【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年10月17日

【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年10月17日

開催概要

開催日時:2024年10月17日
開催場所:オンライン

当日のアジェンダ概要

  1. 定期巡回サービスより、認知症カフェの実践報告
  2. 事例検討

当日の定例レポート

当日の定例ミーティングでは、定期巡回サービスより認知症カフェの実践報告があり、開催に至る経緯や想いなどが話されました。

事例検討では新たに2つの事業所より課題が提示され、出席者よりさまざまなアドバイスが出されました。

当日の委員会では、メンバー皆で悩んで話し合い、少しでも現場を改善して利用者一人一人のQOLを高めることが委員会の大きな意味であると総括されました。

1.定期巡回サービスより、認知症カフェの実践報告

実践報告

<開設のきっかけ>
以前、居宅介護支援事業所が少なく、売上増が難しい地域で定期巡回サービスの管理者を務めていた時に、地域に根付き、地域の困りごとの声を聞ければと考えていましたが、そうしたことをきっかけに、この度、認知症カフェを立ち上げました。

他にも、加算の要件として「地域に根差した活動」が定められていることや、施設系と違って訪問系にはイベントがないため、そうしたものがある方が楽しいのではと感じていたところもあります。

そして、会社の理念である「探し求める小さな声」を体現したいということも開設のきっかけです。

<開設の経緯>

1.地域の選定
初めに地域包括支援センターに相談したところ、場所とコンセプトが必要だと分かり、まずは場所の選定に取り掛かりました。

事業所から近くて、人が集まりやすい場所を探し、公民館を訪ねましたが、非営利活動とはいえ営利目的の株式会社には貸すことができないとのことで断念しました。

続いて、近隣のカフェを探しましたが、目星をつけたところがバリアフリーではなかったので断念し、ショッピングモールに相談しました。

ですが、そこが高齢者の万引きが非常に多いとのことで、「これ以上、万引き者を増やす気ですか?」と逆にお叱りを受けてしまいました。

ですが、そのショッピングモールを見た時に自分の思う認知症カフェのイメージができたので、何としてでもここでやりたいと感じたんです。

2.交渉
交渉するに当たり、実際に認知症カフェの開設に携わったことのあるショッピングモールや地域包括支援センター、介護保険事業所に電話して情報収集し、

コンセプトを決めるために「一緒に認知症カフェをしませんか」と関係事業所や訪問看護、訪問歯科、福祉用具、薬局、そして事業所の目の前にある看護専門学校にご挨拶に行きました。

そして、これらすべてを取りまとめた上で再度ショッピングモールに交渉した結果、承諾を得て1回目の開催に至りました。

<認知症カフェの開催>
当該ショッピングモールの掲示板にて広報を行い、当日は看板を立てて周知しました。
ビラ配りなどはせず、最小限の広報で開催しました。

参加人数:6名(内訳:掲示板からが1名、ふらっと参加された方が5名)
内容:アプリによる認知機能の低下

<スタッフの感想>
初めは認知症カフェ自体がよく分かりませんでしたが、管理者の熱意がすごく、私たちも認知症カフェの勉強や、実際にいくつかの認知症カフェに参加して雰囲気を見させてもらうなどしました。

管理者は継続して認知症カフェをしていきたいとのことでしたが、定期巡回サービスという仕事がある中で、「続けていけるのかな。皆が同じ方向を向けるかな」と不安に思ったのが正直なところです。

ですが、認知症カフェの準備をする中で、管理者の根気強い交渉などを見て、徐々に続けていきたいと思えるようになり、今では管理者が作ってくれた、地域の方が参加できる素晴らしい財産だと思っています。

今後はカフェを継続し、定期巡回を多くの方に知っていただけたらと思っています。

<今後の取組み>

開催日:毎月第3木曜日(定期)
コンセプト:専門職からの講話

認知症カフェの一番の目的は、「認知症になっても、住み慣れた地域で暮らし続けるお手伝い」です。

これを皆さんに伝えていきたいと思っています。

認知症カフェへの質問・感想

<質問>

Q:最初にショッピングモールで「万引き犯を増やす気ですか」と断られた際、マインドが折れなかったのはなぜですか?

A:ふらっと立ち寄れる認知症カフェを作りたいと思っていて、何と言われてもその場所で開催したいという気持ちがまずありました。

どうしてもやってやろうと。
そのショッピングモールの企業理念を調べたところ、「地域に根付く」とあったので、断りにくい状況で交渉を行いました。

Q:理念やビジョン、目指すものがしっかりとあったことが、断られても粘り強く交渉するモチベーションとなったのですか?

A:はい。それと共に、事業所のスタッフ皆が共感し、一緒にやろうと思ってくれたのも大きな要因だと思います。

Q:周りのスタッフを巻き込むために行った手段(伝え方など)をお伺いしたいです。

A:スタッフに最初にお話しした際は、「なんでそんなことをやるんですか」「それよりも売上を直接伸ばす営業や周知活動をした方がいいんじゃないですか」という意見も出されました。

それに対しては、「加算要件を満たすから」ということもお伝えしましたが、「長期的には認知症カフェも地域に根差すことによって自分たちの事業所に返って来る活動で、なおかつ楽しいと思います」と話しました。

熱意が伝わったのではと思っています。

Q:なぜ認知症カフェにそんなに熱くなれたのですか?

A:以前の事業所で認知症カフェに参加した経験が一番大きかったです。
その時に「自分だったらこうする」などとも思いましたが、それ以上に定期巡回サービスを地域に根付かせたかったんです。

定期巡回サービスは認知度もあまりなく、周知してもらうための取組みが必要で、それが認知症カフェだと感じました。

開催場所がショッピングモールだとより多くの人に知ってもらえて、かつ認知症になっても地域に住み続けられます。
いいことしかないと感じています。

<感想>
地域の方々に何かできないかという取組みが、加算にもつながるということだと思いますので、ソーシャルビジネスを体現している取組みだと感じました。

そういう意味では、公民館が株式会社に場所を使わせてくれないのも時代に合っていないと感じますし、それができる世の中になればありがたいと感じました。

素晴らしい取組みだと思います。
会社の理念にも沿っていて、定期巡回サービスのネームバリューも上げられるなど、いいことしかないと思います。

2.事例検討

定期巡回

<概要>
クライアント(要介護3)の身体状況をご家族が認識しておらず、こちらから依頼する内容等もなかなか理解していただけない。

例えば、尿失禁が多いのでパットの購入依頼をすると、尿量800㏄吸収と、とても小さい物を購入される。

こちらからパットの大きさ、尿〇回分とお伝えしても購入されず、クライアントが布パンツで過ごされることが多い。

そのため尿汚染が続き、布団・衣類の洗濯が頻回に起こり、洗濯物も乾かない状況にある。

夜間も、クライアントが濡れた状態で朝まで迎えている状態で、ご家族には「夜間だけでも大きなパットを使用すれば尿汚染が防げる」と伝えても、

ご家族からは「布パンツと紙パンツをはいて、お股にタオルを挟んで下さい」とのことで、タオルにも布パンツにも尿汚染があるので、そのまま紙パンツにも浸みて、結局布団にも浸みている状態となっている。

冬を迎えるに当たり、それを防ぎたいが、パットはお金がかかるということで、こちら側とご家族に認識のずれがあり、現場から困惑の声が届いている。

<質問による補足>

・ご家族は介護をしたことがなく、正しい知識がないために起こっている問題だと感じる。

・ご家族とクライアントはすぐに行き来ができる場所に暮らしている。

・ご家族は仕事(宿泊関係)をしており、パットを購入する経済力はある。

・ご家族には洗濯せずに済むようにパットの購入をお願いしているが、最近、洗濯機(乾燥機付)を買い換えられ、そちらで洗濯するようお願いされている。

・ご家族の洗濯物(宿泊関係)と、クライアントの洗濯物がごちゃまぜになっている。

・尿汚染の際には、ご家族から漬け置きの指示があり、併せて床掃除がある。同日再訪問時に、漬け置きした衣類を洗濯機で洗い、その後たたんで収納している。

・ご家族はクライアントをとても大切にしている。

<出席者からのアドバイス>

・洗濯のコストとパットを購入するコストを細かく金額比較して提示すれば、シビアに気づきが得られると思います。

・ご家族の仕事関係の洗濯物と、ご本人の洗濯物をまとめて洗濯しているので、コスト増にならないという計算だと思います。

パッドのコストは定期巡回スタッフの労力と洗濯機でペイできるという合理的な判断だと思いますが、問題は本人の不快感(寒さ、冷たさ)で、それを解消する必要があり、それが課題だと伝える必要があると思います。

・特養で働いていた時に布おむつをはいて排泄したことがありますが、すごく不快でした。
それを経験として伝えてもいいと思います。

すごく不快だし、冷たいし、つらいということをしっかり伝えて、「では、どうしますか」ということに尽きるのではないかと。

これは経験してみなければ分からないので、ご家族にはそこのイメージがまだ付いていないだけのような気がします。

<今後の取組み>
ご家族にオムツをはいている時の不快感をお伝えする。

グループホーム

<概要>
ご入居者への食事や水分提供の際、食事介助に対して、ご本人が嫌がるしぐさ(顔を左右に振る/口を閉ざしてしまう/手でガードする/払いのける等)がある。

食事が食べられなければ、その先は点滴や経管栄養等の医療的処置が必要になり、グループホームで生活することが難しくなるので、スタッフもそれは避けたいと一生懸命に食事介助しているが、

その中でスタッフより「そこまでして食べてもらわなければだめなのか、していいものなのか」「ご本人が『いらない』という意思表示をしている行動ではないか」、

「ご本人は、食べたいけど、身体が勝手に動いてしまっているのでは」「何か怖いことがあったのでは」「口腔内や体に痛い所があるのではないか」等々、様々な声が上がっている。

そして、「これは虐待につながってしまうのではないのか」という深刻な思いもあり、食事介助をどこまですればいいのかに苦慮している。

<質問による補足>

・入居者は12年間、当グループホームで生活されており、現在90代。要介護3。

・食事を嫌がるそぶりを見せ始めたのは1週間ほど前。
きっかけは歯茎の炎症。訪問歯科の治療で一旦治っているが、まだ痛いのかもしれないとは考えている。

・往診の医師からは看取りの診断を受けている。

・食事は最初の数口はスムーズだが、3~4割を過ぎたあたりで嫌がるしぐさが出てくる。
最終的に、提供する食事の8~9割は食べていて、食事量には問題がない。すべて全介助で咀嚼嚥下も問題ない。

・水分は特に嫌がり、1日400~500ccしか飲めていない。

・意思疎通や会話も難しく、コミュニケーションは取れない状況。

 

<出席者からのアドバイス>

・看取りの診断を受けているとのことで、医者・看護師を交えて、栄養よりもQOLを維持して豊かに生活していく方に切り替えるのもいいと思います。

在宅で生活しているご利用者は、少ししか食べない人は沢山います。

デイサービスの食事からしたら2割ほどの人もいますが、元気で一人暮らしをしていたりするので、「この食事量でいいのか」について、ご家族と医者を交えて、栄養面でもアセスメントすればいいと思います。

「これで十分」となれば、職員も罪悪感を感じることなく、食事介助ができると思います。

・以前に看取りの介護を経験しましたが、自然に近い形で、ご本人に苦痛のない範囲で召し上がっていただき、しんどくなったらやめていました。

ご本人のQOLを考えると栄養を取って長生きするばかりが幸せではないこと、いかに生活の質の高めていくかを考えると、

拒否があった段階で引くのもいいというアドバイスを当時の上長から受け、食事の回数を小分けにして、大丈夫であれば少し口に入れるなどの対応をしていました。

・グループホームで長く生活されている方なので、スタッフもご本人の好みを知っていると思います。
スムーズに食べられる最初の方でお好みのものを食べていただくものいいと思います。

水分も、ゼリーやアイスクリームなどにしたり、ご家族にご本人が若い頃に食べていたものなどを聞くなど、看取りの時期にご家族を交えてお話しすることも大事だと思います。

・量を減らして、クリアできる目標を低めにし、時間もずらすなどするのがいいと思います。
職員が一緒に食べたり、外出で気分転換も兼ねながら食べたりするのもいいと思います。

・現場のスタッフさんが迷っている印象を非常に受けました。
それは恐らく、その方に対するケアの方向性が現場の皆さんで共有できていないことだと思うので、

看取りの時期というのもあり、主治医やご家族とカンファレンスの場をもって、今後のことを決めるのもいいと思います。

・ケガさせてはいけない、寿命を縮めてはいけない、人によっては命を預かっていることのプレッシャーを感じながら介護している人もいる中で、

この一口を無理やり口に入れるのか、入れなくていいのかの「お墨付き」がある程度必要だと思います。

そこを管理者が医師・看護師と相談し、スタッフにはっきりと迷わず提示することが必要だと思います。

・水分も嫌がるとのことですが、現場にいた時は、ウィダーインゼリー(現 inゼリー)が最期まで取れていました。

呑み込みやすくて、水分もカロリーも取れ、吐き出す方もほとんどいなかった印象があるので、それで水分を補充するのもいいと思います。

・ドクターが看取り期という状態では、食事を止めると入らなくなっていき、食が落ちて、最期に近づきます。
最初はスムーズに食べるとのことで、食べる意欲が全くないわけではないと思います。

食事量の目標値を統一し、ご本人の好きなものに合わせるのがよいと思います。
状況が落ちても食費は同じなので、少しでもいいから大好きなものを提供し、嫌がるようだと水分に切り替えていく。

少しでも長く生きてもらいたいという気持ちは皆さんあると思うので、そのような支援もいいと思います。

【全体を通してのまとめ】

食事は栄養を取るだけでなく、食事自体が生きる喜びであり、生活の中で大事なものであることから、そちらを優先し、ご本人のQOLの向上に重きを置くことが良いとの結論に達しました。

グループホーム管理者は、時間・量・水分の面で職員と情報交換しながら、家族にも伝えて対応していくとのことです。

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