしまいます。

そのため褥瘡の悪化を未然に防ぐためには、体の一部分に自重が集中しないような体位変換を行うこと、皮膚が衣類やおむつなどとこすれにい環境をサポートすること、また初期の段階で褥瘡に気付いて適切な処置を行うことが大切になってきます。

おむつを使用しているクライアントと褥瘡の関係

おむつは寝たきりのクライアントの多くが使用する介護用品の一つですが、高齢クライアントの弱った皮膚に対しては刺激となってしまう場合もあります。

特におむつと褥瘡の関係の中では、おむつ内の湿潤した環境が褥瘡を悪化させるのではないかという懸念が大きくなっています。

おむつが褥瘡に与える影響①刺激

おむつ内に便や尿があるままおむつ交換まで長時間を要すると、褥瘡の患部に対して便や尿が直接的な刺激になってしまいます。

またおむつ内が湿潤した環境になってしまうため患部が乾かず、治癒を妨げてしまいます。

そのためおむつを使用しているクライアントの場合は、排せつ後になるべく早くおむつ交換[1] 行うことや、患部をしっかりと医療用テープなどで保護すること[2] 湿潤した環境にさらされないよう配慮することが大切になってきます。

おむつが褥瘡に与える影響②摩擦

おむつ内の湿潤した環境と同様に褥瘡に対して大きな影響を与えているのが、おむつと皮膚の間に生じる摩擦と、おむつの中で生じる圧です。

おむつは着用している間の寝返りなどの微動はもちろんのこと、体位変換やおむつ交換の度に皮膚とこすれて摩擦が生じます。

高齢者の皮膚は皮下脂肪が少なくなり、皮膚そのものの水分量や弾力が失われてしまっていることから非常に刺激に弱く、摩擦によって褥瘡の悪化が誘発されやすい状態にあります。

また摩擦と同時に、体位変換やおむつ交換の過程でおむつ内の特定の部分に圧がかかり続ける状態が続くと、褥瘡のきっかけにつながります。

おむつ交換も体位変換も介護では必要不可欠な行為ですが、過度に行うのではなく、クライアントへの身体的な負担を軽減しながら適切な回数で実施することが大切です。

おむつが褥瘡に与える負担を軽減するためには

おむつは褥瘡の状態を悪化させることもありますが、おむつの使用を無理にやめる必要はありません。

おむつと褥瘡の関係性を深く理解した上で、正しい褥瘡ケアを心がけましょう。

おむつを使用しているクライアントの褥瘡ケア①摩擦の軽減

先ほどご紹介した通り、おむつ交換や体位変換によっておむつ内で摩擦が生じたり体の一部分に圧力が集中すると、すでに出現している褥瘡を悪化させたり、新たな褥瘡のきっかけとなってしまう可能性があります。

そのため過剰な回数のおむつ交換や体位変換は控え、必要に応じた回数のおむつ交換や、医師やヘルパーの指導に基いた頻度での体位変換をおこないましょう。

おむつを使用しているクライアントの褥瘡ケア②おむつの見直し

おむつの交換や体位変換は、クライアントの皮膚に大きな負担となります。

なるべくその回数を減らし、おむつ内の環境を清潔に保つためには、クライアントの肌に合うおむつの使用が好ましいといえます。

褥瘡を繰り返しやすいという場合はおむつの素材やメーカーを見直したり、長時間さらさらが持続するようなおむつを試してみると良いでしょう。

また意外と見落としがちなポイントが、おむつのサイズです。

おむつのサイズは大きすぎても摩擦が生じやすく、小さすぎると圧迫やかゆみの原因となります。

高齢のクライアントの場合は栄養状態や皮膚の状態によって最適なサイズが変化しやすい傾向にあるので、使用しているおむつのサイズが適切であるかどうかを定期的に見直しましょう。

おむつを使用しているクライアントの褥瘡ケア③丁寧なケア

全てのクライアントに共通していることではありますが、体位変換やおむつ交換など、クライアントに対する身体介助は丁寧であれば丁寧であるほど、クライアントの皮膚をはじめとする心身にかかる負荷が軽くなります。

とくに褥瘡が出現しているクライアントの場合は、刺激を軽減するためにもとにかく丁寧な身体介助が重要になってきます。

毎日の介助の中でクライアントの気持ちに寄り添った声かけや、スピードよりも刺激レスを重視した身体介助などを心がけることによって、クライアントの心身にかかる負担を軽減するケアを心がけましょう。

おむつを使用しているクライアントの褥瘡ケア④患部の清潔を保つ

褥瘡はどの部位に生じたとしても丁寧なケアと清潔の維持が大切になりますが、おむつ内に褥瘡が生じている場合はより一層のケアが重要になってきます。

具体的には褥瘡がおむつ内の湿潤な環境にさらされないようにするためのドレッシング材と呼ばれる医療素材や、用法を遵守した外用薬の塗布などです。

医師との相談の上で一人ひとりのクライアントにとって最適な患部のケア方法を採用し、褥瘡のケアを徹底していきましょう。

おむつを使用しているクライアントには、優しい褥瘡ケアの提供を。

クライアントがおむつを使用している場合の褥瘡ケアについて、おむつと褥瘡の関係を中心にご紹介させていただきました。

おむつの使用有無に限らず全てのクライアントに対して寄り添った介護を提供することは全てのアテンダントの使命ですが、特におむつ内に褥瘡が生じている場合はより一層の丁寧なケアが、治癒のスピードに関わってきます。

家族や医師と連携を図りながら、丁寧な褥瘡のケアを心がけましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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