【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2025年6月19日
開催概要
開催日:2025年6月19日
開催場所:オンライン
当日のアジェンダ概要
- 前回からの事業所毎の課題や取り組みの進捗等(グループホーム①/グループホーム②)
- 高浜将之委員長の総括
当日の定例レポート
当日の定例ミーティングでは、チームビルディングについて活発なやり取りが展開され、方向性を合わせることの難しいスタッフの対応について、委員会メンバーからさまざまなアドバイスが出されました。
また、「帰りたい」と訴えるクライアントに対して、我々のすべきことを考える中で、ケアの視点から見ることの重要性と実践的な対応策が提示されました。
前回からの事業所毎の課題や取り組みの進捗等
グループホーム①
▸顧客創造活動
<前回からの進捗>
入居希望者が1名いらっしゃり、ご家族が海外在住のためオンラインでの見学を実施していましたが、6月末に帰国するということで、近日中にオフラインでの見学を予定しています。
また、5月中に見学が4件あり、そのうち1件が入居希望につながっています。
6月中には新規クライアントとして迎えられる予定です。
<質問による補足>
・当ホームの“売り”の一つは、何をするにも「ご本人が決める」ということです。
私自身、初めてグループホームに携わった時に、「グループホームは施設ではない」という言葉に衝撃を覚えましたが、今も多くのグループホームで風呂やレクの時間が決められている、いわゆる“施設化”が見受けられます。
当ホームは施設ではなく、自宅の延長線上にあると考えており、風呂やレクの時間を敢えて決めず、何をするかはご本人の判断に委ね、「尊厳」を大切にするのを強みとしています。
また閑静な住宅街にあり、広めの中庭もあるので、今後はそこでお茶をすることなどもアピールポイントとして挙げています。
ただ現在は、草と木が生い茂っていて利用者が使用できる場状況ではありません。
・見学から入居につながらなかった場合の“追い連絡”はしっかり行っています。
今回4件のうち1件は「金銭的に厳しい」など、ご家族の都合で断念されていますが、他にもいくつかグループホームを見学した中で当ホームが一番よいと思われたとのことです。
もう1件は検討中という段階です。
ご本人は現在一人暮らしで、仕事や車の運転なども考えているアクティブな方なので、入居への一歩が踏み出せない状況と思われます。
・以前までの見学の反省を踏まえて、モデルルームを作りました。
そのことで見学者の当ホームに対する印象が非常に変わったことを実感しています。
モデルルームに入った途端にご家族の表情が変化したり、質問が増えたりしています。
・基本的に、見学の際の料金等のご説明は入居者の生活空間では行わず、別室でご家族と直接話し合いをしています。
疑問点などがある場合はその場で質疑応答し、その後、グループホーム内を見学して頂いています。
モデルルームができるまでは、部屋を見たいというご希望があれば、入居者の確認・了承を得た上で、部屋の中を見て頂いていました。
<参加者からのコメント>
・当施設では、見学時に写真を使って説明しています。
食事や地域ネコ、おやつなどの“ばえる”写真を使っていますが、その時にどのくらい興味があるかの探りを入れられますし、分かりやすい説明になると思います。
▸チームビルド
<前回からの進捗>
理念の浸透につき、全員が同じ方向を向ける体制を徐々に整えていますが、現状では全員が一斉に動けておらず、道を外れてしまっている方も一部見られます。
その中で、“頑張っている人”と、“頑張れていない人”というような差が出てしまい、「私は頑張ってるのに、なんであの人は…」という言葉がアテンダントから出始めている状況です。
グループホーム全体としての士気も下がり、「私は頑張ってるのに、あの人は私と同じくらいの給料をもらってる」といった不満にもつながっており、これ以上、士気が下がるなどの影響が出ないように努めます。
<質問による補足>
・「頑張っていない」という表現についてですが、本人に直接確認していないものの、主観としては「さぼりたい」という本人の意志が見えたり、「したくない」というところだと感じます。
今回、“頑張っていない人”として取り上げたAさんは、もともと調理専属のスタッフです。
当ホームでは現在、徐々に調理スタッフの介護職化を進めていますが、Aさんには「介護をするより調理をしていたい」という印象が見受けられます。
まずは見守りから始め、その後食事介助というように、少しずつ進んでいましたが、ここ数日、なかなか現場に出てこずキッチンに入ったままであったり、
出てきても利用者と話さずアテンダント同士で話す状況が見えたり、手伝ってほしい時に気付いたらその場におらず、いつの間にか休憩に入っているところなどがあります。
介護の業務がしたくないのか、きついのかは分かりません。
介護に対して「思っていたのと違う」というのがあったり、悩んでいる部分がある可能性はゼロではないとは思います。
・土屋に事業譲渡した後も、Aさんは流れのまま当ホームに残り、以前と同じようなことができるという期待もあったと思います。
実は先日、Aさんがご飯を作りすぎて余ってしまったのですが、そのような時は「持ち帰りは厳禁」にして、スタッフや入居者さんがホーム内で食べるというルールを定めました。
けれどその後、Aさんが持ち帰りをしていたことが発覚しました。
本人ともしっかり話をして当時は反省の色も見えましたが、それ以降に他のアテンダントから「あの人ずるいよね」という話が出ていたので、それが発覚してやる気がなくなっている可能性が考えられます。
<前管理者からの補足>
土屋にグループインするまでの調理スタッフの働き方として、労働時間のうち調理以外の間は、多くの方が調理場の横に座ってずっとスマホをしていたと聞いています。
モラルハザードが前提としてあった状態で長年働いていたというのがバックグラウンドにあると思います。
ただ、現在はきちんと働く方向に変えていっています。
<参加者からのコメント>
・認知症の方への対応で答えが出ないことがあったり、スキルのない人が現場に入った時に「優しくしてあげよう」と思って接しても辛い反応で返ってきたり、
「ありがとう」と言ってくれなかたり、失敗したことを自分のせいにされたりといったような、“想定していないコミュニケーションの壊れ方”が起こった時に、
「なんでこんなに感謝されないことをやり続けなきゃいけないんだろう」と、価値観の相違で壁にぶつかる場合があります。
介護の仕事に就こうと思う人は、そこをいとも簡単に乗り越えられたり、そこをクリアするつもりの方が多いですが、
Aさんは調理スタッフということで、介護の仕事に対する期待感や認知症そのものへの知識などもなく、実際と自分の思いなどの差が埋まっていないかもしれないと感じました。
・Aさんにとって、だんだん居づらい職場になっていると思いますし、どんどん居づらくすればいいと思います。
管理者の目指しているグループホームらしさを突き詰めていけば、きっと居づらくなると思いますが、居づらくなっていいと思うんです。
説明して導いて寄り添っても付いてこられない方には居づらく感じてもらって、「もっと働きたい」という人がのびのびと働ける環境を作っていく方がいいと思いますので、現在のやり方でいいと感じます。
Aさんの姿勢に対して「おかしい」と思う職員が大多数いるということは、きっとその方法が正しいですし、時間はかかるかもしれませんが、今は正常化している途中であることがよく分かりました。
現在は雰囲気は良くないかもしれませんが、「Aさんの姿勢は良くない」という価値観で、チームで一体感を持てればいいと思います。
今までの働き方と現在の働き方が180度変わっている状況ではありますが、それでも元調理専属スタッフが3名いる中で、そのうち2名はしっかりケアに参加しており、自主的に動いてくれています。
私の個人的な意見としては、「仕事だからやってください」「仕事だから当たり前」と思ってはいますが。
ただ、以前から「Aさんをどうにかするのではなく、付いてきてくれる方たちで周りから環境を固めると、その人が居づらくなる」と、同様のご意見を頂いていました。
それが悪いこととは思ってはいないのですが、私の中で「そう思ってしまっていいのかな」と一歩踏み出せない気持ちがありました。
けれど今後は、自信をもって今の方針を継続していきたいと思います。
グループホーム②
<前回の課題>
74歳男性、アルツハイマー病(介護度1)。
週3回、各4時間ほど就労支援で作業所に通っており、今年に入って薬の調整もしています。
食事の前後などスタッフが忙しい時間帯に帰宅願望が出現して不穏な状態となり、その際には暴力も見られます。
<前回からの進捗>
ご本人は、レクリエーションや食事などが終わった隙間時間に「帰りたい」となります。
当委員会から、「目配せや声掛け、通りがかりにじゃんけんなどをしてみてはどうか」、「ミーティングで毎日振り返りをしてみたらどうか」というアドバイスをいただいたので、毎日スタッフが疲れるくらい目配せや手を振ったりしていたのですが、ここ数日は目も合わせてくれなくなってしまいました。
1時間くらい話さないと落ち着かず、落ち着いても今度は鬱のような状態になって、開いている部屋のクローゼットに閉じこもって出てこられません。
一旦「帰りたい」と思うと、それが治まらず、スタッフが叩かれることもあり、何を話しても通じない、言葉も理解できない状態になっています。
往診(メンタルクリニック)の先生に相談したところ、認知症の進行が早いとのことで、「今がピークと思ってください。帰りたいという気持ちも段々なくなってきます」と言われています。
<質問による補足>
・スタッフの一人から「薬を飲んでもらったら」という声が上がりましたが、他のスタッフは「毎日のように叩かれていた以前と比べるとましなので、薬は使わない方がいいのでは」という考えです。
多数のスタッフが、薬でなく自分たちで何とかしたいと思っていて、それが私としては嬉しいことではありました。
医師からも「ここは病院でなくグループホームだし、薬を使うことによってリスクも出てくるので今はやめた方がいいんじゃないか」とのアドバイスをいただいています。
・今年に入って失禁も増えて、夜中トイレに行かれずに毎日のようにベッド上で失禁されています。
そういうところもわからなくなってきたと思っています。
ここ数日は、人との関わりを避けたいように見えます。
一人になりたかったのかもしれません。
・笑ったりなど、楽しそうにする様子はありますが、食事やレクなど、何かが終わるタイミングで、「帰ります」と出て行こうとされます。
そこから違う話にもっていくと、だんだん不穏になって暴力的になる感じです。
1時間もそれが続けば、「出られない」と思ってリュックを床に強く叩きつけたり、2階の窓からタブレットなどを投げたりもします。
・不穏の時はスタッフも「一緒に外出するのは怖い」と感じています。
そうでない時は大丈夫ですが、スタッフも叩かれたりしている経験もあるので、どうなるか分からない怖さがあります。
・穏やかな時は買い物に一緒に行ったり、他の入居者と庭に出たりしています。
ただ、それも忘れてしまうので、グループホームに戻るとすぐに家に帰ろうとされます。
それに時間を取られてしまい、他の入居者さんに接触できる時間が減っている状況です。
<参加者からのコメント・アドバイス>
・関わりを増やしたことで、ご本人にとっては苦手な刺激が増えた可能性があるかもしれません。
ご本人にとって不快な刺激であったなら、長く続けるのは適切でないとは思います。
・出て行くのは止められそうもないので、ご本人の行動や気持ちの改善を目指してしまうと、職員さんの期待感が裏切られると思います。
難しいと思いますが、「出て行くことを止める」ことに気持ちをもっていくのではなく、ご本人を「1回でも多く笑わす」「笑って楽しくさせる一瞬一瞬を1秒でも多く作る」ことに職員のモチベーションをもっていくのがよいと思います。
・私も答えが出ない経験は何度もしています。
どんな策を講じても、帰りたい気持ちが出てしまわれることもありました。
以前、そうした方がいらして、将棋が好きなことが分かったので一緒に将棋を指していたことがあります。
その間は笑顔で楽しく喋っていて「成功した」と思いましたが、将棋が終わると「さ、帰ろうかな」となり、逆に将棋がトリガーのようになったので止めたほうがいいと思ったことがあります。
けれど、上司から「帰るというのはしょうがない。でも将棋をしている間は本人が喜んで、いつもと違う表情している。それが大事だと思うよ」と言われました。
その一つの笑顔のためにチームで関わるというのが、自分たちの気持ちとしても必要だと思うので、大変ですが、笑顔が成果と思うことが大事だと感じます。
・病院で働いていた時に、認知症で同じように「帰りたい」と言われる方がいましたが、病院なので「ダメだよ」と言わざるを得ないところがありました。
けれど、そう言えば言うほどヒートアップしていくことが目に見えていたので、何かいい方法があればと当時悩んでいました。
今回の方は、認知症が進んできて言葉の理解が難しくなっているのかもしれません。
帰るのはダメだということ自体を、違うふうに捉えているとも感じますので、写真などを使って話を分かりやすく話を進めるのもいいと思います。
関わられすぎると嫌になってくるのであれば、距離を置いてみるのも一つだと思います。
・70代ということで、まだご本人に体力もあると思うので、対応するスタッフがかなりしんどくなってしまうと思います。
とはいえ、出て行かれると外で何があるか分からない怖さもあります。
私のいるグループホームでは最近まで鍵はかけないようにしていましたが、出て行かれた先で何かがあると大変なので、今は鍵をかけています。
ただ、鍵がかかっていない所にいることの安心感も入居者さんにはあるとは感じています。
【高浜将之委員長による総括】
帰ることを抑えようとする行為は職員の要望であって、我々がケアをする目的は、「どうその人に感じてもらえるか」、ひきつっている顔だったとしたら、少しでも柔らかい顔になるように、「どう笑顔になるようにするか」だと思います。
とはいえ大変なので、帰るのを抑えたい気持ちはわかりますが、それはオペレーションとして行い、ケアの目的としては「どう笑顔になるようにするか」に置くのがいいと思います。
アテンダントの皆さんが「薬ではなく、どうにかみんなで頑張ろう」と言っているのも、それを共通認識として持ってもらえているからだと思います。
ただ、大変な時は瞬間瞬間でその認識が崩れかねないところがあるので、再度認識を共有できる体制を作っていただきたいと思いました。
また、「鍵をかけない安心感」は確かにあります。
以前の事例で、他事業所で2階から飛び降りた人が私のいたグループホームに入居されたことがありましたが、飛び降りた理由が「鍵がかかっていたから」でした。
当グループホームは鍵を開けっぱなしにしていましたが、出口があるとやっぱり出口から出ようとされるので、それがある種のリスクマネジメントにもなっていると当時は思っていた記憶があり、そういった部分も大切な視点だと思います。
あと、「刺激が少ない関わり」についてですが、コミュニケーションが増えたことが負担になった可能性もあるので関わりを減らしてみるのも一つだと思っています。
本日もいろいろな事例に対してディスカッションができ、有意義な時間だったと思います。















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