【北京研修レポート②】『中国研修レポート』星敬太郎/ホームケア土屋 スーパーバイザー

『中国研修レポート』星敬太郎/ホームケア土屋 スーパーバイザー

この度は、中国の高齢者介護の現地視察ツアーに参加させていただきありがとうございました。

世界で最も急速に高齢化が進む中国において、地域密着型施設、認知症専門施設、地域コミュニティの場などを見学し、現地リーダーから概要や取り組みについてご説明をいただきました。

中国では、60歳以上と定義される高齢者は、全人口の約21%で、約3億人います。

その方々に対して国は9073政策、90%在宅、7%地域コミュニティ、3%施設で支援するという国家目標を掲げています。

先に高齢社会を迎えている日本をモデルとして模倣したという中国の福祉施設は、回廊型の認知症棟や高齢者が塗り絵をして過ごす様子など、現在も部分的にあります日本の福祉施設を彷彿とさせました。

ツアー中、中国の施設スタッフと日本のツアー参加者との意見交換の場があり、身体拘束について活発にお互いの意見交換がおこなわれた内容が、とても印象的でした。

要介護者がベッドから降り一人で歩くと転倒や骨折のリスクがある。

経鼻カテーテルを抜く。

施設を一人で出ると戻れず行方不明になってしまう可能性があるなど、様々な介護のリスクに対し、身体等の拘束をせざるを得ないか否かの判断は、中国でも日本でも日々おこなわれています。

日本では3つの要件がすべて満たされている場合に限り、例外的に一時的な拘束が認められるという国の基準のもと、対象者の安全を優先するか、尊厳を遵守するか、そのバランスを考慮して判断がおこなわれています。

さらに、ご本人やご家族の意向、介護事業者の方針や経験値などを加味して、その時点では明確な正解が見えにくい中で判断がおこなわれます。

今回の意見交換をお聞きし、中国施設スタッフの意見から安全を重視する傾向が強いことを感じました。

もちろん一施設の傾向を見て、中国全体がそのようであるとは限りません。

中国でも日本でも、安全を重視(ときに拘束をしてでも)するとき、尊厳を遵守しきれないときがあります。

安全を重視することと、尊厳を軽視することが、必ずしもイコールではないと思っていますが、『尊厳』に対する捉え方や考え、概念が、中国と日本では違いがあるのではないかと感じました。

ツアー中、ある高齢者施設では、入居者の首からかけているネームプレートはGPSであり、

また、別の公営の施設ではテクノロジーにより地域の高齢者11,000人のデータの可視化と緊急通報システムが実装され、医療と介護が融合した支援の最先端を拝見できました。

とても大きな安心感が提供されていると感じます。

安全面でも、きっと転倒や行方不明が予防できていることも多いと想像します。

同時に、尊厳という視点では、管理的側面が強いとも感じられ、意思や行動の自由度が気になります。

『安全』を最大限求めるか、『尊厳』を遵守するか。

このバランスを考慮した介護支援の奥深さと難しさを改めて考えさせられる機会となり、中国と日本、そして他国、国によりこのバランスのとり方にそれぞれ特徴があると感じます。

各国の特徴を活かしながらも、共通して何ができるかを考える機会となりました。

安全と尊厳のバランスを考慮した介護に一律の答えはありません。

しかし、日本では2000年介護保険制度の始まりと同時に公表された厚生労働省の身体拘束ゼロの手引きと共に、

中にはもっと以前から、多くの法人や企業が試行錯誤し、事案に個別に向き合い、様々な工夫がなされ、方法論が蓄積されていると思います。

現代の情報社会において、データ等情報が共有され、中国も日本も、さらに他国も共に経験値を高められるネットワークがあることが望ましいと感じました。

そうなりますと、想像しますのは、方法論のデータには当てはまらない現場の個別性が現れると思います。

対象者のご状態×思考×環境の、過去データにもないリスクの果てしないパターン数や、対象者本人やご家族の国民性や性格など、現場の個別性は高く、熟練者が現地に足を運び、現場スタッフと共に取り組むOJT機能が必要ではないかとも感じます。

介護が必要な方々に向き合うということは、国境を越えた情報共有と、

それを補う熟練者が現場を行き来する国際交流が、介護の質及びサービス利用者満足度を高めるのではないかと感じます。

それは、認知症介護や強度行動障害の方への支援、怪我や行方不明のリスクが高い支援など、支援難易度が高いほど、必要性も高いのではないかと感じました。

この度は、安全と尊厳のバランスを考えながら、介護支援が必要な方に対し事業者がすべきことを考える機会をいただき感謝いたします。

 

株式会社土屋について

株式会社土屋は、高齢者や障がい者の方々がより良い生活を送るための介護サービスを提供し、また、さまざまな社会的ニーズに応えるための事業を展開するトータルケアカンパニーです。

■会社概要

会社名:株式会社土屋
所在地:岡山県井原市井原町192-2久安セントラルビル2F
代表取締役:高浜敏之
従業員数:2,766名
設立:2020年8月

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