【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2025年1月16日

【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2025年1月16日

開催概要

開催日:2025年1月16日
開催場所:オンライン

当日のアジェンダ概要

  1. 介護付き老人ホームにおける虐待報告
  2. グループホーム異動後の取組み
  3. グループホームでの課題相談
  4. 高浜将之委員長より総評

当日の定例レポート

当日の定例ミーティングでは、まず初めに虐待についての報告がありました。

虐待が発生した際の流れとともに、虐待事件をいかに防ぐかについて様々な視点で意見が交わされました。

また、グループホームの立て直しについては、現在の取組みとビフォーアフターの模様が紹介され、物とられ傾向にあるご利用者への対応に関しては、出席者から貴重なアドバイスが提示されました。

1.介護付き老人ホームにおける虐待報告(2024年12月)

<報告内容>
▸12月5日朝
早番の職員が出勤し、女性入居者さん(以下、Aさん)の顔に内出血があるのを発見。

前日にはなかったため、当日の夜勤従事者(以下、Bさん)に確認したところ、Bさんが夜間、ベッド上でAさんのおむつ交換を行った際に大きな声を出されたので、とっさに口をふさいでしまったとのこと。

(*Aさんは、普段からオムツ交換や入浴介助、水分の介助等、すべてにおいて声を出される方であった)

手で押さえると外傷ができてしまうのではないかと、その後タオルで口をふさいだとのことで、Aさんの顔が内出血と擦過傷で赤くなっていた。

看護師からはBさんに対し、「それはやっていけない行為だ」と口頭注意があり、Bさんは事故報告書を作成。

なお、Bさんは夜勤専門の職員で、月に8~10回ほど夜勤勤務に従事していた。

▸12月5日11時 
管理者が出勤。報告は受けるがBさんには会えず、午後、取締役が出勤した際に報告。

▸12月7日
管理者と事業所マネジャーで、Bさんに面談。

Bさんには「これはしてはいけない行為だという自覚があるのか」などの聞き取り、およびご家族へのBさんからの謝罪の必要性を伝達。

Bさんからは「もちろん私の方から直接謝罪したい」という言葉があった。

Bさんからの事実確認終了後、管理者よりAさんのご家族に電話で報告および謝罪。
ただ、キーパーソンの息子さんが仕事で不在だったため、奥さんに経緯を説明。

Aさんは10年ほど当事業所に入居されている方であり、ご家族とも関係性がある程度できていたこともあり、

奥さんからは「介護の大変さはわかります。主人も同じような考えだと思います」と、優しい言葉と冷静な対応をいただく。

もっとも、事が重大なため、直接お会いして報告と謝罪をしたい旨を伝え、後日、息子さんからご連絡をいただくというところで一旦終了。

▸12月8日
Aさんの息子さんから「母の様子を見たい」と面会の連絡があり、事業所に来られる。
管理者もすぐに駆け付け、直接報告と謝罪。

息子さんにも冷静に対応いただき、「大変さは非常にわかるので。ただお母さんが元気そうでよかった」という言葉をいただいた上、Bさんの心配までしていただく。

当事業所は14名の入居者さんに夜勤者1人で対応する体制のため、スタッフがイライラしてしまった際のガス抜きや、息抜きのタイミングもなかなか取りづらいことがあり、

息子さんからは「そのような体制も今後何か改善できれば」というご提案を頂いた。

▸12月11日
管理者より行政(小金井市)に本虐待事案を報告し、簡単な経緯を説明。

▸12月25日
管理者が小金井市に出向き、30分ほどのヒヤリングが実施される。
スタッフBさんの普段の様子や、入居者Aさんの認知症の症状、BPSDの状態を報告。

▸2025年1月14日
小金井市に、指定された書類を提出。
内容はAさんのケース記録や、当事業所の就業規則、シフト表、虐待委員会の議事録。

それらをもとに小金井市より今後認定が下りる方向。
虐待と認定された場合は、小金井市から東京都に報告がいく流れになっている。

<当事業所管理者より>
ご入居者がベッド上で横になっている状態では、かなり強い力で口を押さえないと内出血はなかなかできるものではないので、かなり強い力で押さえたと思われる。

Bさんからの事実確認が必要なため、当日あるいは翌日に面談を実施したかったがBさんとなかなか連絡が取れず、面談が2日後になってしまった。

Bさんのその時の精神状態に関しては、Bさんの口から、「Aさんに対応するたびにイライラしてしまっている自分がいた」という発言があった。

職員の状況の汲み取り、早期の発見が不足していたことが大きな反省点であり、今後の課題である。

<当事業所取締役より>
当ケースを当委員会で共有しながら、事業所の改善に取り組みたい。
今回、事実確認が遅くなった関係で、ご家族および行政への報告が後手に回ってしまった。

今後の課題として、まずは即日対応が挙げられるが、やはり夜勤専従の非常勤さんたちとのコミュニケーションが希薄だったことは否めず、

対応とコミュニケーションの密度を濃くすることを両輪で進めていく方針。

<委員会メンバーよりコメント>

・特に施設系で、夜勤があるサービスについては、夜勤専従のスタッフさんを採用するケースもありますが、なかなかガス抜きをする機会がなかったり、

責任のある立場の方と話す機会が希薄になってしまうことは、私の経験上もありました。

・虐待を発見した時に、ご家族への報告は一番気を使うところです。

当事業所でも、悪意ではないけれど、腕を支えるために強くつかんで指の跡が腕についてしまったとか、虐待ではないけれど、あざができたり傷ができたりと、

虐待を疑われるかもしれないという場合は、見つけたら即、ご家族さんへの報告はさせていただいています。

いったん報告をして、原因が分かり次第、改めてご連絡する方法を取っています。

また、夜勤者には、「自分の気持ちがコントロールできなさそうだったら、とにかくその現場を離れて下さい。

そして、交替しますので遠慮なしに即連絡してください」と伝えています。

・介護初めて1年目くらいの時に、オムツ交換の時にすぐ手を出し、目をめがけて指を付いてくる利用者さんがいましたが、当時は私も勉強不足で、

認知症の方の理解ができていなかったのと、反射的に身を守ろうとして手をガっと持ってしまったり、振り払ったりしたことがありました。

その行動が、結果的に相手に対して攻撃的になってしまっていたことを思い出しました。

環境やルール作り、認知症の理解の勉強が改めて必要だと感じさせられました。

・今回の件がご家族からの大きな苦情に発展しなかったことに関しては、ご家族と10年の付き合いがあり、これまでの事業所側の対応が充実した良いものだったことが大きいと思います。

また、ご家族から提案していただいたスタッフ体制の改善も、施設側としてできるところがあれば前向きに取り組んで改善に努めると良い方向に変わると思います。

今回の虐待事案が発覚してからの初動や対応の流れは、事実確認が2日くらい遅れてしまったという部分はあるにせよ、

他のサービスにも勉強になるので、このようなケースがあった場合は、この流れに沿って対応をお願いできたらと思います。

・本事案に対しては、対応の遅れを認識しているとのことですので、今後はそういったことはないのかと思います。

普段からBさんが虐待していなかったかを聞き取りするのもいいと思います。

2.グループホームへ異動後の取組み

<グループホーム施設長より>
2024年12月より、大阪のグループホームから岡山のグループホームの施設長として就任しました。
当施設は2階建てで、1ユニット9名定員、現在4名の方が入居され、1名が入居の契約に向けて動いている状況です。

現在、就任から1か月半が過ぎ、ようやく現状の把握ができてきましたが、まず煩雑な部分が多くあり、特に床に砂・ゴミ・砂利などが普通に落ちていて、

歩くとじゃりじゃりする場所があったり、人が通るとそこに渦が巻いて、竜巻みたいな形でほこりが舞うという感じでした。

職員さんは「掃除はしています」と口をそろえて仰っていましたが、その辺から取り組もうと、掃除に精を出しています。

その中で感じたのは、新規入居者を迎えるに当たって、見学していただく部屋がないと。

スタッフも現場をしながらということもあって片付けまでは追いついておらず、空き部屋の中にものやゴミが溢れている状況だったので、

整理整頓・掃除をし、床にもワックスをかけるなどして、ご入居者を迎えるためのモデルルームを作りました。

*ビフォーアフターの画像の紹介

また、当施設の関連事業所は他に3か所あるので、それぞれの管理者らと足並みを揃えながら、現在顧客創造活動・営業活動を展開していく準備段階に入っています。

私も早番・日勤・遅番と現場に入りながら、現場の職員とのコミュニケーションを大事にしつつ、顧客創造活動・営業をしている形です。

今後は1ユニット9名の満床に向けて努力していくと同時に、関連事業所の皆さんと力とあわせて業績回復に向けて頑張ります。

<委員会メンバーよりコメント>

・私もグループホームで働いていた時は、使っていない部屋に車椅子をどんどん入れていったりしていて“あるある”だなと思いました。

ご家族さんは「忙しいよね」と理解してくださいますが、そこに甘えてしまい、環境を整えずに運営していたなと、

当時を振り返って思いますし、見学や面会に来た際に、その部屋をちらっと見て帰られるご家族さんもいらっしゃいました。

そうしたちょっとしたことが不安につながるところでもあるので、細かい所からしていく必要もあることに改めて気づかされました。

・岡山のその施設は関連事業所の中で一番初めに立ち上がったグループホームで、前任者のご苦労や、

いろんなことも知っているので特別な思いがありますし、上手く経営して、ご利用者が幸せであってほしいという強い思いが今もあります。

2024年5月あたりに久しぶりに伺ってみると、かなりショッキングな状態で、どうしたらこのような状況になるのかと。

何とかしたいと思っていましたが、そこにいる職員さんたちのそれぞれの個人的な思いや価値観が大きく関係していることが大きな課題と感じ、

これは1人ではどうにもできない、熱いピュアな思いの仲間が複数名必要だということを痛烈に感じていました。

その中で、今回新しく施設長として赴任して来られ、モデルルームを作られたり、熱い思いでケアに携わってくださったり、

営業活動してくださっているのは本当に感謝していますし、できることがありましたらご協力させていただければと思います。

・スタッフと関係性を築くことで、良い運営・サービスができると思うので、引き続き頑張っていただければと思います。

・お部屋がきれいになってとても良いと思います。
そういったところから心が洗われるとも言いますので、整理整頓・掃除に気を付けていくのもいいと思います。

3.グループホームでの課題・相談

<相談内容>
入居者:92歳 女性 介護度2
2024年に入居された方で、物とられ傾向がある。

入居された当時も、フロアにある小物から何から「自分のもの」だと仰っていたが、それは容認するということでましにはなっている。

ただ、現在まで続いているのが、フロアの共有のテレビを「自分のもの」だと仰り、その話を延々と繰り返され、朝から夕方までずっと不穏な状況になられている。

スタッフを追いかけてそのお話しをされるだけでなく、フロアにいる他の入居者さんにも「取られた、私のやのに」という話をずっとしているので、他の入居者さんも不穏になって困っている。

<質問による補足>
・ご本人の部屋にもテレビはあるが、フロアの共有のテレビに固執している。

・施設にあるものはほとんど自分のものだと仰っている。
施設自体も自分のものだと仰っている。テレビは持ってきたと仰っている。

<委員会メンバーよりコメント>

・施設自体は「自分の家じゃない」と認識されている感じだと思います。

私も以前、老健にいた時に、「これは私のものよ」と、サービスステーションではさみを持っていかれる方がおられましたが、スタッフ皆で

「ご本人がどうしてその“もの”に固執するのか」「それが特定のものなのか」「ご本人が今までの生活で使っていたものなのか」について話し合い、

本人の今までの生活を紐解いていく作業を進めました。

その結果、ご本人が以前、裁縫の仕事をしていたことが分かり、

ご家族にご本人が今まで使っていた裁縫道具をワンセット持って来ていただいて、それをお渡しすると、落ち着いた事例がありました。

どうしてその方がテレビに固執しているのか、そもそもその方は今までどんな生活をしていたのかの紐解きからスタートすると、

なにか解決の糸口が見えてくかもしれません。

・正しいかどうか分かりませんが、まったく同じことがありました。

その方は、自分が皆と共用のものを使っていることや、グループホームに入っていること自体に対して納得できておらず、「私は自分の家があって、自分のものを持っている。

自分一人で生活できる。
皆と一緒に生活しなきゃいけない理由はない」という形でした。

その反面、面倒見がよい方でもあり、「これは私のもの」と仰った際には、正しいかはわかりませんが、「そうなんですよ。壊れちゃったんでお借りしてます」と声掛けをしていました。

そうすると満足されて、「いいよいいよ」と言ってくれるので、その方はその方法で良かったかとは思いますが、

やはり「なぜそういうことを言われているのか」という理由が必要になってくると感じています。

⇒管理者:それも試してみましたが、だめでした。いろいろ試していて、否定もしていないですが、「取られた」というのが止まらない状況です。

・この方は職員の関係者でもあり、その職員も親身になって相談に乗ってくれるので、過去の生活歴を掘り下げていったら見えてくるものがあると思います。

私も「貸してくれてありがとう」と言ったこともありますが、いい時も、通用しない時もありました。

すごく活発で、行動力のある方です。

・生活歴のお話があったので、その方が「今どう感じているのか」を職員と話し合いながら対応していただければと思います。

【高浜将之委員長より総評】

虐待事案については、報告書や話を聞くと、おそらく前兆があったはずです。

あるスタッフからは「ちょっと心配だと思った瞬間があった。グループホームの皆さんは仲が良く、なれ合いの関係になってしまっていた可能性がある」と伺っています。

そういう意味では、少し気になった時にお互いがけん制し合ったり、注意し合う環境が薄くなっていたことに、組織としての課題があったかと思います。

また、当事者がそのご利用者と関わると「イライラする」ということでしたが、そうであれば、そこはチームとして察知せねばならなかったと思います。

虐待をしたくてしている人はいないはずなので、当事者がご利用者と関わっている時の様子はおそらく通常と違っていたでしょうし、「明らかにこの人はストレスが溜まっている」と感じた際に、

当事者にヒヤリングしたり、改めて心を整えるサポートをしたり、夜勤の頻度を考えるたりすることが予防につながる可能性だったと思います。

私も当事者のことを知っていますが、虐待をしたことによってしんどい思いをしたのは、もちろん入居者さんですが、次は加害者だとも思います。

そういう意味では、バーンアウトしきらないような体制を作る必要があると思います。

例えば、夜間帯にしんどくなった時に電話で相談できるところがあればいいですが、そういう高齢者介護向けの通報ダイヤルは世の中にはなさそうなので、

会社としてこうした部分は考えていかなければと感じていますし、二度とグループ内でこういうことが起きないようにしていきたいと思っています。

岡山へのグループホーム異動に関しては、当施設長には行っていただいて本当に良かったです。

ビフォーアフターだけでも刺激になったと思いますし、とはいえ一人で改善するのは大変なので、私や他のメンバーもサポートしながら一つ一つ改善していきたいと思っています。

こうして一つ一つの事業所を改善していく中で、グループ全体が質の高いケアを提供できる体制が取れればと考えています。

グループホームの「物とられ傾向」の件では、プロセスの仕方は間違ってはいけないと思います。
「今、これをどう収めるか、どうやめてもらうか」という順番でいくと、おそらくこの傾向はずっと続くと思われます。

どうしてそうするのかは、相手側の問題だけでなく、スタッフ側が利用者ご本人にどう思われているか、どう関わっているかにも関係しますし、ご本人の生活歴や過去の問題、現在の心情を改めてしっかり考え直すことも重要です。

また、そうしたしんどい行為をされ続けると、介護者側も追い詰められて、冷静にご本人の苦しさを見られなくなることが多くなります。

人間は苦しくなればなるほど人にいちゃもんをつけますし、不安が強いからこそ、そこに至っている。

スタッフもしんどいと思うので、改めてどんな不安なのかを、研修時の「いいひとメソッド」なども改めて見直しながら、

みなで継続的にご本人の不安を取り除く取組みをすることで、スタッフが健康に働ける環境に持っていければと思います。

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