第三期ハラスメント・虐待防止委員会 【事例検討会レポート3】

事例検討会レポート 3

日 時 : 2022年7月26日
出席者 : 51名(対象:役職者以上)
テーマ : 「身体拘束事案」

身体拘束について

検討会ではまず、身体拘束についての説明がありました。

身体拘束等の適正化に係る取組みは令和3年4月から、当社のメイン事業である重度訪問介護を含む主要な事業で義務化されているとのこと。

具体的に取組みが必要な内容は以下の4つ。

①身体拘束適正化検討委員会の開催

定期的(年1回以上)に開催し,検討結果を従業者に対し,周知徹底を図ること

②指針の整備

事業所における身体拘束等の適正化のための指針を整備すること

③定期的な研修の実施

従業者に対し,指針に基づいた研修プログラムを作成し,定期的(年1回以上)に研修を実施すること

④身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録すること

なお、①から④を満たしていない場合には令和5年4月から介護報酬が1日5単位減算になると補足がありました。

続いて、身体拘束をやむを得ず行う際の3要件とその手続きについての解説がありました。

(1)身体拘束をやむを得ず行う際の3要件

切迫性

利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと

非代替性

身体拘束や行動制限を行う以外に代替する方法がないこと

一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的であること

(2)(以降必要な手続き)組織として慎重に検討、決定し個別支援計画に記載

どのような理由で、どのような身体拘束を、いつするのか

(3)本人・家族に丁寧な説明をして、同意を得る

(4)必要な事項の記録

身体拘束を行ったときは、支援記録などにそのつど記録

                          
※上記(1)~(4)を満たしてはじめて、正当性が認められる。

事例検討

当検討会の目玉である「判例から学ぶ事例検討会」。 第5回目は、ホームケア土屋高崎のオフィスマネージャー・岡本朱一およびホームケア土屋福岡のオフィスマネージャー・田中雄二により、身体拘束の具体的事例を元に研修が行われました

研修内容

事例:病院でミトン装着、両手をベッドに縛った事例(2003年)

内容:外科的治療および内科的治療の必要な高齢女性のAが、入院しているB病院にて抑制具であるミトンを手に着用させられ、ベッドの柵にくくりつけられたことに対して、B病院のした身体拘束は違法として損害賠償の訴えを起こしたというもの。

判決:高裁においてはAの訴えを認めこの身体拘束は違法とされた。しかしながら、最高裁では身体拘束の3要件が満たされていて、診療契約上の義務違反、不法行為法上の違反があったとはいえないとして、身体拘束の正当性が認められた。

研修では、内容・判決理由などの詳細な説明がなされ、以下の2点がまとめとされました。

① 記録の重要性

高裁では、切迫性・非代替性が無いと判断されたが、最高裁では切迫性・非代替性があると認められ、一時性についても要件を満たしていると判断された。最高裁での判断に用いられた過去の病院での転倒歴、該当病院での転倒歴、せん妄状態の対応記録が切迫性・非代替性があると認められる為の重要な鍵となった。よって、拘束に至る判断の材料となる記録はしっかり残すことが大切。

② 3要件を満たすことの重要性

裁判でも、身体拘束の正当性を判断するうえで、この3要件が満たされているかどうかが問われたようなので、日々の支援での困りごと、対応困難事案については、日頃から報告・対応策を検討することが大事。

この発表を受け、監修の大胡田弁護士からは以下のコメントがありました。

大胡田弁護士

「切迫性が本判例のような事案においても認められることに驚きました。切迫性とは、今現在ナイフを体につきつけている等、生命の危機がある時だと思っています。

また、体を縛るだけではなく、クライアントの部屋にカギをかけてしまうことも身体拘束にあたる可能性が高いです。

人権とは、優しさや思いやりが無かったとしても人が人として生きていける権利のことで、他人が絶対に侵してはいけないものです。憲法にも自由を制約してはいけないということが保証されています。」

出席者とのセッション

質問者

今回の事例では高裁と最高裁で判決が全く違うものになることもあるということを学びましたが、それゆえ実際の介護現場で何が身体拘束にあたるかの判断を職員が下せるのかと疑問になりました。

大胡田弁護士

今回は同じ事実をみても三者三様の判断があったわけなのでこれはとても難しいです。なので、身体拘束については、基本的にはやらない方がいいし、もし迷ったとしてもやらない方がいいと思います。そして、どうしてもの場合は医師に判断してもらうようにして事業所では判断しない方がいいでしょう。

委員長

当社では法律関係では大胡田弁護士が顧問として就任してくださっていて、医師の雪下先生も顧問です。身体拘束にあたるかもしれないという事案を見聞きしたときは、事業所の中で判断せず、関係者と協議したり、上にあげていただいて会社としての判断をしていきたいです。


大胡田弁護士

クライアントの症状の波によっては、クライアントがアテンダントの言うことを聞いてくれないといった場合もあるかと思いますが、そのようなときはどのように対応していますか。

ホームケア土屋静岡オフィスマネージャー・竹内利文

重度の知的障害のあるクライアントがいて、アテンダントが支援中にダメと言うとクライアントが不穏になって感情が大きく出てしまうが、ダメと言わないといけないときもあります。支援において、クライアントやアテンダントに危険が及ぶかもしれないと想像できたときは、身体拘束について考えたこともありますがそれはやはり出来ないので悩むことも多いです。クライアントに寄り添うことで納得するようにしています。


ホームケア土屋三重オフィスマネージャー・石田茂雄

以前、クライアントがリハビリパンツからパットを引き出したりしていたのでつなぎ服を着ていただいたりしていたこともあります。最近は落ち着いたのでつなぎ服は来ていないが、身体拘束にあたるか否かのボーダーラインがわからないです。

大胡田弁護士

「寄り添う」がひとつのキーワードになると思います。クライアントの問題行動の裏には理由があることが多いので、利用者と支援者は対立したり追いかけたりするのではなく、横に座って同じ景色を眺めるようにして、同じ方向を見るという姿勢が大切なように思います。

最後に

社内でのハラスメント・虐待(身体拘束)についての相談窓口の紹介があり、3月から5か月連続で開催された第三期ハラスメント・虐待防止委員会の事例検討会は終了となりました。

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