
【グリーンサステナブル委員会】知らないうちに服が地球に与える影響 ~ファッションに関するアンケート結果報告~
はじめに
私たちの生活に「服」は欠かせません。
身体を保護するのみならず、新しい服を買ったときの高揚感、季節に合わせて選ぶ楽しみは、誰にとっても身近なものです。
けれど、その「身近さ」の裏で、衣服産業が地球環境や社会に大きな負荷を与えていることは、意外と知られていません。
今回、土屋グループ内で「衣服と環境」に関するアンケートを実施し、344人の方から回答をいただきました。
アンケートでは、以下の質問を行いました。
①着なくなった服をどうしているか
②服を選ぶ際に最も重視している基準は何か
③どのようなメーカーやブランドを選んでいるか
④冬のアウターをどのくらいの周期で買い替えているか
アンケートの結果、①「着なくなった服をどうしているか」については「捨てる」と回答された方が約50%と最も多く、②「服を選ぶ際に重視していること」では、トップが「デザイン」の約42%、「価格」が第3位の約12%となりました。
また、③「メーカーやブランド」に関しては、「こだわりなし」(約59%)についで、「ファストファッション」が約27%となりました。
④「冬のアウターの買い替え」では約56%が「2~5年」と回答しています。
総じて、消費サイクルが速い傾向が見て取れますが、私たちのこうした日常的な選択は、実は世界の環境や労働の現場とつながっています。
1. 捨てられる服の行方
アンケートでは「着なくなった服を捨てる」と答えた人が半数を占めました。
日本では、家庭ごみとして年間約50万トン(1日あたり大型トラック130台分ほど)の衣類が廃棄されており、その多くが焼却や埋め立てに回されています。
服は化学繊維や染料を含むため、燃やすとCO₂を排出し、埋め立てると土壌汚染につながる可能性もあります。
つまり、クローゼットの整理で袋に入れた1枚のシャツが、地球のどこかで環境負荷として残り続けるのです。
2. 「安さ」と「便利さ」の裏側
アンケートでは「価格の安さ」「デザイン性」を重視して購入するという回答が目立ちました。
これは現代の「ファストファッション」の特徴でもあります。
手軽に流行を取り入れられる一方で、その背景には以下の課題があります。
- 短期間での大量生産・大量消費 → 資源や水を膨大に使用
- 発展途上国での低賃金労働 → 児童労働や過酷な労働環境の温床
- 安価な合成繊維の普及 → 洗濯のたびにマイクロプラスチックが海へ
消費者である私たちが「便利だから」「安いから」と選んだ1枚の服が、結果的に地球や他国の人々の生活に負担をかけている現状が見て取れます。
ただ、地球にやさしい素材やフェアトレードに配慮した製品が、高価格であるのは事実です。
「良いものほど価格が高く、安いものほど環境負荷が高い」というジレンマは生活者として悩ましい所です。
3. リサイクルや寄付の“光と影”
アンケートの中には、着なくなった服について、「リサイクルに出す」(約21%)「寄付する」(約1%)といった前向きな回答も多く見られました。
これ自体は、とても意識の高い行動ですが、現実にはすべてが良い形で循環しているわけではありません。
というのも、日本や欧米からリサイクル・寄付目的で集められた古着の一部は、発展途上国へと輸出されますが、その中で、あまりに大量で処理しきれず、売れ残った服が不法投棄されたり、野焼きされたりするケースが報告されています。
支援のつもりが、結果として現地の環境汚染や健康被害を引き起こしてしまうという“逆効果”が生じている事実は、あまり知られていません。
「リサイクル=必ずしも善ではない」という複雑な現実も、私たちが知っておくべき大切な視点です。
4. 長く着るという選択
一方で、冬のアウターを「10年以上着ている」(約5%)と回答した人や、着なくなった服を「おさがりなどで人に譲る」(1~2%)「古着屋やネットで売る」(約23%)と回答した人もいました。
これらはとても持続可能な行動です。
1枚の服を長く着ることで、製造に必要な資源やエネルギーの消費を抑えることができます。
また、リユースは廃棄物を減らし、服が“ごみ化”するリスクを大幅に下げます。
「お気に入りを長く大切に着る」「誰かに譲る」「売って次の人に活かす」。
こうした小さな選択が、衣服の寿命を延ばし、地球への負荷を減らします。
5. 私たちにできること
委員会として、今回のアンケートから改めて見えたことは「私たちの選択は、決して小さくない」という事実です。
衣服産業を否定するのではなく、生活者としてできる工夫を共有したいと思います。
- 長く着られる服を選ぶ:素材や縫製を意識するだけで寿命が延びます
- 必要以上に買わない:セールや流行に流されず「本当に必要か」を考える
- リユース・リサイクルは“質”を意識する:現地でごみにならないよう、状態が良いものを寄付・売却する
- 情報を知る:ブランドのサステナブルな取り組みを調べ、応援する
おわりに
服を選ぶとき、私たちは単に「自分の好み」だけを選んでいるのではありません。
その背後には、水や土壌、大気、そして世界中で働く人々がいます。
また、「捨てる」「リサイクルに出す」といった行動も、世界のどこかに新たな負荷を生み出している可能性があるのです。
同時に、自分たちが消費している物品の生産過程やバックグラウンドを知ることが重要ということにも気づかされます。
「良いものは高い」「手軽なものは環境負荷が大きい」というジレンマを認識することこそが、持続可能な社会を考えるうえでのスタートとなるのではないでしょうか。
今回のアンケート結果報告を、「服をどう買い、どう手放すか」を考えていただくきっかけにしていただければありがたいです。
一人ひとりの小さな選択、“気づき”が、未来の社会や環境を守る大きな一歩となります。














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