【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年6月20日
開催概要
開催日時:2024年6月20日
開催場所:オンライン
本日のアジェンダ概要
- この1か月間で起こった素晴らしいできごと
- 共通課題「人間関係」についてディスカッション
本日の定例レポート
本日の定例ミーティングでは、各事業所で「この1か月間で起こった素晴らしいできごと」が共有され、引き続き、介護事業所の共通課題である「人間関係」についてのディスカッションが行われました。
ディスカッションでは、中間管理職としての悩みや、人間関係の良い職場を作るためのリーダーの重要性について話し合いが持たれました。
<この1か月間で起こった素晴らしいできごと>
〇定期巡回サービス
以前から認知症カフェの立ち上げを進めていましたが、ようやく設置場所の許可もいただけて、地域の担当者の方も含めた打ち合わせに入ります。
スタッフからも「共に頑張りましょう」という声もいただいていて、最短で8月に開始できればと思っています。
〇デイサービス・グループホーム
・感染症委員会の研修に13名の職員が参加しましたが、研修後に職員同士が部屋に集まって楽しそうに話をされていました。
今まではそういうことがなく、コミュニケーションが取りやすい環境になってきたと感じています。
・施設の庭で無農薬のプチトマトやカボチャなどを栽培していて、先日、利用者さんとトマト狩りをしました。
まだ青い実を取ろうとする方もいれば、赤い実を取って落としてしまう方、そのまま口に運ぶ方もいて、ほほえましい時間が流れました。
職員と利用者さんで共同作業できたのが、とてもいい出来事だったと思います。
〇デイホーム
昨日から考えてみたんですが、素晴らしい出来事が何も思い浮かばなかったです。
日々の仕事をこなすだけになって、周りにも目を向けられていない状況で、それではなかなか素晴らしい出来事も生まれてこないことを実感しました。
〇小規模多機能
小規模多機能施設を立ち上げて6年目に入りますが、最近、移動販売車に来ていただいています。
週1で様子見をしていますが、利用者さんも財布をもって、何を買おうかと探したり、自分の好きなものをゲットして、食事の合間につまんだりされています。
とても生き生きとした笑顔が見られて、自然な生活の姿に近づけている気がします。
また、地域の高齢者にも移動販売車を活用していただいています。
今後も、地域の方との連携を強めて、地域に喜びを広げていきたいと思っています。
〇グループホーム
施設の2番館が5月にオープンして、2人の入居者さんが入られましたが、事前情報では、一人の方は色んな部屋をのぞきに行ってしまい、もう一人の方は食事量があまり取れないとのことでした。
2番館に入居されてから、スタッフが傍に座って話をしたり、要望を聞くなどといった、当たり前のようで当たり前じゃない日常的な関わりをして下さったおかげで、1か月が経過する頃には、お一人はほとんど他の部屋をのぞかず、自宅のようにくつろいでいる感じになられました。
もう一人の方は、皆と同じ量で食事を盛られるとプレッシャーで食べられないことが分かったので、スタッフがその方に合わせた量で提供してくださり、そこからは出された食事を全部食べられるようになりました。
こうした変化が見られたことが良かったと思います。
<コメント>
〇移動販売について
・利用者さんだけでなく、地域の高齢者にも声をかけて活用していただくという、地域への貢献も視野に入れた活動をされているのが大変いいことだと感じます。
・地域の人にも喜ばれるのは、やりたくてもなかなかできないことで、長く続けられればと思いました。
・介護を受ける側の人は、生活の中で選択ができないことが多く、どんな1日を過ごすか、夜更かしするかしないかなど、ちょっとした選択がどんどん狭められてしまいます。
けれど、移動販売では、買いに行くか行かないかの選択もあるし、そこであえて無駄なものも買うこともできる。
そうした愚かな選択もできるのが人間的で、豊かで、素晴らしいと思います。
・選択の機会が奪われる利用者の方を、当たり前の暮らしに近づける。
ここをどう目指すかが介護事業所の役割だと思います。移動販売の話は印象的で、やはりそこを目指すべきだと感じました。
〇素晴らしい出来事が思い浮かばないことについて
・現場を任されたばかりで、悪戦苦闘されている様子がうかがわれる、リアルな発言だと感じます。
・今、周りを見る余裕もないくらい、色んなことに追われていると思いますが、僕らにもそういう時期がありました。
僕自身は平成18年、グループホームの主任になった時ですね。
仕事しかしていない生活でしたが、その頃の大変だったり、頑張ったりしたことが、その後に生きたと思っています。
大変な中でも、プライベートに楽しみを見つけながら頑張っていただきたいです。
〇スタッフ同士が楽しくコミュニケーションを図れる環境について
・スタッフ同士が会話していたのを「いいこと」だと思える、その感覚が尊いと感じます。
スタッフ間でコミュニケーションが生まれる価値は、管理者になってみなければ分からないものですが、そこに価値を感じるということは、昔はそうじゃなかったと思うので、何をしてそうなったのかが気になりました。
〇認知症カフェについて
・発案者がリーダーということですが、スタッフがリーダーの提案に乗ってくださるのは、いい関係が作られていることでもあるので、素晴らしいと思います。
〇入居者さんの変化について
・いわゆる困難事例と言われる方々だと思いますが、既存のサービスのように、「○○をやりましょう」と、サービスを提供して、それに乗っていただくのではなく、当たり前にくつろげる空間、居場所を作れたのが素晴らしいと思います。
・他の人の部屋をのぞく行為の背景には不安があったかもしれませんが、安心できる環境を作れたことで、そうした行動がなくなったのかなと。
当たり前のことを当たり前にする、それを意識してできる職員が素晴らしいと思います。
<共通課題「人間関係」についてディスカッション>
〇中間管理職の役割について
管理者に“会社の方向性”をお伝えしていますが、管理者がそれを現場にどう伝え、現場スタッフがそれをどのように感じているのかが分からず、悩んでいます。管理者が“会社の方向性”を現場に正しく「通訳」できているのか、管理者への私自身の伝え方が悪いのではないかなど管理が難しく、私にも現場の声が聞こえづらくなって、現場にも私の声が届きにくくなりました。その結果、人間関係が上手くいかないことが起きると、その修正も難しいと感じています。
概要の解説:
管理者や中間管理職の大切な役割として「通訳」があります。
というのも、会社の社長、セグメントのリーダー、管理者、現場はそれぞれ目の前の現実が異なるので、みなが自分の立場で物事を考えねばなりません。
同じ目線であれば会社はつぶれてしまいます。
ただ、組織が大きくなればなるほど、それぞれが見ている現実の“落差”が大きすぎて、現場スタッフは上層部の言う意味を理解できず、「うちの会社の経営陣は現場を分かってない」「カネにしか興味がない」などとなります。
これは、介護現場では非常に起こりやすいことです。
ここでポイントになるのが、中間管理職です。というのも、現場も見ていて、上層部とも話している。
双方の目線に近い位置にいる中間管理職が、上司から伝えられた会社の方向性や真意を、しっかりと現場に「通訳」して伝えなければなりません。
これを誤ると、現場のスタッフは、会社の上層部に対する信頼を失い、信頼できない会社で働く気がなくなるので離職にもつながり得ます。
逆に、中間管理職は、現場の状況を適切に上長に伝える必要もあります。
要は、中間管理職は、部下と上司がお互い理解し合えるように、言葉を選びながら「通訳」しなければいけませんが、Aさんの悩みは、今までは自分がダイレクトに現場に関わっていたので、現場スタッフに直に通訳できていたけれど、管理者をマネジメントする立場になって、その管理者がどういう風に会社の方向性を現場に伝えてくれているのかが見えなくて困っているということです。
コメント:
・会社の意向や自分のメッセージを管理者に伝えると、その管理者自身のフィルターを通して、それが部下に伝わっていくと思います。
大事なのは、その管理者がどういうフィルターを持っているのかを確認しておくことかなと。
管理者の価値観、好き嫌い、大切にしていることなどを把握して、自分が発したメッセージに対して、どういう風に受け止めるかを分析できてくると、「こういう形で伝わる可能性がある」と考えられます。
あと、自分自身が思う現場の課題を解決するために、管理者にメッセージを伝えると思いますが、その管理者自身も課題やこだわりを抱えているはずです。
まずはそちらを優先して解決するのが良いと思います。そうすれば、こちらの話も通りやすくなるかなと。
〇人間関係について
・広域のマネジメントをしている中で、人と人とのコミュニケーションが大事だと感じています。
管理者と毎週1on1をしていますが、自分の中では管理者と距離感が近くなって、ブロック全体でコミュニケーションが取れていると認識していました。
ですが、管理者からは「管理者同士のコミュニケーションが希薄」との意見が出されて、そこに着目できていなかったことに気付きました。
要は、自分がこれでいいと思って進めていることが、他の人の角度から見るとそうでもないわけで、複数の人から意見を聞きながら物事を進めていくのが大事だと思っています。
・デイサービスに着任した際、まずは現場に入りました。それをしないと改革は難しいと思っています。
前任者が厳しく、当時は現場スタッフが自分の意見を全く言えない状況だったので、着任に当たって、必ず出勤スタッフに声掛けするようにしました。
「今日は暑いので、水分とってね」「エアコン入れてる?」「休めてる?」など、なんでもいいので一言二言声を掛けていくと、そこから自然と少しずつコミュニケーションが生まれて会話も盛り上がり、時間はかかりましたが、雑談できる雰囲気になってきました。
・現在の施設では人間関係で困ったことがないんですが、それは上の人たちが話を聴いてくれる環境があるから、今の関係ができているのかなと思っています。
・リーダーがどうしているかで、事業所の雰囲気自体が違ってくるというのは大事なポイントだと思います。
職員が発言できない環境を作ったのもリーダーだと思いますし、それを変えていくのもリーダーのあり方だと感じます。
・今、他事業所に応援で入っていますが、そこで大切な勉強をしています。
リーダーが業務の調整をしっかり明確にしておかないと、人間関係がギクシャクして、そのこじれが直されないままに、事業所全体がぐらぐらしてくるような状況になることを、目の当たりに見せていただいています。
これを立て直し、正常化に持っていくに当たっては、業務の調整だけでなく、声掛け等の色んな調整が必要だと感じています。
過去には自分の事業所でも、首を傾げるような方が一人いらっしゃいましたが、そうすると、みんなが違う方向を向いて、事業所全体ががたがたし始めます。
今はその大変な時期を乗り越えて、スタッフがお互いに声をかけあって助け合う、人間関係の良い状態が続いています。
・人間関係は畑の作物に似ていると思います。いい野菜を育てたかったら、まずいい土を整えないといけない。
人間関係も同じで、そこが整うと、いい方向にケアが転がっていくのを実感しています。
介護の質を上げるのも大事ですが、まずは人間関係を整えて、風通しを良くするのが良いと思います。
・人間関係は難しいですが、自分自身に余裕がないと、なかなか作っていけないものです。
そういう場合は、周りの皆さんの力も借りて取り組むのも手だと思っています。
【総括】高齢者地域生活推進委員会・高浜将之委員長
人間関係は離職につながるとよく言われますが、ここにいらっしゃる事業所の多くが人間関係がいい。
ただ、仲良く話しているのは美しいですが、職場としてそこを目指すのがいいのかは別問題じゃないかとは思います。
やはり仕事として事業所に来ているわけで、仲間で集まって始めたようなことではないので。
もちろん、そうであれば嬉しいですが、それを最終地点として目指すと、しんどいのではないかと思います。
根本的には、人間関係が悪くて仕事に支障を来たす、ということのない職場環境を作ることが大切だと思っています。
以前、ある所で、「職員同士がいがみ合っていて、人間関係が悪かったとします。あなたはどうしますか?」と聞かれたことがあります。
今でもそう思いますが、「何にもしません」と答えました。
これは、二人の間に入って何にもしないという意味であって、「一人一人と話します。一人一人と信頼関係を作ります」ということです。
管理者と部下に信頼関係があると、基本は離職しません。
上司が信頼できなくなって、会社を信頼できなくなったら、そこで諦めて辞めてしまうものです。
根本にあるのはそこかなと思うので、多少、人間関係でわさわさしていても、信頼できる上司がいて、信頼できるリーダーがいれば、事業所は何とか前に向けると思っています。