
「『小さな声』を探し求める」を読んで
この本を読んで、まず心に残ったのは「はじめに」に書かれていた言葉でした。文化や運動体としての障害者運動から、健全で真っ当な会社へ——その歴史を書き記し、後世に伝えていきたいという著者の思いが、冒頭からひしひしと伝わってきました。
同業他社の経営者だけでなく、中小企業のマネジメント層にとっても、実用的なロールモデルとして活用してほしいという願いが込められていることに、まず感銘を受けました。
読み進めていくと、土屋という会社が単なる介護事業者ではなく、「文化」を作ろうとしている組織なのだと分かってきます。
特に印象的だったのは、忘年会の場面です。
世の中の多くの会社では、業務に付随する会食で当たり前のようにお酒が交わされます。
しかし土屋の経営陣は、異様なほど徹底して烏龍茶を飲んでいる。
過度な飲酒はコンプライアンス違反やハラスメントの温床になりかねない、円滑なコミュニケーションのためにお酒は必要ないという著者の考えが、単なる理屈ではなく、実際の行動として貫かれていることに驚かされました。
本書には創業メンバーたちのエピソードが数多く登場します。
星敬一郎さん、新川勝美さん、五十嵐憲幸さん、宮本武尊さんなど、それぞれ全く異なる経歴を持つ人たちが、それぞれの動機で土屋という会社に関わってきたことが分かります。
「支えたい」という純粋な思いから飛び込んだ人、「後の無い人生」の中で人々を助けたいと考えた人——多様な背景を持つメンバーたちが、一つの理念のもとに集まっている様子が丁寧に描かれていました。
採用、営業、研修、介護サービスの現場など、様々な職種のスタッフたちが、それぞれの持ち場で土屋という組織を支え続けてきたのだと感じます。
そして、そのメンバーたちが口を揃えて語るのが、高浜代表という人物の魅力です。
単に事業を成功させたリーダーというだけでなく、理念を語るだけでなく自らの生き方で体現しようとする一貫した姿勢が、多くの人の心をつかんできたのだと感じました。
言うこととやることが一致している、という信頼感こそが、業界歴も年齢も異なる多様な人材を惹きつけてきた最大の理由なのだろうと、読みながら納得させられました。
個人的に最も心を動かされたのは、著者自身が「お恥ずかしい時期があった」「なかなか謝れなかった」と率直に語っている部分です。
完璧なリーダー像を演出するのではなく、自身の弱さや失敗も含めて等身大に語る姿勢に、かえって説得力を感じました。
だからこそ「ごめんなさい」と謝れるようになった今の自分を大切にしたい、という言葉が胸に残りました。
私自身、同じ土屋グループの訪問看護師として現場で働く中で、こうした理念が末端のスタッフにまで自然と浸透していることを実感する場面が少なくありません。
過度な飲酒に頼らないコミュニケーション、現場の声を大切にする風土——これらは決して上から押し付けられたものではなく、日々の業務の中で当たり前のように根付いています。
アテンダント、ケアマネジャー、そして私たち看護師が職種を超えて連携し、クライアントお一人おひとりを支えていく中で、組織が大きくなっても理念が形骸化していないと感じる瞬間が何度もありました。
そうした経験を重ねるたびに、この文化の源にいる高浜代表という人に、一度お会いしてみたいという思いが強くなっていきました。
まだ直接お話しする機会はありませんが、本や伝聞だけでは伝わりきらない、ご本人の言葉や空気感を、いつか自分自身で感じてみたいと思っています。
この本は、単なる企業の成功譚ではなく、一人ひとりの人間がどのように支え合いながら組織を作り上げてきたかという、地道な軌跡の記録だと感じました。
全国47都道府県まで事業所を拡大してきた歩みの裏には、無数の困難と、それを乗り越えてきた創業メンバーたちの努力があったことが伝わってきます。
読み終えた後、自分自身の働き方や、周囲との関わり方についても、改めて考えさせられる一冊でした。





















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