『デンマーク研修を終えて』~ 北欧の教育理念と福祉制度から学ぶもの ~ 五十嵐憲幸(取締役)
2025年6月1日から7日間にわたり、デンマークにおける福祉・教育制度の視察研修に参加させていただきました。
土屋ケアカレッジの校長として、デンマークの資格制度や教育理念を学び、日本の介護人材育成に活かしたいという思いで臨んだ今回の研修は、想像以上に多くの学びと気づきを与えてくれました。
ノーフュンスホイスコーレでの学び
研修の拠点となったノーフュンスホイスコーレでは、副校長のMomoyoさんから貴重な講義を受けました。
日本人でありながら早くからデンマークに渡り、ノーマライゼーションを提唱したバンク・ミケルセンに師事した千葉忠夫さんを通じてホイスコーレに関わるようになったMomoyoさんは、心理学・社会学・教育心理学・哲学などの幅広い知識を持ち、デンマーク特有のペタゴー(教育指導者)や認知症コーディネーターなどの資格を取得して現場で活躍されている方です。
Momoyoさんの講義で最も印象深かったのは、デンマークにおける資格の重要性と、国民の政治や運営に対する参加意識の高さでした。
デンマークでは、専門性を証明する資格が社会的に高く評価され、それが質の高いサービス提供の基盤となっています。
また、各訪問先での通訳としても、単なる言語の橋渡しにとどまらず、文化的背景や制度の違いを踏まえた補足説明をしてくださり、理解を深めることができました。
Bogense Skoleでの発見
特に印象的だったのは、Bogense Skoleでの校長先生との対話でした。
同校は6歳から16歳までの425名の生徒を50名の職員で支える公立学校で、年間予算は6億4000万円という規模です。
校長のSøren Schlüterさんが示してくださった教育理念は明確で、「生徒を最高の自分にすること」を目標に、従来の教育に加えて民主主義教育や協調性の育成に力を入れています。
同校の価値観として掲げられた「勇気・承認・喜び・誠実さ」は、まさに我々が目指すべき人材育成の指針と重なるものでした。
朝6時から夕方5時まで開校し、学習時間以外も子どもたちの居場所を提供する包括的な教育アプローチは、地域社会全体で子どもを育てるデンマークの姿勢を象徴していました。
日本とデンマークの国民性の違い
研修を通じて強く感じたのは、歴史の違いによる国民性の差異です。
デンマークでは、未来のために「人」のためにできる最良の策を、特に対話を重視して考える文化が根付いています。
この対話を通じた合意形成や問題解決のアプローチは、日本の介護現場でも大いに参考になると感じました。
今後の取り組みに向けて
資格取得スクールの校長として、今回の研修で得た最大の学びは、資格を重んじるデンマークの福祉業界の姿勢です。
日本においても、介護福祉士などの資格取得の意義や重要性をより積極的に発信し、一人でも多くの方に資格を取得していただき、人手不足に悩む介護現場で活躍していただきたいと強く思います。
また、デンマークのペタゴーの役割に着目し、日本の介護現場においても、その役割を担うマネージャーや事業所管理者の育成に寄与できればと考えています。
話し合いを通じて最適なケアを提供するために現場を導く人材こそが、これからの日本の介護業界に必要不可欠な存在だからです。
デンマークの人々の温かいもてなしと、質の高い福祉・教育制度から学んだことを、土屋ケアカレッジの運営に活かし、土屋グループの、更には日本の介護業界の発展に貢献してまいりたいと思います。
株式会社土屋について
株式会社土屋は、高齢者や障がい者の方々がより良い生活を送るための介護サービスを提供し、また、さまざまな社会的ニーズに応えるための事業を展開するトータルケアカンパニーです。
■会社概要
会社名:株式会社土屋
所在地:岡山県井原市井原町192-2久安セントラルビル2F
代表取締役:高浜敏之
従業員数:2,766名
設立:2020年8月