【高齢者地域生活推進委員会】第1回 勉強会レポート 2025年11月20日

【高齢者地域生活推進委員会】第1回 勉強会レポート

テーマ

いわゆる「介護拒否」に効く“信頼関係メソッド”
― 認知症のある人との信頼関係の作り方 ―

開催概要

日時: 2025年11月20日 17:00~18:00
講師: 坂本孝輔氏(認知症専門の介護福祉士)

1. 「介護拒否」の再定義:言葉の捉え方を変える

「介護拒否」は業界用語に近いものであり、相手が「なぜ断るのか」という背景を無視してしまいかねない。

今後は「介護拒否」ではなく、相手の気持ちが一時的に閉じている状態を指す「かたくなさ」という表現を用いることを提唱していきたい。

拒否の本質:例えば入浴拒否の場合、本人はお風呂そのものが嫌いなわけではない。

実際に誘導に成功すれば「気持ちよかった」と喜ぶケースも多い。
つまり、行為への拒否ではなく、その時の「理由(気持ちのかたくなさ)」が障壁となっているのである。

2. 認知症ケアにおけるコミュニケーションの3大要素(生活障害)

認知症の方へのケアがうまくいかない原因として、「ADL(日常生活動作)」や「IADL(手段的日常生活動作)」の障害への対処に終始し、「コミュニケーションの障害」への配慮が欠けていることがある。

コミュニケーションは以下の3つの要素で構成される。

★が今回のメイン

  • 情報(内容)…… 何を伝えるか(言葉、指示、説明)
    記憶障害や判断力の低下により、情報の必要性が理解されにくい。
  • 感情(非言語)…… 表情、声、目線、環境(非言語要素)
    感情や雰囲気は記憶が曖昧でも伝わる。言葉より非言語が優先される。
  • ★ 関係性(基礎)…… 相手は自分にとって誰か(信頼の基盤)
    最重要項目。 関係性が悪いと、どんなに丁寧な説明も届かない。

3. 「病識の低下」と人間関係(親子関係)の悪化 (事例紹介:娘と母の金銭管理トラブル)

介護を拒まれる背景には、認知症の中核症状の一つである「病識(自分の病気や症状を自覚すること)の低下」がある。

・自覚の欠如: 自分の記憶障害や能力の衰えを自覚できないため、間違いを指摘されると「否定された」と感じ、怒りや不信感につながる。(被害妄想)
・解決の鍵: 病識の低下そのものを治すことは医学的に困難だが、「関係性」は改善可能である。相手が「この人は味方だ、安心できる」と思える関係を築くことが、ケアを受け入れてもらうための前提条件となる。

4. 「いい人メソッド」の実践ステップ

信頼関係を構築し、ケアの成功率を高めるための技術が「いい人メソッド」である。
これは本心から「いいひと」になることではなく、一つの「技術」として実践することが推奨される。

  • ステップ1 : 「嫌なひと」だと思われる態度をやめる
  • ステップ2 : 「いいひと」だと思われる態度をとる
  • ステップ3 : 本心から「いいひと」にならなくてもいい
  • ステップ4 : 介護をひとりで抱え込まない ⇒分かち合う

「いい人」を演じ続けるのは精神的負担が大きいため、仲間同士で愚痴を言い合える環境を作る。技術として淡々と「いい人」を実践することが重要である。

5. 信頼構築のための心理的技術

①顔なじみ ②好感度 「何を言うかより、誰が言うか」 が重要

ザイオンス効果(単純接触効果)とセブンヒッツ理論
  • 3回会う:相手に認知される
  • 7回会う:悪い印象を与えなければ、好意を持たれやすい
  • 10回会う:好感度MAX、もしくは諦めるタイミング

※施設等の場合、1日に何度も顔を合わせる機会(感動の再会を演出するなど)を活用し、早期に関係性を構築する。

ユマニチュードと「3分ルール」
Bluetoothの接続:ケア(情報の伝達)の前に、正面から目線を合わせ、何気ない会話で心の接続を確認する。
合意形成の断念:3分間働きかけても合意が得られない場合は、悪い印象を残す前に一度引き下がり、出直すことが重要である。

【結論】

認知症介護における「拒否」への対応は、技術的なケアの前に「関係性の修復」が不可欠である。

相手の物差しで距離感を測り、嫌な印象を与えずに接触回数を重ねる「いいひとメソッド」を職場全体で共有・実践し「現場の負担軽減」と「ケアの質向上の両立」が求められる。

以上

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