【合理的配慮推進委員会】『性の多様性(LGBTQ+)勉強会を開催しました』
勉強会概要
2025年12月17日(水)17時〜18時に、合理的配慮推進委員会主催による「性の多様性(LGBTQ+)勉強会」を開催しました。
本勉強会は、介護サービス提供事業者として、利用者・職員双方が安心して関われる環境づくりを進めることを目的とし、LGBTQ+に関する基礎知識から介護現場特有の課題までを幅広く学ぶ機会として実施しました。
講師には、株式会社アカルク代表取締役であり、トランスジェンダー当事者でもある堀川歩(ほりかわ あゆむ)氏をお迎えしました。
当事者の視点を交えた講話を通じて、制度や知識だけでは捉えきれない現場での配慮や判断の重要性について理解を深めました。
堀川 歩 氏の経歴
堀川 歩 氏は、高校卒業後に地雷撤去を行うため陸上自衛隊に入隊し、任期満了後は自分の目で世界の現状を確かめる為に世界一周の旅に出発。
帰国後はLGBTQ+の方の総合サポート事業を個人で立ち上げる。
その後、ユニバーサルデザインのコンサルティング会社で人事部長を務め、2020年に株式会社アカルクを設立。
「人と組織を明るく照らす」をビジョンに、多様な人が働きやすい職場環境作りを専門に行い、年間100本以上の研修や講演を行い、他社のアドバイザーなども務める。
なお、株式会社アカルクは、職場におけるLGBTQ+への取組みに関する指標「PRIDE 指標2025」において、5年連続「ゴールド」を受賞。
勉強会の背景
土屋グループでは、2025年6月に従業員を対象とした「LGBTQ+に関する社内アンケート」を実施し、488名から回答を得ました。
その結果、LGBTQ+について「これまで学ぶ機会がなかった」と回答した人が約75%に上り、知識や理解の不足が課題として浮き彫りになりました。
また、「LGBTQ+の方との接し方や、どのような配慮をすればよいのか分からず不安を感じている」といった声も多く寄せられました。
こうした結果を受け、当委員会ではLGBTQ+に対する理解を深めることを目的に、LGBTQ+の総合サポート事業を行う株式会社アカルクの代表取締役・堀川氏を特別講師として迎え、本勉強会を開催する運びとなりました。
▸勉強会の主な内容
1.LGBTQ+に関する基礎知識と社会状況
勉強会では、委員会発行の合理的配慮新聞Vol2(号外)をもとに、LGBTQ+の言葉の意味について、性の4要素、レインボーフラッグ、カミングアウト、アウティング、アライ等、LGBTQ+の基礎的知識を確認しました。
現状国内におけるLGBTQ+当事者の割合は約3〜10%(大規模調査では8.9%)とされ、「佐藤さん」「鈴木さん」の名字の方やAB型、左利きの方と同じくらいいると言われています。
これは決して少数派ではなく、職場や利用者、家族・友人の中にも当事者が存在していても不思議ではありません。
また、「LGBT理解増進法(2023年6月施行)」をはじめ、同性パートナーシップ制度の現状、トランスジェンダーに関する性別変更制度と近年の司法判断についても紹介があり、事業者として性の多様性に関する理解促進、研修の実施、相談体制の整備が求められていることを改めて確認しました。
2.介護業界における課題と合理的配慮
介護業界特有の論点として、以下のような課題について紹介いただきました。
- 利用者・職員双方のプライバシー保護
- 入浴介助や排泄介助など身体介助時の配慮
- 同性介助の原則と本人の希望との調整
- 終末期ケアにおける家族関係の複雑さ
- 認知症による意思確認や情報管理の難しさ
堀川氏からは、トランスジェンダー当事者の治療状況や考え方は一人ひとり異なるため、「一律の対応ではなく、本人の意向を丁寧に確認し続ける“個別ケア”の視点が重要である」との説明がありました。
制度やマニュアルだけに頼るのではなく、当事者の声を尊重しながら柔軟に対応する姿勢が、介護現場では特に求められる心構えについて共有頂きました。
3.カミングアウト、アウティングと法的観点
勉強会では、カミングアウトの実態についても触れられ、調査では約4割の方が「誰にも相談していない」と回答していることが紹介されました。
(出典:株式会社アカルク、株式会社アスマーク共同調査2024年8月7日~ 8月21日に行った有職者1万人を対象とした職場におけるLGBTQ+調査)。
カミングアウトを受けた際には、「話してくれてありがとう」「そうだったのですね」と受け止める姿勢が大切である一方で、本人の許可なく第三者に伝える「アウティング」は決して行ってはならない行為であることを要点としてお話頂きました。
アウティングやSOGI(性的指向・性自認)に関するハラスメントは、パワーハラスメント防止法の対象となる行為であり、「知らなかった」では済まされない法的義務であることが改めて今回の勉強会にて共有されました。
日常の何気ない会話や職員間の情報共有においても、細心の注意を心がけていきましょう。
4.参加者の反応とアンケート結果
勉強会終了後に実施したアンケートでは、回答者のうち、94%が『非常に満足』『満足』と回答いただきました。

自由記述では、「初めて当事者の生の声を聞くことができた」「自分の中にあった無意識の偏見に気づいた」「介護現場での対応を具体的に考えるきっかけになった」といった声が多く寄せられました。
一方で、「介護現場での具体的な成功・失敗事例をさらに知りたい」「継続的に学ぶ機会が必要」といった意見もあり、今後の各種委員会活動への課題が得られました。
5.今後に向けて
勉強会の最後には、合理的配慮推進委員会が作成した「合理的配慮ガイドブック」および「合理的配慮新聞(LGBTQ+号外)」の活用について案内を行いました。
当社では今後も、合理的配慮推進委員会の活動を通じて、性の多様性を含むさまざまな背景を持つ人々が安心して働き、サービスを利用できる環境づくりを進めてまいります。
継続的な学習の場の提供と現場への反映を重ねながら、「探し求める 小さな声を」という理念のもと、合理的配慮を企業文化として根付かせていくことを目指します。
合理的配慮推進委員会 委員長・白鳥美香子のコメント
本勉強会では、外部より株式会社アカルクの堀川様をお迎えし、専門的な知見や実践的な事例を交えながら、合理的配慮のあり方についてご講義いただきました。
堀川様のご経験は、私たちが日々直面する課題を見つめ直し、より良い対応を考えるうえで非常に貴重な学びとなりました。
合理的配慮の推進は、障害や性の多様性を含め、誰もが安心して自分らしく過ごせる環境を整えるために欠かせない取り組みです。
社会の変化とともに、私たちの職場や利用者、家族、友人の中にも、さまざまな背景を持つ方々が共に働き、生活しています。
その一人ひとりが尊重され、力を発揮できるような環境づくりを、皆さまと共に進めてまいりたいと考えております。
今回の研修を通じて、参加者の皆さまが合理的配慮の意義を改めて理解し、職場での継続的な学びや、一人ひとりを尊重する姿勢、そして具体的な支援の実践につなげていただければ幸いです。
参加者のコメント(一部抜粋・改変)
・当事者の方から「言われてよかったこと」「うれしかった言葉」を具体的に紹介いただけた点が印象的でした。
今後の関わり方の参考にしたいと思います。
・SOGIハラスメントについて、無意識のうちに発言してしまっている可能性があることに気付き、反省しました。
言葉や声かけは誰に対しても重要であると、改めて気を引き締めるきっかけになりました。
・LGBTQ+という言葉を耳にする機会は増えているものの、理解できていない部分が多いと感じていました。
正しい知識を多くの人が知ることで、LGBTQ+の方々がより過ごしやすい社会になっていければと思いました。
・自分自身の中に、マイノリティに対する差別的な意識や考えがあることに気付かされました。
今回の勉強会を通じて深く反省し、意識して改善すべき課題であると感じました。改善すべきは私自身です。
・これまで「人と違うこと」を特異な目で見てしまっていた自分を省みる時間となりました。
当事者の方々の苦労を知り、考え方を変えるきっかけをいただいたと感じています。知ることで意識は変わるのだと実感しました。
・初めて当事者の方のお話を直接伺うことができました。
正しい知識が広まることで、LGBTQ+の方々がより過ごしやすい社会になると感じました。















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