『土屋・男性社員育休インタビュー Vol.5』北九州エリア・コーディネーター 小﨑有哉さん

「男は育休を取るもんじゃない、と思っていた」

土屋の育休プロジェクトとは?

「ワークライフバランスの実現は、社会と個人の幸せにつながる」との思いのもと、2023年から始まったプロジェクト。

  • 社内外への宣言
  • 対象者は、男女共に育休を1か月以上取得
  • 社員への情報発信-を柱に取り組みます

育休中は、国から給与の7割程度しか給付されません。収入面は、特に男性社員が育休を取るうえでハードルになっているのではないかと考え、土屋は育休1か月目の給与を100%補償する制度をスタートさせました。

今回は、もともとは男性育休に否定的だった小﨑有哉さんに話をうかがいました。

小﨑有哉さん プロフィール

30代。土木関係、パチンコ屋で働いたあと、2019年に土屋へ入社。

福祉職を志したきっかけは、知的障害のある家族の存在。入社の決め手はズバリ「給料」だったそう。コーディネーターに就いて、約3年経つ。

妻と、昨年8月に生まれた長女の3人暮らし。5月1日から1か月間、育休を取得した。妻のお腹には2人目の赤ちゃんがいる。趣味は映画鑑賞。

今までは、仕事を言い訳に逃れてきたけど…

―育休中は、どのような1日を過ごしていましたか。

朝起きて娘のミルクをつくり、おむつを替えて、コーヒーを淹れ、妻を起こす。部屋を片付けて、洗濯し、娘にご飯をあげ、洗い物をし、娘と遊び、夕方は娘の入浴とご飯。夜は、いつも迷惑をかけている妻に数十分間、マッサージしていました。

実は会社から育休の話があった段階で、妻から「期間中は、私のかわりに全部やってね」と言われていました。

夜中に娘が起きると、妻はわざと起きずに、僕が対応するのをじっと待つんです。僕も「やってやるぞ!」と意気込んでいたのですが……挫折しました。一人ではとても無理で、妻に料理を手伝ってもらいました。

ただ、会社に対して「休んで申し訳ない」という気持ちが大きかったので、その分精一杯やろう、とは思っていましたね。

―育休を取って、家族関係に変化はありましたか。

笑顔と会話が多くなりました。娘もひっついてくることが増え、僕の仕草の真似をするようになりました。

最初は正直、「(育休を)取らなきゃよかった」とすら思いました。今までは、妻に「〇〇して」と言われても、仕事や疲れを言い訳にして逃れてきた部分があるんですよ。でも育休中は、言い訳ができない。しかも、とても過酷。

妻は「やっと私の苦労が分かった?」と笑っていましたね。

―これまで育休を申請しなかった・できなかった理由は?

すごく正直に言うと、もともとは「男は育休を取るもんじゃない」という考えでした。

世の中が変化しているのは分かっていましたが、「男は稼いでなんぼ」という価値観だったんです。周りにも、育休を取った男性はいませんでした。今回のように、会社から半ば強制のような形じゃなければ、取ることはなかったと思います。

「私はいつも一人でやっている。誰も助けてくれない」

―実際に取ってみて、どうでしたか。

これもまた正直に言うと、今までは家事や育児を甘く見ている部分がありました。散らかった部屋を見て、「なぜ1日中家にいるのに、片付けができないんだろう」と思ったり。どこかで、妻を見下していたんだと思います。

でもいざ自分がやってみると、ものすごいストレスで。片付けたそばから、娘がどんどん散らかしていくんですよ。最初はイライラして、娘を叱ったり、妻にあたったりしてしまいました。妻からは「私はいつもこれを一人でやっているんだよ。誰も見てくれないし、助けてくれないんだよ」と言われました。今では、尊敬の気持ちが大きいですね。

育休が始まって1週間あたりから、少しずつ楽しくなっていきました。娘が部屋を散らかしている様子を観察して、「何か探しているのかな」「遊んでほしいのかな」と考えるようになって。「じゃあ片付けを中断して、一緒に遊ぼう」「今日はここまでやろうと思っていたけど、ゆっくりでいいや」といったふうに、子ども優先の考え方ができるようになりました。家族って本来こうあるべきなんだなと、強く痛感しました。

―今回は1か月間の育休でしたが、経済面の不安がなければ、どれくらい取りたいですか。

妻は「延長してほしい」と言っていて、僕も貴重な時間だったので、長ければ長いほど良いなとは思うんですが……これはどうしても僕の性分で、仕事していないと落ち着かないんですよね……。

でも、1か月の育休で染みついたものもあります。洗い物がたまっていたら洗う。妻が寝ている時は、自分がミルクを作ったり、おむつを替えたりする。仕事に復帰して、家族と過ごす時間は減りましたが、以前より自発的に動けるようになったと思います。

男性だって、休みたい時に休んでも良い

―小﨑さんの役職であるコーディネーターは、職員と利用者さんの間に立つ役割。欠員が出たら現場へ行くこともあり、休みがとりづらい印象があります。

実は、自分しか入浴介助ができない利用者さんがいたのですが、その方には前もって説明して、他の職員が対応しにくる旨をご理解いただきました。

育休についてしっかり話して、「他の職員を育てさせてください」とお願いしました。

―復帰後、周囲の反応はどうでしたか。

育休に関して質問されたり、「きつかっただろう」と声をかけられたりしました。中には、「男が育休?」とおっしゃる年配の方もいらっしゃいました。「世の中は変わったんやな」って。いやがらせなどはなかったですね。

―取得前と後で、働き方に変化はありましたか。

取得前は「自分がいないと現場が回らない」との気持ちが強かったんですが、育休を経て「休みたい時に休んでいいんだ」と思うようになりました。

実は長女の出産の時、妻に「休んでほしい」と言われていたのですが、当時は「仕事が優先だから」と突っぱねて、妻に嫌な思いをさせてしまいました。これから生まれる第2子の時は、しっかり休ませてもらおうと思います。

上司からのひとこと―北九州エリア管理者・奥永孔太郎さん

小﨑さんは現場をとても大事にされる方ですが、育休を経て、人に仕事を振るのが上手くなりました。子どもが生まれてから、顔つきが穏やかになった印象がありましたが、育休後はより優しくなったと思います。

北九州には約30人の職員がいますが、小﨑さんの育休取得後、「僕も対象になりますか」との問い合わせがくるようになりました。良い影響が広がっていますね。

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