【「小さな声」を探し求める―「個」が躍動する組織のつくり方― 書評】第2回 S1グランプリ 鈴木 栄司(ホームケア土屋関東)

『小さな声』と希望/鈴木 栄司(ホームケア土屋関東)

「すべての過去が誰かを救う力になる」
未経験で障害の分野に飛び込んだ私にとって、この言葉は経験も知識もない不安を吹き飛ばしてくれた。

本書の中で特に感銘を受けた列伝が二つある。

一つ目は古本聡さんの「変化を恐れず立ち向かう」だ。
古本さんは、障害当事者を取り巻く環境や制度が刻一刻と変わるなかで、過去のやり方に固執せず、自らが変化の主体となって課題に挑み続ける重要性を訴えている。

古本さんは私を採用してくださった方で、採用後も気にかけてくれている一人だ。

後にBCP(業務継続計画)マニュアル作成のお手伝いもさせていただいたが、その際に「災害時の自宅に留まるべきか避難するべきかの決断」や「平常時からのご近所さんとの付き合い方」、「高層階でエレベーターが止まったら車椅子ユーザーはどう避難するのか」といった障害当事者の視点から具体的な方法を共に模索した経験を通じ、現場で実践することこそが「小さな声」に応える道だと教えていただいた。

二つ目は浅野史郎さんの「その出会いが、社会を変える」である。
浅野さんは、福祉とは単なる制度や支援の提供にとどまらず、人と人との出会いによって生まれる共感や連帯こそが、より良い社会へと変革していく大きな推進力になるとおっしゃっている。

以前、障害当事者の方と浅野さんの2時間に及ぶ対談動画を拝見した際、出会いをとても大切にされ、寄り添う対話の中から問題点を引き出す傾聴力・対話力を学ばせていただいた。

浅野さんのおっしゃる「障害のある方がその人らしく、幸せに生きていける環境を整えること」——それこそが私自身も重度訪問介護の仕事を通じて実現していきたいことであり、その言葉に強く共鳴した。

このお二人の想いと重なったのが、現場で出会った一人のクライアントの姿だった。地方から親元を離れて上京し、独居生活を送る30代後半の男性だ。

小児麻痺がありながらも社会に出る夢を叶えたが、転倒による脊髄損傷でベッド中心の生活となった。

しかし、症状が進行する中でも毎日、電動車椅子で図書館へ通い、公共交通機関で外出を重ね、結婚願望まで口にする前向きな方だ。

介護未経験だった私は当初、「進行性障害の未来には希望などないのではないか」とどこかで思い込んでいた。

しかし、その方とリハビリを重ねることで、支えがないと立位を保つのがやっとの状態から10m歩行を可能にし、毎日の図書館通いの末に社会復帰のための資格取得も果たした。

病状の悪化に屈せず、社会と繋がり未来を切り拓く姿に、私は「どんな状況でも希望は必ずある」と強く教えられた。

難易度の高い手技や細かなこだわりを巡り、お互い譲らず険悪な雰囲気になることもあった。それでも一日の支援の中で、朝・昼・晩の3食の調理は前職の経験を活かして手を抜かなかった。

「美味しい」と言ってくれる食事がお互いの心の距離を縮め、関係を修復してくれた。

この経験を通して、私はバリューの一つである「未来の希望に注目し、過去の経験から学ぶ」の意味を身体感覚として理解できた。

古本さんや浅野さんから受け取った志を胸に、私はこれからも目の前の「小さな声」を探し続け、寄り添う支援を届けていく。

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