【認知症ケア事例】適切な判断と思いに寄り添うことで要介護4から要介護2へ

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グループホームのがわ

認知症の方をケアしていると「どのように対応したら良いのか」と悩むことはないでしょうか。
ケアをする側の的確な判断と、認知症の方の思いに寄り添った介入をすることで、ADLの改善や心の落ち着きに繋がります。

今回は、グループホームで要介護度が4から2へ改善したOさんの事例を紹介します。
グループホームでケアをしている看護師や介護士、グループホームの入居を検討されている方やそのご家族の方はぜひ最後までお読みください。

【事例】

80代 女性
当時の要介護度4
ADL:車椅子を利用し生活全般に介助が必要な状態

グループホームのがわを訪れた経緯

ご家族に連れられてグループホームのがわへ見学に来た当時のOさんは、車椅子に座っており視線は合わず、話しかけても反応が鈍い状態でした。グループホームのがわに入居する前は、他事業所の介護サービスを利用されてました。

ご家族の話では、1年ほど前は自分で歩いてどこにでも出かけることができましたが、事業者側から「帰宅欲求が強く対応しきれないので薬を使いたい」と訴えがあり、内服を始めたところ現在の状態になってしまったそうです。

ご家族はこのような状態になるとは思いもしなかったので、元気な姿を取り戻して欲しいと願い、グループホームのがわを訪れました。

認知症の影響ではなく薬の影響

Oさんの第一印象は、本人の返事は確かに遅いですが、質問に対しては正確に答えることができていると強く感じました。
認知症の進行ではなく『薬の影響』ではないかと思いました。

入居が決まる前に主治医と医療面で相談する機会があり、主治医も私も『薬を飲み過ぎている』ことで意見が一致。
ご家族も減薬に同意してくださり、入居後すぐに減薬することとなりました。

入居直後の状態

入居直後のOさんは、足元がフラフラしており立っているのがやっとの状態でした。
トイレに移動する意欲がなく身体を動かすことも嫌なため、夜はベッドの上でそのまま排泄。

食事は自力で食べきれないので、介助する日もありました。

先を見据えた職員の介入方法

薬を減らし始めたら徐々に意欲が出てくるはずと考え、自分で移動したい意欲が出てきた時のために、身体を動かす力はできるだけ残して備える必要がありました。
そのために以下の内容を繰り返しました。

  1. なるべく立ってトイレに移動し、座って用を足す
  2. オムツではなくパンツタイプ(リハビリパンツ)を使用する
  3. 本人が食べたいと思える食事内容を続ける
  4. 話しかけ質問し、時間をかけて言葉を発するまで待つ

減薬1ヶ月後から大きな変化

減薬してから1ヶ月程で、Oさんはベッドから自力で起きようとする行動がみられるようになりました。
しかしながら、掴まって立つことができない程に脚の筋力が低下していたので、ベッドから立ち上がろうとするとすぐさま転んでしまう状況でした。Oさんは脚の筋力の弱さとは逆に、動きたい気持ちが強く前向きでした。

転倒リスクの課題

Oさんに意欲が出てきたので、歩く力を取り戻せれば自分でトイレに行くことができ、移動を繰り返すことで生活全般で自立した生活を目指せます。しかし転倒により骨折や頭の怪我をすると、自立した生活から遠のきます。
そこで転倒リスクの対策をしました。

転倒リスク対策➀

重さが加わると音がでるセンサーを足元に設置してみましたが、足が乗った(センサーが鳴った)直後に職員が駆けつけても間に合いません。

転倒リスク対策➁

部屋の前で扉を少し開けて見守ろうとしましたが、Oさんから断られてしまいました。

転倒リスク対策➂

布団の下に敷く(起き上がるとセンサーが反応し音がでる)タイプの機器も考えてみましたが、それなりの費用がかかってしまいます。
他に良い方法がないかと思案し続け、ひとつの方法を見つけました。

赤外線センサーでご本人が布団から体を起こした瞬間を捉える

赤外線センサーの角度の調整を何度も重ねました。寝返りで何度もセンサーが鳴ると職員が急いで駆けつけなくなってしまったり、かなりの心理的ストレスを感じたりしてしまいます。
赤外線センサーの角度はベッドで寝ている時の掛布団の少し上あたり、寝返りでは反応しない丁度いい高さに調整しました。

職員が間に合わなかった場合

センサー反応後、職員が間に合わなかった場合の予防策として、ベッドの下にマットレスを敷き、Oさんが転倒しても大きなケガに至らないように配慮しました。

安全にトイレへ移動できることが増えたOさん

日中も夜間もセンサーが鳴ったら職員が駆けつけることで、Oさんは身体を支えられながら歩いてトイレに行けるようになりました。
そして全身の筋力が戻るにつれて、食事も自力で終えられるようになりました。
この期間のMVPはなんといっても夜勤職員です。途方もない回数のセンサーの反応に駆けつけて、諦めずにOさんを支え続けてくれました。

意欲と筋力を取り戻した新たな課題

気持ちと筋力の両方を取り戻したOさんは「お風呂に入らない」「家に帰りたい」という意思表示をするようになりました。
Oさんが気持ちを表現することが難しい(嫌という表現ができなかった)時は、介助を受けて機械浴やシャワーを浴びていました。そして家に帰りたくても言葉が出てこなかったり、行動に移すことができなかったりしたのです。
自分の脚で歩き、気持ちをしっかり表現できるようになったOさんは「私はお風呂に入らない」「家に帰りたい」と私たちに意思を伝えられるようになったのです。

強制的な入浴介助は禁止、日中は出入口を施錠しない

グループホームのがわでは、強制的な入浴介助は禁止しています。必ずご本人の同意を得て入浴してもらうのです。
またコロナ禍以前は、夜間や緊急時を除きいつでも外に出られるように、日中は出入口を施錠していませんでした。

Oさんの気持ちに寄り添った介入

Oさんが納得する形はどんなものなのか、ご本人から話を聞いたり、ご家族に聞いてみたりしました。
ある日Oさんをお風呂に誘ってみると「自分の家で入るからここでは入らない」と教えてくれました。
Oさんはグループホームのがわで入浴する必要性を感じないから、入浴しなかったのです。

ご自宅へ一緒に向かう

すぐにご家族へ連絡し「今からOさんと家に帰っていいでしょうか?」とたずねると、快くOKを頂き、支えられながら歩いて家まで向かいました。
家に到着すると居間に移り、ソファでゴロゴロしだすOさん。そして私は「Oさん、お風呂はどうしますか?」と聞いてみました。
Oさんは「入る」とだけ答えて、家のお風呂へ直行します。
準備が整っていたらそのままご本人に入ってもらう予定でしたが、あまりに早く家へ着いてしまったのでお風呂の準備が整っておらず、Oさんは「入れないじゃない!」と怒ってしまいました。

グループホームで入浴

怒ったOさんに私から「良かったら、いま暮らしているところのお風呂を使ってください」と提案してみました。
すると再び「入る」とだけ答えてくれたOさんと一緒にのがわへ戻り、お風呂場へ案内するとスムーズに入浴を終えることができました。

要介護度4から要介護度2へ

その後はリハビリも兼ねてOさんと一緒に自宅へ歩いて帰り、事業所に戻ってきたらお風呂に誘う日課が生まれ、Oさんはどんどん元気を取り戻していました。
そしてOさんの要介護度は、入居当時の要介護4から要介護2へ改善。

「いつでも外へ自由に出られる」「居心地は悪くはない」そんな環境で暮らすうちに、帰りたくてどうにもならない日は少なくなっていきました。
入居から数年経った現在でも、外へ散歩に出かけたり、他の方と一緒に調理をしたり、ご家族のお店に出かけたりして過ごしています。

認知症ケアは的確なアセスメントと気持ちをくみ取ることが重要

認知症の方のケアは、的確なアセスメントと気持ちをくみ取ったアプローチが大切です。
グループホームは認知症の方が入居しており、ケアをする職員の高い知識とスキルが求められます。

これからも、株式会社土屋グループでは「一人ひとりの想い」に寄り添っていきたいと思います。

 

 

※画像は全てイメージです。

 

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