【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年8月15日
開催概要
開催日時:2024年8月15日
開催場所:オンライン
当日のアジェンダ概要
- 各事業所の困りごとの事例検討
当日の定例レポート
当日の定例ミーティングでは、前回提示された各事業所の困りごとの事例についての検討が行われました。
各事業所より、前月からの状況の変化・経過が共有され、それに対しての検討及び有益なアドバイスが出席者より示されました。
各事業所は、受け取ったアドバイスを元にチャレンジを行い、その経過を次回以降のMTGで引き続き共有することとなりました。
<各事業所の困りごとの事例検討>
デイホーム
<概要>
▸80代女性・アルツハイマー型認知症。ほぼ見守りが必要。
【利用頻度】週1回(週3回の利用だったが、認知症の進行で他の認知症対応型デイサービスに週2回通うようになった。トータルで週3回となっている。)
【前月の内容】当事業所を利用して1年ほど経つが、ここ半年は利用拒否がよくあり、声掛けを工夫してもなかなか利用につながらない。
「用事がある」「行きたくない」などと言われたり、色々な理由を付けられてよく休まれることがある。
【前月からの変化】前月以降、拒否があまりに強く、ほとんどご利用がない状態が続いている。
他の認知症対応型デイサービスにも行っていないとのこと。
声掛けをしても、「足が痛い」「用事がある」など、何かしら理由を付けて休まれている。
<補足>
◾︎息子さんが定期的に自宅に伺い、食材を用意されている。ご本人が料理しているとのことだが、水分補給ができていない可能性もあり、心配している。ご家族も心配しており、介入できるところがあればしたい。
◾︎ケアマネによると、ご本人は介護の方に関わると施設や病院に入れられるような気持ちになってしまい、それで家から出たくないということもあるとのこと。
◾︎前の管理者さんの誘導でデイのご利用が始まっており、その方が不在になってしまったところが、ご本人にとって大きな環境の変化だと思われる。その頃から拒否が起こり始めた。
<検討およびアドバイス>
◾︎施設入所・入院にならないためにデイに通うということを分かっていただくのも一つあると思います。
◾︎ご本人のニーズからすると、自宅での生活が成り立つのかどうかが、とても重要なことだと思います。
家での生活が一人でも回っていくのであれば、必ずしもデイに行く必要はないとは思いますが、
水分補給などの課題があるのであれば、なんとかしてデイサービスが不安のない場所であるということをまず分かっていただく必要があると思います。
半年前から様子が変わってしまった原因としては、何らかの認知機能が低下してきて、不安が大きくなってきていると思います。
見当識障害が起きているのであれば、デイサービスが安心できる場所なのか、不安な場所なのかの区別がつきにくくなっている状況にあります。
人間はこの認識が曖昧になって区別がつかない状況になると、大抵悪いほうに引っ張られがちになるので、見当識障害が起きて「施設に入れられる」と感じているのは、何かしら自分の生活の中で不便を感じていたり、
できないことが起きている自覚がうっすらあるために、「このままだとまずい」という不安に駆られていると感じます。
なので、まずその不安感を軽くすることが必要で、そのためには、まずデイサービスの職員がその方と人間関係を築くこと、「あなたがいるから私は行く」というくらいの関係性を持つことが重要になると思います。
半年前までは、前の管理者さんがそういう関係性の方で、「その人がいるから私はそこに行く」といったように、デイが安心な場所、自分の居場所と思えていたけれど、その方がいなくなる時に、
その方に替わる存在を作っておかずに環境が大きく変わってしまったことが、ご本人の不安を作る要因になってしまったと思います。
なので、前の管理者さんに替わる安心感を持てる人間関係作りを誰かがしなければいけないと思います。
仕事の範囲外かもしれませんが、前の管理者さんは関係性を築くための訪問などを繰り返されていたと想像できます。
その関係性づくりがキーになると思っています。
それしないと、ずっとサービスにつながらず、生活の課題がそのまま残されていくという気がします。
仲良くなる前に来なくなってしまった感じだと思いますが、この壁をどう破るかが重要だと思います。
もしこのままサービスの介入をしないと、支援がない中で自宅で認知症も進んでいきます。
身体も衰えていき、最終的に本人が一番嫌がっている施設にいきなり入居せざるを得ないという状況になると思われます。
事業所としても、支えられなかったという後悔も持つだろうし、本人の人生にとっても不幸なことだと思います。
だからこそ、無駄打ちかもしれないけれど、関係性を作ることが重要です。
<関係性の作り方についてのアドバイス>
◾︎私の場合、関係性の作り方としては、いろんな話を振ってみて、共通の話題を見つけることから始めます。
その方の環境を見渡して、大事にしているものがあると思うので、何か話につながることはないかを探します。
共通の話題を見つけたら、もうそれはチャンスです。
そこで心が少し溶けると思うので、そうすると「この人と話しても大丈夫だ」となると思います。
で、相手に寄り添うことを第一に考えます。
私から話すのではなく、一言でも多く話してもらうような形に持っていき、傾聴に徹します。
寄り添い方も、少し距離を詰めて、下から上目遣いで見てみたり、「あなたの味方ですよ」「何でも聞きますよ」という感じです。その中で心が通じ合う部分があると思うので、そこからとっかかりを作っていきます。
他にも、会話の中で楽しいことを見つけるのが大事だと思いますし、ご本人の生活歴、既往歴、性格などをよく知っているケアマネジャーと情報共有しながら、訪問されてみるのも良いと思います。
◾︎私が意識していたのは、共通の話題とともに、ご本人にとって嫌なことを探すことです。
以前、手を合わせて「ありがとうございます」と言うと、すごく怒る方がいらっしゃいましたが、その理由はご本人が末期がんであり、「仏さんみたいに扱われるのが嫌だ」ということでした。
「今すごく不安で、気持ちはありがたいんだけど、手だけは合わせてくれるな」と。
そういった“嫌なこと”から話を引き出せることもあると思います。
あと、「ヘルパーです」と言うと嫌がる人もいたので、その時は「市の職員です」と言ってサービスを成立させました。
まずはコミュニケーションを図って、何が本当のお困りごとなのか、そしてどうしてほしいのかというニーズを探ることだと思います。
また、ある方の場合は、「デイサービスの日ですよ」と言うと、「デイサービスって何だ」「今日は忙しいから行かない」などと言うので、
職員がなぜ拒否をしているのかのアセスメントをし、家の中にデイサービスの日時を記した張り紙を貼ることにしました。
そうすると、当日はすでに準備をして頂いているなどして、解決できたこともあります。
<まとめ>
実践的なアドバイスを受け、デイサービス管理者はこれらのアドバイスを実行する方向となりました。
出席者からは、「関係性を作ることができたら、現場の自信につながると思うので、チャレンジしてみる価値はあると思います」「息子さんの気持ちや困りごとも聞いていくと、距離が近くなると思います」
「サービス介入の拒否の理由や、何が足りなくてサービスに対して足が遠のいてしまったのかまで考えながら関わると今後につながると思います」などの励ましの声が寄せられました。
定期巡回
<概要>
▸男性。腸閉塞のため人工肛門を増設し、退院後の今月よりサービスを開始
【前月の内容】増設された人工肛門の痛みが継続しているので、胸に麻薬を貼っている。
それでも痛みが続く場合は頓服の痛み止めを服薬するが 副作用で強い吐き気が出るので緊急通報装置を鳴らされることがよくある。
ただ、介護でできるところがどうしても少なく、介護職員も痛みの理由の判断ができないので、バイタルを測定してそのまま訪問看護(訪看)に相談して指示を仰ぐことしかできず、そうしたことより、
最近はご本人も緊急通報装置を鳴らさずに、直接訪看に連絡するようになってきた。
本来のサービスの流れとしては、介護職員が状況を把握し、情報をまとめた上で訪看に相談するのがセオリーだが、ご本人としては、すぐに指示をもらえるので訪看に第一報を入れている状況。
介護スタッフとしては、介護で何かできないものかと考えたり、寄り添うことしかできないという葛藤、無力感があり、スタッフも「もう少し私たちが寄り添ったら、私たちを頼ってくれるのかな」と思っている。
また、訪看の負担も大きくなってきたので、事業所として訪看と連携して、全体で上手くご本人を支えていけないかというのが課題になっている。
【前月からの変化】病院を受診し、薬の調整をしたところ、経過が非常に良好となる。
ドクターの指示で別の頓服に変えたところ吐き気もなく、それでも痛みが収まらなかった場合は、また違う頓服を処方されており、
その服用でも痛みも吐き気も出ないため、緊急通報装置の発報や訪看さんへの直接のご連絡もほぼないという状況。
<まとめ>
痛み止めを見直すことで問題の解決となり、服薬の重要さの気付きをもたらす事例となりました。
グループホーム
<概要>
▸70代男性・アルツハイマー型認知症。ADLはほぼ自立。
60代半ばで認知症の診断を受け、1年ほど前から高齢者ケアハウスで生活。
就労支援所に週5日、デイサービスに週2回通っていた。今月より、当事業所に入居。
【前月の内容】入居後、毎日5時に起床し、身支度を開始。
とはいえ、見守りの観点から早朝からの外出が難しく、職員の朝食や他の入居者の支援後になることへの理解も困難な状況。
リロケーションダメージ(施設入居や引っ越し等、急激な環境の変化でストレスがかかることによって、心身に悪影響を及ぼすこと)が見られるため、その軽減が現在の課題。
【前月からの変化】グループホームにおいてコロナが発生し、約3週間に渡ってご入居者の方全てが居室待機となる。
当人が入居して1週間後の出来事であり、これから職員が色々と試してみようとしていた矢先のことだった。
現在は居室に鍵をかけてしまい、全く中の様子が窺えないことが一番の困り事となっている。
先日は、首の周りにコードを巻き付けていた。
ネックレスをされていた方なので、コードをネックレスと勘違いして巻いていたかもしれないが、そうではないかもしれない。
また、居室の窓を全開にし、10分ほど怖い表情で下をずっと見ていることもあった。
外に行って下から見上げると、目を合わすことなく居室に入っていった。
部屋に引きこもってしまうと、声掛けをしても返事がなく、話しを聞いているのかどうか分からない状況で、対応に苦慮している。
<補足>
◾︎ご家族からは、以前からも居室から出てこないことはよくあったという話を聞いている。
しばらくすると、何事もなかったかのように出てくるので、孤立させないように、寄り添うことが大切だと現場職員には周知している。ただ、職員も困っている状況。
◾︎食事や水分の摂取は問題がない。
◾︎本来は外から鍵を開けられるため、緊急時に居室を開けたり、中を確認する手段はあるが、
ドアがスライド式であり、ご本人がいろいろなものをはめ込んでドアをブロックしているため、居室を開けることができない状況。
緊急時や防災時にはドアを破壊するか、梯子を使用して窓から入るしかない。
◾︎認知症の進行で、できることが徐々に減っていく中で、スマホで電話をかけることも難しくなっているが、スマホには非常に執着があり、常時持っている。
◾︎現在も朝早くから出かけようとされることがある。現在、就労支援に週2日から通えるよう手配中。
◾︎「食事です」と言うと、居室から出て来てくれるなど、完全に閉じこもっているわけではない。
トイレも部屋の外にあり、近くに職員がいた場合は職員と話すなどしていてコミュニケーションも良好だが、突然表情が陰って険しい顔をしたりするときがある。
◾︎「帰りたい」というメモが残されていた。
いつ書いたのかは分かっていないが、グループホームを施設だと認識していて、自宅に帰りたいという思いがあるのかもしれない。
職員に「帰りたい」と言うことは今までなかった。
◾︎グループホーム入居以前は毎日、日中は就労支援やデイに行かれていた。
環境が変わり、コロナもあって常に部屋かフロアにいることになったので、混乱はあると思う。
◾︎就労支援ではネジをはめ込むなどの仕事をしていた。何か役割があればそれをしたり、何かお願いすると引き受けてくれる。
<検討およびアドバイス>
◾︎ご本人が個室に居たいという気持ちを尊重することは非常に大事だが、防災の観点および緊急時の対応から、必要なときに助けに行けない環境というのが気になります。
何らかの手立てを用いて、緊急時に対応できる環境を優先順位高めに準備する必要があると思います。
◾︎今までいろんなところに行かれていた方ということで、部屋をノックして、外出のお誘いをすればいいと思います。
「一緒に外に出ましょう」と言うと、「行くよ」と返す人であれば、引きこもりでも何でもないと思います。
「暑いからジュース買いに行こうよ」「アイス買いに行こうよ」などのシンプルな声掛けでよいと思います。
みんなのアイスを買ってくるのもいいかもしれません。
みんなに「ありがとう」といってもらうタイミングをそこで作ることもできます。
◾︎出かけてみよう、部屋から出ようなどという気持ちをご本人に起こさせることが良いと思います。
ご本人の気持ちをどうやって動かすかを、ケアの一環として組み込むと良いかもしれません。
◾︎役割があればそれを引き受けてくれるとのことなので、グループホームの中で役割を作って、「○○をお願いしたい」と言うと、部屋から出て来てくれると思います。
<まとめ>
様々な質問が飛び交い、それに管理者が答える中で、アドバイスが次々に提示されました。
管理者も「沢山いいアドバイスをいただけたので、スタッフもコロナ対応で疲弊している状況ですが、これからだと思いますので、やっていけることをお願いしようと思っています。
ジュースやコーヒーを一緒に買いに行くところから始めて、ご家族さんにもその様子をお知らせできたら思います」と、明るい兆しが見えた状況となりました。
感想
◾︎デイサービスの経験がある方だと、介護拒否のケースはみなさん、経験していると思います。
なので、デイサービスの一つの事業所だけで対応可能なのかどうか、他事業所さんやケアマネージャーさん、
在宅サービスだと多職種連携という視点が利用者さんの生活を支える上で必要になってくると思うので、視野を広げて対応をして頂けるといいと感じました。
また対応事例を共有していただけると、我々の引き出しも増えていくと思います。
グループホームの新規入居者さんの件では、入ってすぐコロナになるというタイミングの悪さで生活のリズムを作ることが後手になってしまったのが大きな一因かと思います。
頂いた色んなアドバイスを実施すればまた変わってくると思いますので、頑張っていただけたらと思います。
◾︎いいアドバイスが沢山出されましたので、上手くいってもいかなくても、チャレンジした結果を共有していただけると私どもも勉強になりますので、よろしくお願いします。
【総括】高浜将之委員長
高齢者の方が、自宅以外の場所に行くことになった場合、「施設に入らなきゃいけない」という、ご自身に対しての劣等感・否定感、あるいは嫌だという気持ちがあると思います。
そういう意味では、事業所としては「どうすれば施設だと思われないか」がとても大切なポイントになると感じます。
施設と自宅で最も異なることは、施設では施設がルールを決め、自宅は自分たちがルールを決める、ということです。
やはり自由度が失われるということに対して、人間はどんどん自信を失ったり、施設でなければ生活できない自分になってしまったというような思いが生じます。
それが、本人たちを回復事業所から遠ざけさせるとも思うので、各事業所で「脱施設化」を掲げることが間口を広げ、高齢者の方々が利用しやすくなる環境の一つを作ることにつながると思いますので、ぜひよろしくお願いします。