家族が認知症と判断されたら。介護保険申請のタイミングは、何を参考にすればいい?

2012年に行われた調査によると、日本では65歳以上の高齢者のうち7人に1人程度が認知症を発症していると考えられています。

自分や配偶者の両親あるいは祖父母が65歳以上である場合、統計上は身内に1人以上は認知症と判断された家族がいる計算になりますので、認知症の介護はとても身近な社会問題です。

そこで今回は、認知症と診断されたクライアントが介護サービスの利用などを目的として介護保険申請を行う際のタイミングを中心にご紹介していきます。

既にご家族に認知症のクライアントがいる方だけでなく、これから介護のことを詳しく学びたいと思っている方も必見です。

【参照】知っておきたい認知症の基本(政府公報オンライン)

目次

認知症の進行

「家族がひょっとして認知症かも」と気付くタイミングは、度重なるもの忘れ症状であることが多いです。

何度も同じことを尋ねる、自宅への道順がわからなくなる、ご飯を食べたかどうか忘れる、といった「健忘症にしては少しもの忘れの頻度が高いのでは?」という違和感から病院を受診し、認知症と診断されるケースが一般的です。

認知症は認知機能の低下が徐々に進行し、もの忘れ症状から無気力、食欲不振などにつながり、誤嚥性肺炎や感染症り患が原因となって旅立ちを迎えます。

認知症の種類によっても進行の度合いは様々ですが、おおよそ初期症状の出現から5年程度で旅立ちとなる方が多いとされています。

認知機能の低下が進行するにつれて徐々にクライアントから目が離せない時間が伸びていきますので、介護保険制度を適切に利用することで、在宅介護だけでなく、介護者の日常も大切にしていくことが重要になってきます。

介護保険を申請するタイミング

介護保険制度を利用するためには、クライアントの現状を自治体に確認してもらい、介護が必要な状態であるか判断する「介護度認定」を受ける必要があります。

介護度認定によってクライアントは、介護の必要なし・要支援1または2・要介護1から5の8区分のいずれかに認定されます。

要介護5が最も介護のサポートを必要としている段階で、寝たきりで意思疎通ができない状態を意味します。

要介護1以上に認定されると訪問介護やデイサービスなど、利用することのできる介護サービスの幅が広がります。

認知症を理由に介護保険申請の手続きを行うタイミングに決まりはありませんが、要介護1の目安となる「食事などは自力で摂ることが可能だが、歩行や排泄・入浴などの部分的な身体介護を必要としている段階」で申請される方が特に多くなっています。

介護保険は申請から認定、利用まで時間がかかる

介護保険を利用したいと考えた場合、まずは自治体の窓口に必要書類をもって相談に向かいます。

その後ケアマネージャーによる自宅訪問、クライアントや家族との面談、かかりつけ医の見解確認、介護度を決定する会議などを経て要介護度が決定する流れとなります。

自治体によって差がありますが、おおよそ申請から介護度認定の決定までは1カ月程度の時間を要します。

その後実際に介護保険サービスを利用するまでには、担当ケアマネージャーとの面談、ケアプランの作成、事業所への利用申請などのステップが必要となります。

「そろそろ介護保険を利用したいから手続きをしよう」と考えても実際に利用を開始するまでは、スムーズに物事が運んだとしても1カ月半程度の時間がかかってしまいますので、早めに行動を起こすことをおすすめいたします。

状況に併せて区分変更も行おう

要介護と認定を受けて介護保険サービスを利用していく中でも、認知症の症状が進行することによって現状の介護保険利用ではサポートが不十分になってくる場合があります。

「デイサービスの利用頻度を増やしたい」「訪問介護の回数が足りない」という場合は、介護度認定の区分変更申請を行うことで、進行した認知症の症状に適した介護度へと要介護度が変更できる可能性があります。

区分変更も介護保険申請と同様に即日で申請が完了する仕組みではありませんので、ケアマネージャーやアテンダントに相談しながら、適切なタイミングで申請を検討しましょう。

認知症のクライアントが利用することのできる介護保険サービス

実際に認知症を理由に介護保険申請を行い、要介護度が1以上と認められた場合はどのようなサービスが利用できるのでしょうか。

以下に代表的な介護保険サービスをご紹介いたします。

訪問型の介護保険サービス

訪問型の介護サービスの中で最も一般的なのは、ホームヘルパーが自宅に暮らすクライアントを訪問し、必要な介助や日常生活のサポートを行う訪問介護です。

週1日から7日までサービスを利用すること自体は可能ですが、2時間ルールという制約がある関係で、同一内容の介護サービスは2時間以上の間隔を開けないと利用することができません。

また訪問介護以外にも訪問リハビリや訪問入浴などのサービスを利用することも可能です。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

訪問型介護サービスの中でも定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、2時間ルール等の制限なく必要量の訪問介護を月額固定制で利用することが可能です。

最期まで自宅で暮らし続けたいと考えるクライアントやその思いを汲む家族からのニーズが非常に高くなっています。

株式会社土屋でも日本各地で定期巡回サービス土屋を展開し、クライアントや家族の考えに寄り添った介護を24時間体制で提供しています。

通所型の介護保険サービス

住み慣れた自宅で生活を送りながら、日中の居場所としてデイサービスやデイケアなどの通所型介護を利用することも可能です。

デイケアはリハビリを目的としていますので半日程度の利用時間設定になっている事業所が一般的ですが、デイサービスの場合は昼食も含めて日中の6時間から8時間程度を事業所で過ごします。

送迎がついている場合がほとんどですので、介護者のリフレッシュや仕事中の見守りとして需要の高いサービスです。

入居型の介護保険サービス

基本的には自宅での生活を継続しながらも、最短1泊から利用することのできるショートステイや、自宅での生活継続が難しいクライアントが利用可能なグループホームや特別養護老人ホームなどが、入居型介護サービスです。

認知症のクライアントに対応している施設は限られており、また近年は需要に対して供給が追いついてないことから、入居型施設を検討する際は早めに行動することをおすすめいたします。

認知症の介護保険申請のタイミングは、介護者次第。早めの申請を検討しましょう。

認知症の介護保険申請にまつわる情報について詳しくご紹介いたしました。

家族が認知症と診断されて症状が進行していくなかで、介護を家族だけでこなすことは非常に困難です。

介護保険サービスを適切に利用することで介護負担を減らすことができますが、介護保険は申請してすぐに利用が開始できる制度ではありません。

家族が認知症と診断されたらなるべく早い段階での介護保険申請や、利用を希望する介護保険サービスの検討を行いましょう。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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