【CSR推進協議会】オフライン勉強会『フィランソロピーとは?』

【CSR推進協議会】オフライン勉強会『フィランソロピーとは?』

はじめに

CSR推進協議会では、部署を超えてクライアントのQOL、ケアサービスの質、組織のレベルアップを図る目的で各種委員会活動を展開しています。

社会貢献活動への関心が社内外で高まるなか、一般社団法人ソーシャル・イノベーション・パートナーズ代表理事兼CEOの鈴木栄さんをお招きし、「フィランソロピー」の基礎知識や社会的役割について学ぶオフライン勉強会を開催致しました。

登壇者

SIP 代表理事兼CEO:鈴木 栄 氏

一般社団法人ソーシャル・イノベーション・パートナーズ(SIP)代表理事兼CEOチャンス・フォー・チルドレン理事、日本ファンドレイジング協会理事米国のコンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニー等で企業の業務改善やグローバルマーケティング戦略策定に従事。

カリフォルニア工科大学で化学の博士号取得。

開催概要

開催日:2025 年 12 月 15 日(月)
開催場所:サン・ピーチ OKAYAMA(岡山県岡山市北区駅前町2-3-31)

テーマ・講義概要

▸SIPの取り組み

マッキンゼー・アンド・カンパニー等で企業コンサルティングに従事するなかで、50歳を機に社会貢献やNPO法人支援にシフトしたいとの思いから、2019年にSIPを設立しました。

SIPの事業は、寄付者からいただいた寄付金を元にNPO法人や財団法人等に資金提供だけでなく、事業戦略や人事制度構築などの経営支援もセットで提供しています。

「教育・若者の就労支援」「育児支援・女性の活躍」「地域コミュニティの発展」に取り組んでいる団体に対して、経済的リターンを求めず、社会的リターンのみを追求するのが特徴であり、「ベンチャー・キャピタル」ではなく「ベンチャー・フィランソロピー」を実践しています。

これまでサポートしたのは、子どもの貧困・教育格差解消に取り組む公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン等20団体。

このうち6団体はSIPの支援卒業(終了)後も事業を成長させています。
各団体では、若い人たちが社会課題の解決のため、人生をかけて取り組んでいます。

そのサポートのため、SIPも組織強化に取り組んでいます。

▸フィランソロピーとチャリティーの違い

最近、「フィランソロピー」と「チャリティー」の違いを尋ねられることがよくあります。

この二つの言葉をAIに聞くと、フィランソロピーは「時間やお金、専門知識、リソースを提供して、慈善団体や社会的な目的を支援する行動」、チャリティーは「特定の目的や団体に対して自発的に支援を提供する行動」と出てきました。

二つの言葉は非常に似ていますが、英語の文脈ではフィランソロピーは戦略的に考えるようなところがあります。

チャリティーは反応的に行うところがあるので、個人の街頭募金はチャリティー、団体での寄付や支援をフィランソロピーと言うときもあります。

社会にプラスの影響を与えよう、人々の福祉を向上させよう、自分のコミュニティに貢献しよう、そのような思いで動く人たちのことをフィランソロピストと言うと思います。

SIPとして行っているのが「ベンチャー・フィランソロピー」です。

ベンチャーは新しい事業を起こすことであり、冒険をすることでもあります。

そこにフィランソロピーとしてサポートをしていますので、社会が良くなることはもちろんですが、「私が生きる社会がこういう風になると良いな」と多くの方に思ってもらう社会になることが、(支援の)見返りになるのだと思っています。

▸フィランソロピーの社会における役割

日本の教育や福祉の発展過程をみると、困っている人を市民やNPO法人が助けるとき、新たな社会ニーズが顕在化されます。

その取り組みが段々とうまくいって、そのサービスが安定すると、公平公正な制度や公共サービスとなる可能性につながります。

受益者が費用負担できる場合は、新たな民間サービスになっていきます。

フィランソロピーとして取り組むことは、一人ひとりが意思をもって社会をより良くするために貢献する機会であり、行政サービスや営利事業のサービスの原型を試す社会の研究・開発の役割を担うことにもなると思います。

企業にとっても、新しい事業のアイデアの素になる可能性もあります。

▸個人とフィランソロピー、企業とフィランソロピー

「世界に変化を望むなら、まずは自らがその変化となれ」というのは、ガンジーが残した言葉です。

最近、「コレクティブ・インパクト」という言葉が流行っています。その本質は市民一人ひとりが変わることだと思っています。

外部から社会の一員に働きかけても社会全体は変わらない。
複数の人が働きかけて何かさせようとしても社会は変わらない。

しかし、社会の構成員である「私」を含む一人ひとりが変わると、社会は変わります。

思いを一緒にする人を増やしていくことが大事だと思います。

社会貢献には、時間、労力の「タイム(Time)」、資産、お金の「トレジャー(Treasure)」、能力、スキル、影響力の「タレント(Talent)」の「3つのT」が必要だと言われています。

企業としては、フィランソロピーによって、さまざまなNPO法人等との関わりを持つことで新規事業の起点や企業理念の実現につながります。

社会課題が顕在化されることでの政策提言、社会価値創造のパートナーとしてNPO等と組むという方法もあります。

また、従業員にとってのウェルビーイングや企業のブランディングといった多面的・複合的な関わり方が可能となります。

フィランソロピーは単にお金を出すことだけではなく、時間やスキル、業界のネットワークをどのように使って社会を変えていけるだろうか、障害者介護(の質向上等)に向けて力を出せるのかということではないかと思っています。

TOP