
『「小さな声」を探し求める 「個」が躍動する組織のつくり方』を読んで/豊吉 正満(ホームケア土屋岐阜)
本書を手に取り、まず心に刻まれたのは「小さな声」という言葉の重みであり、自身の業務に関する責任感について考える機会となった。
土屋グループが掲げる「小さな声」とは、社会が「みんな」「すべて」と語るときに、意識的にも無意識的にも取りこぼされてしまう人々の声を指す。
重度障害を抱えながら地域で暮らしたい方、家族の介護に押しつぶされそうな方、制度の狭間で行き場を失った方、そうした「壁の向こう側」にいる人たちの声に耳を澄まし、応え続けることこそが同社の使命だと語られている。
読み進めるうちに、これは福祉業界の特殊な話ではなく、あらゆる組織・あらゆる人間関係に通じる根源的な問いだと気づくことになった。
代表の高浜敏之氏をはじめ、中心メンバー16名それぞれの言葉で綴られた「人財」列伝の形をとっている。
一人ひとりの語り口は静かで飾らない。
しかし、そこには「特別ではない人生を、誠実に生きる」という共通した強さが宿っている。
カリスマ的な一人のリーダーが引っ張る物語ではなく、それぞれが自分の言葉で理念を語り直し、自分の役割を引き受けている姿にこそ、「個が躍動する組織」の本質があると感じた。
とりわけ印象に残ったのは、「小さな声を聴く」という姿勢が、クライアントに対してだけでなく、共に働く仲間に対しても向けられているという点だ。挑戦し、失敗し、学び、また挑戦する。
その循環を支えているのは、誰かの迷いや不安を「小さな声」として受け止め合う組織文化だと感じた。
トップダウンで統制するのではなく、自律分散型の経営を志向し、一人ひとりの判断と情熱を尊重する。
だからこそ急成長を遂げながらも、現場の温度を失わずにいられるのだろうと思う。
読み進めながら、日々のクライアントとの関わりが自然と思い浮かんだ。
お一人お一人に個性があり、どう向き合っていくのか、考えさせられる場面がよくある。
ただ共通して言えることは、それぞれに想いがあり、その方なりの生きがいがあるということだ。
そして、たとえ何もしてあげられなかったとしても、「聴く」という行為はこの仕事において本当に大切なのだと感じている。
アテンダントを見下すような言葉を口にされるクライアント、常に怒りっぽいクライアント、無気力なクライアント、本当にさまざまな方との関わりがあるが、その第一歩は、いつも「聴く」ことだと思う。
どんなに些細な言葉であっても、それこそが「小さな声」であり、その方の奥にある本当の想いにつながっている。
さまざまな声を聴き、探し、応え続けることを意識して、これからも業務に向き合っていきたい。
「生き延びる」の肯定というフィロソフィーにも深く考えさせられた。
生きることに困難を抱えた人の「生きたい」という意志を、ビジネスとして支え続ける覚悟は、効率や合理性が優先されがちな現代社会への静かな異議申し立てのように響いた。
誰かを排除しないと決めることは、同時に、自分自身の弱さや揺らぎも排除しないと決めることでもある。
目の前のクライアントの声に、共に働くアテンダントの声に、そして自分自身の中の小さな声に、これからも誠実に耳を傾け続けたい。
そう静かに背中を押してくれる一冊だった。





















-1.png)




















