【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年9月19日
開催概要
開催日時:2024年9月19日
開催場所:オンライン
当日のアジェンダ概要
- 各事業所の困りごとの事例検討・ディスカッション(前回の続き)
当日の定例レポート
当日の定例ミーティングでは、前々回および前回に提示された各事業所の困りごとの事例についての進捗確認・ディスカッションが行われ、ケアサービスにとって最も大切とされることへの“気づき”を深められるミーティングとなりました。
また、各種解決事例を再現できるよう、問題への対応として具体的に行ったこと、行えなかったことを整理し、今後の課題としてそれぞれの学びにしていくことの必要性と大切さが示されました。
<各事業所の困りごとの事例検討>
グループホーム
<概要>
▸70代男性・アルツハイマー型認知症。ADLはほぼ自立。
60代半ばで認知症の診断を受け、1年ほど前から高齢者ケアハウスで生活。
当施設入居以前は就労支援所(就労支援継続B型)に週5日、デイサービスに週2回通うなど、毎日外出している状況だった。
<前月までの内容>
入居1週間後、グループホーム(2階)においてコロナが発生し、約3週間に渡って居室待機となるが、居室に鍵をかけてしまい、中の様子が窺えないことが一番の困り事となっていた。
また、首の周りにコードを巻き付けていたり、居室の窓を全開にし、怖い表情で下をずっと見ていたこともあった。
部屋に引きこもると声掛けをしても返事がなく、話しを聞いているのかどうか分からない状況で、対応に苦慮している。
<前回からの経過>
・ご本人がフロアに出てきた際に、必ず職員が隣に座ったり、一言二言声を掛けたり、お茶を勧めたりした。
・以前通っていた就労支援所に8月下旬から週2回通い始める。(姪御さんの要請で調べたところ利用できることが分かり、継続利用となった)
・1階にあるデイサービスに、週2~3回参加を始める。
・買い物
⇒1回行ってみたものの、ふらふらとどこかへ行こうとしたり、買い物にはあまり興味がなさそうなので、どのような形で外出できるか検討中。
<現在の様子>
就労支援所に通い始めてから少しずつ改善に向かっている。
デイサービスでも、最初は椅子に座った瞬間にのけぞるなど、参加を拒否することも見られたが、今では相手に気遣いができるほど、心理的にも落ち着いている状況になった。
現在は自室に鍵を掛けることも閉じこもることもなく、食事時にも部屋から出てこられるなど、入所後1か月を過ぎた頃から通常の生活に馴染んできている。
以前の生活環境に少しずつ近づいていることが良かったと思われる。
<管理者が思う、今回の事例から今後に活かせること>
・ご本人のリロケーションダメージの大きさ・現在の身体的状況・心理的状況に関して、職員に周知・共有すること。
朝の申し送りや職員の帰宅のタイミングで、ご本人の様子を職員に必ず聞くことで、「ご本人に寄り添おう」という気持ちを生じさせることが大事だと思われる。
ただ、「どうだった?」と率直に聞くと職員が構えるため、コミュニケーションの取り方には注意し、聞ける範囲で聞く、
職員が試されているような聞き方をしない、言わなければいけないという雰囲気は作らないことを心掛けた。
<感想>
・偶然の副産物(姪御さんの要望)により以前の環境に近づいたことで、ご本人の生活が以前と似通い、落ち着いた可能性がある。
時間が経ったから落ち着いたのではなく、前の生活に近づけたことも大事な要因だと思われるので、その周知は重要だと思われる。
デイホーム
<概要>
▸80代女性・アルツハイマー型認知症。ほぼ見守りが必要。
<利用頻度>
週1回(週3回の利用だったが、認知症の進行で他の認知症対応型デイサービスに週2回通うようになった。トータルで週3回となっている。)
<前月までの内容>
当事業所を利用して1年ほど経つが、ここ半年は利用拒否がよくあり、声掛けを工夫してもなかなか利用につながらない。
「用事がある」「行きたくない」などと言われたり、色々な理由を付けられてよく休まれることがあり、現在ほとんどご利用がない状態が続いている。
他の認知症対応型デイサービスにも行っていないとのこと。
<前回からの経過>
・利用日以外にも週1~2回、お顔を見に訪問している。
・訪問介護のヘルパーさんを入れようとしたが、全く家に入れない状況。
・6月から契約していた認知症対応のデイに関しても一度も利用ができておらず、そのまま8月に終了。
・ご家族に小規模多機能を勧めている。
・食事はとれているが、ゴミ捨てができていない状況。ご家族が週1回くらい訪問し、なんとか生活が成り立っている状態で、家の中も匂いがしている。
・土屋のデイサービスは今まで通り、週1回継続したい。
<現在の状況>
土屋のデイを週1回継続したいということだが、このまま利用が終わってしまうかもしれない。
利用を続けて欲しいが、どうすればいいか分からない状況が続いている。
認知症対応デイについては、まったく知らない人が来るので利用につながらなかったと思われるが、土屋のデイサービスは、顔は覚えてもらっているので家には入れるものの、それでも難しいというところ。
ただ、大抵のことはご自分でできるので、困りごとが出てこない状況でもある。
<感想>
・仕事外に週1回の訪問という関わりをデイサービスがするのはあまり聞いたことがなく、姿勢として素晴らしい。
・土屋のデイサービスの職員は家に入れるということで、信頼に起因する可能性があり、訪問を続けることで利用につながるかもしれないと感じる。
・タイミングがまだ早かったのかもしれない。
具現化された課題やニーズをご本人が感じていない状況の中で、介護職の視点からサービスを受けた方がいいと提案している状態だと感じる。
当人が「自分では何ともならない」と思った時に、またアプローチをすることが大事だと思われる。
関係性を続けて、どこかで引っかかるフックとしてデイホームを残しつつ、ケアマネさんに継続的にご本人の状態を聞きながら進めるのが大事だと感じる。
<“事業所としての関わり方”についてのディスカッション>
<議題>
事業所として関わることでコストも発生するので、どの程度関わりを続けていけるのか。
ケアとしての意義と、事業所の台所事情のバランスがある中で、難しいところだと感じますが、“事業所としての関わり方”についてご意見をお願いします。
・ご本人にできることがたくさん残っていて、他人のお世話になりたくないという気持ちがある場合は、時々訪問しています。
大事なのが、それをケアマネさんに共有することです。
それがその方の利用につながるかもしれないし、他の方を紹介していただけることもあるので、ケアマネさんとの連絡を絶つことなく、しっかりとご縁を大切にしてほしいです。
・ケアマネジャーがまずご本人と関係性を作り、ヘルパーさんと一緒に訪問すると、「あなたの知り合いなら」と受け入れてくれることも多いと思います。
ただ、人材や時間、コスト面で事業所に限界がある以上、今回の訪問は明らかに事業所の規模を超えた活動です。
とはいえ、何もしなければ支援が断たれてしまうという中で、土屋のデイサービスがご本人の生活のキーポイントを握っていると思います。
・ご本人が困っていないのでサービスを利用していない状況ということで、定期巡回に相談するのがいいかもしれません。
アセスメントが取れていないのであれば、先に定期巡回が入ってアセスメントし、情報を頂いてから後付けでプランを作れます。
それが定期巡回が得意とするサービスなので、近隣に定期巡回があったら、資源として使うのもいいと思います。
<今後の対応とアドバイス>
管理者:継続して訪問する予定ですが、難しい方なのでどうしていいか分からず、毎回手探りとなっています。
⇒“難しい”という意味が、クライアントとしてどうお付き合いしたらいいのか、また福祉専門職としてするべきこと、やってあげたいことを受け入れてもらえない、ということだと思いますが、
ご本人の身になって考えると、本人は全く困っていないので、そもそも介護サービスを使うメリットを感じていないという意味では、ご本人にとっては当たり前の反応とも言えます。
難しい方というよりは、地域で暮らしていく中で、周りの理解や、周りとの折り合いが難しいというところだと思われます。
今は過渡期かもしれないので、近隣の人やケアマネジャー、一度関係性を築いた土屋のデイサービスがどう見守って支えていくか、その過程にあると感じます。
有償ホームヘルパーの保険外サービスを利用して、少し訪ねて挨拶したり、お茶を飲むなどで関係性を保ち続け、「ここかな」という隙間を見つけて、
「こういうことで手助けできるよ」と、ホームヘルパーや他のサービスにつなげるのも良いかもしれません。
訪問看護は認知症の経過を見たり、家の中の環境を一緒に調整することもできるので、そこにつなぐのも一つだと思います。
どのような形でその方と引き続き関わっていくのかは、法人としての判断もあるので難しいですが、変化があればご報告ください。
グループホーム
<概要>
▸60代男性・アルツハイマー型認知症。
声掛けや見守りをすれば、大体のことは自身でできる。着衣に一部支援が必要。
<前月までの内容>
3か月ほど前に入居された方で、「帰らせてください」「私は駄目なんです」など強い口調で言われ、出口を探したり、他の方の部屋に行き口論になることがあった。
また、実際に外に出て行かれて探しに行くこともあった。
スタッフの肩を叩いて呼んだり、声が激しくなることもあり、医療職などに相談して薬を調整してもらっている。
それでも、面会や他の利用者の訴えなどで周りの環境が賑やかになった際や、コミュニケーションにずれが生じた時、注意された時など、
環境の変化で気分が変わってしまう傾向も見受けられるため、感情の起伏をなだらかにするような対応を取るなど、色々と試している。
<前回からの経過>
精神科の往診で、薬の増量。
<現在の状況>
薬の増量後、興奮状態がなくなり、笑顔が見られる時も出てきたが、徐々に食べられなくなり、1か月で10キロ以上痩せてしまった。
廊下をただずっと歩いており、ふらふらすることもある。
食欲も意欲もなくなったため、薬を減らしてもらい、現在は少しずつ食事の量も戻り、話しかけたら返答があるときも出てきた。
ただ、「このままでいいのか」と、スタッフ皆で話しており、「これが本当に本人、ご家族が望んでいる姿なのか」という感じがある。
ドクターに相談しているが、「困るのはあなたたちだよね」と言われ、返す言葉がない。
「やってみないと分からなくない?」とは思ったものの、スタッフ皆、申し訳ないというショックを感じている。
<出席者からのアドバイス>
・同じように、薬を使って症状が落ち着いたけれど、ぜんぜん起きないなど、マイナスの症状が出てきているところがあります。
そういった薬を本人が使わないと困る状況はあると思いますが、「あなたたちが困る」という理由で使うのは違うと思います。
一事業所として、ドクターに「お薬を止めて下さい」とは言えないので、現在、「使う前はこうだった。こういうことに困っていた。ただ、これはできていた」など、
使用する前の状態を事細かに記録したものを提出し、使用後にどのような状態になったかを具体的に情報提供しています。
その上で、本当に今の薬が必要なのかを、ドクターとご家族を交えてお話ししています。
・ドクターに言われたことがグサッと刺さるのは、確かに大変さをアピールしていたのは自分たちだったというのがあります。
先生に助けを求めて、先生はその通りのことをして下さったけれど、というところです。
今、薬の量を調整して戻りつつあるということなので、「薬を減らしたら、こんなふうになりました」というアピールはいいと思われます。
・薬を替えてから、24時間シートを使用して、薬の変更後に何が起きて、何ができなくなったのか、食事・水分の量や排泄の状況、熱などを記録しています。
ドクターにはそれを元に説明や質問をして、以前の方が自分らしさを表現できたとか、私たちの感じていることも遠慮なく伝えて相談しています。
薬を戻すことによって困る状態も出てきますが、一番大事に考えているのが「その人らしさが失われないこと」だと思っています。
・ドクターへの伝え方として、主観的なものではなくて、本人の様子を具体的にお見せし、先生に感じていただくようにしています。
本人のありのままの状態を示した上で、先生に判断を仰いでいます。
お願いではなく、質問を投げかける形で、積極的にアプローチもしています。
<今後の対応について>
以前の状態の映像をタブレットで取っていましたが、悪い方向しかとっておらず、いい所も取っておけばよかったと思います。
笑っている写真はあるので、そちらで説明してみます。
ご家族(奥さん)に「今の姿を見てどうですか。今後、どうなって欲しいですか」とお尋ねしたら、涙ぐまれて、「孫には会って欲しいけど、今会わせたら悲しくなっちゃうから、今は会わせられない」と仰っていました。
奥さんは薬も調べていて、「この薬、飲まなきゃだめですか?」と仰っていたので、往診の時に奥さんの意見として伝えていけたらと思います。
今は、夜間だけシートを作って、睡眠時間や、起きているときの様子を記録していますが、それも含めて、細かいデータを取りながら、往診の時にちゃんと先生に伝えられるようなものを作りたいと思います。
あと、すごく感じたのは、家族の思うその人の姿、「その人らしさ」というところを忘れていたのかなと。
大変さばかりをアピールしたから、私たちのせいでこうなったのかなと反省しています。
そこを取り戻すために、その人の元の姿に戻せるように、うまく相談・質問を先生にして、ちょっとずつその人が戻ってくるようにしたいと思いました。
【全体を通しての感想】
・通常業務の中で忘れがちな部分を再認識できる場を作っていただけたと思います。
忙しいと、どうしてもスタッフの目線になってサービスをしてしまう側面がありますが、今回の事例を通して、
ご本人がどういう風に生活したいのか、「ご本人の目線」でサービスを提供するということを、改めてこの場で共有できたと思います。
・情報を共有しながら共に学ぶことで、よりよいサービスを提供することにつながると思います。とても勉強になりました。
・「一番大事なのはクライアント自身」ということを、いつも心の片隅に起きながら支援するのが大切だと改めて思いました。
・薬の増量で、介護側から見るとケアは楽になっているわけで、これでホッとする人、楽でいいと言う視点も中にはあると思います。
そうではなく、「どうすれば、それを改善できるのか」と思うチームもあります。
ドクターに助けを求めた後に、「本当にこれでいいのか」と考えながら、「薬の量が多いのでは」と再度アプローチできる視点を持てる人が1人より2人、2人より3人いることで、施設の雰囲気も大分違ってくると思います。
今回、その視点が管理者にあり、周りの人と共有することが、施設にとって大事だと感じました。
回を重ねるごとに議論も熟されてきて、みなさんの話一つ一つが身になると思いますので、今後も定期的に事例に関するディスカッションを繰り返すのが重要だと思います。