【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年4月18日

【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年4月18日

開催概要

開催日時:2024年4月18日
開催場所:オンライン

本日のアジェンダ概要

  1.  プチ講義:介護保険の基本的な考え方
  2.  ディスカッションテーマ:自分の事業所らしさって?
  3.  各事業所の誇らしい取り組みと事業所の課題の発表

本日の定例レポート

本日の定例ミーティングでは、委員長・高浜常務より「介護保険の基本的な考え方」についての講義が行われ、原点に立ち返って介護保険の理念、目指すべき目標が共有されました。

引き続き、「自分の事業所らしさ」や「誇らしい取り組みと事業所の課題」についてのディスカッションが行われ、理念に基づく取り組みと共に、各事業所の課題が多く挙げられたことが評価されました。

<プチ講義:介護保険の基本的な考え方>

高浜将之:
介護職は、介護保険という法律の下で仕事をしているので、基本的には「介護保険の考え方や理念」に基づいて仕事をしなければいけません。ただ、「介護保険の基本的な考え方や目的」を問うても、それに答えられる人は意外に少ないのが実状です。

介護はご家族さんも行いますが、私たちケアワーカーは介護報酬の中からお金をいただいて仕事として行います。そういう意味では、ご家族さんはご本人の要望通りのことをしてもよいのですが、ケアワーカーはそれだけではいけないわけです。

介護保険という法律の元、自己負担(1~3割)と保険料&税金(7~9割)で報酬をいただいている以上、「介護保険の基本的な考え方や目的」に沿って仕事をしなければいけません。当然ながら、介護保険を理解している必要があります。

介護保険の理念には二つあります。「尊厳の保持」と「自立支援」です。これは“ケアワーカーとして大切なこと”ではありません。私たちは介護保険に基づいて、この理念をクライアントさんたちに提供するのが仕事であることを改めて認識いただきたいと思っています。

<ポイント>

介護職は…
「尊厳の保持」と「自立支援」という基本原理に基づいて支援する必要がある!

一つ目の、介護における尊厳の保持とは、「自己決定」と「プライバシー」、そして「人格尊重」だと考えます。

介護における「自己決定」は、食べるもの・着るもの、お風呂に入る、外に行くなどをご自身で決めることで、「プライバシー」は介助者が勝手に部屋に入らない、同性介助などです。

そして「人格尊重」は、子ども扱いしないということです。認知症の方にはかわいらしい行動・言動がある人もいますが、そういう様子が見られたとしても、あくまで年を重ねた一人の人間として尊重しなければいけない。だから安易に“ちゃん付け”するのは良くないということです。

二つ目の自立支援は、本人の「有する能力に応じた、自立した日常生活を営むこと」です。介護職はクライアントが自分の持っている力を発揮しながら生活することを支援しなければいけません。これが私たちの仕事の前提であるということは改めて確認していただきたいと思います。

<ポイント>

介護における尊厳の保持とは、「自己決定」と「プライバシー」、「人格尊重」
自立支援は「有する能力に応じた、自立した日常生活を営むこと」

その中で、介護現場で起こりやすい誤った自立支援として、過度に自立を求めすぎて、うながしてしまうことがあります。

例えば、食堂まで歩けるクライアントが「今日は歩けない」などと言うと、ケアワーカーは「あの人、甘えてる」「依存してる」と、どんどん突き放していってしまい、過度に本人の力を使わせようとする場面がよく見られます。

クライアントのことを思って、そのようにしている場合もあるとは思いますが、多くの場合では、ケアワーカー自身が自分の考え方に固執しているのが原因だと感じています。

いわゆる「自立と依存」は対極的に捉えられがちですが、自立支援というのは本来、依存させないということではないと思います。自立を促しながらも利用者を寂しくさせない、孤独にしないことが大切だと考えます。

ただ、これでは自立支援の意味が曖昧で、どこからどこまでが自立支援かが分かりにくいですが、「自立支援と言うのは自主性の発揮(回復)によって人間らしい生活の需要を手に入れること」という日本自立支援学会の文言が適切だと思います。

つまり、“自発的”に何かをすることが自立支援につながることであり、何かをさせることが自立につながることではない。我々の仕事は利用者さんを“やる気”にさせることであって、その結果として、本人に自分の力を使ってもらえればよいということです。

私たちケアワーカーは、介護保険の理念に基づいて「尊厳の保持」と「自立支援」を行っていることを、今後も定期的に見つめ返せればと思っています。

<ポイント>

介護において自立と依存は対極ではない!
自立を促しながらも、利用者を「孤独にしない」ことが大切。自立支援とは、自主(発)性を重視した支援。

<ディスカッションテーマ:自分の事業所らしさって?>


○地域密着型通所介護(他事業所)

当社は創業して14年が経ち、段々と“らしさ”が出てきたと思っています。当社では各事業所に管理者・リーダーがいて、その下に「ファシリテーター」というキャリアがいます。「ファシリテーター」の役割は、会社や事業所の理念・方針をしっかり理解して、職員間に共有することです。

ですから、事業所の理念や方針は、日々の業務やミーティング、利用者さんのケアを決める中でも端々に口に出てくるもので、それを上手くスタッフに浸透させていく役割があるところが、当社の“らしさ”だと思います。

実は、「ファシリテーター」の体制を作った理由に、当社の事業所が2017年に離職率が50%になるという、大量離職があったことが挙げられます。

当時、介護保険の理念通りに働いてもらうために職員をコントロールしようとして、ルールやタイムテーブルなどをがちがちに決めていたんです。そうすると、皆それを守ることを優先して、本来の理念を考えなくなっていきました。

「ルールを破ったら怒られる」「次に来る職員さんの負担を増やすと怒られる」、そして「なんでこれやってないの?」といった批判も増えてきて、結果的に利用者さん本位ではなく、ルール本位・仲間本位みたいな仕事をするようになってしまったんです。

そこで色々と試行錯誤をして、“そもそも私たちは何をしていかなくちゃならないのか”という問題を提起しました。

そして、職員さんにまずは会社の理念や原理原則をしっかりと理解してもらい、それを仕事に反映できている人を評価して、その人たちを見習っていくという流れを作りました。その過程でファシリテーターの制度を組み込み、6年ほど前から継続しています。

ただ、理念が浸透していく半面、ルールやその日の流れは職員さんにお任せしているので、ともすると職員さんの価値観やその日の体調、ご自身のやりたくないことなどにルールや流れが傾いてしまう可能性があるというデメリットがあります。

雰囲気的には自由ではあるけれど、自由すぎて職員本位に走りがちな恐れを常に持っている会社なので、それを啓蒙したり修正することが欠かせない面があります。

○定期巡回

開設して1か月半なので、“らしさ”はまだ確立していませんが、定期巡回は介護保険の中でも地域密着型なので、地域に根付いた事業所を目指しています。

その一環として、事業所としてできることをケアマネや関係事業者に理解していただく周知活動を日々行ったり、認知症カフェを立ち上げるために認知症の講話やカフェに参加し、相談などをしています。

今後、地域に根付いて“らしさ”を生み出せればと活動しています。

○グループホーム

利用者と一緒に買い物に行って、温かいご飯、食べたいものを提供する取り組みを行っているのが“らしさ”だと思います。

グループホームには多くの方が終の棲家として入所するので、3~5年経つうちに介護度も上がり、自分でご飯を作ったり、食器を下げたりなどということが難しくなってくるので、この取り組みは簡単なものでは実はありません。

以前は職員の考えで買い物や食事を作っていましたが、今はそれを改善しようと、できるだけ職員主導のサービスではなく、利用者主体のサービスを展開しています。

○デイホーム

他のデイと比べると、まだ“らしさ”はあまりありませんが、一軒家ということもあり、自分の家のようにゆったり過ごしていただけるようにサービスを提供しています。また、季節に応じた行事を毎月必ず企画しています。

○グループホーム

入居者さん主体で生活しているところが特徴だと思います。職員さんたちにも事業所・介護保険の理念をお話していく中で、段々それが浸透してきていると思います。

◎感想のまとめ

各事業所の様々な形態にある“らしさ”を共有する中で、“らしさ”とは管理者等の考え・方向性を実践・修正し、それを長期的に繰り返しながら長期熟成させていった先にできあがるものではないかという感想が述べられました。

また、理念をしっかり浸透させ、スタッフの目線が利用者さんに向くことが大切だとの感想が上がるとともに、各事業所の“らしさ”をそれぞれの管理者が持ち帰り、方向性を示すための取り組みや理念の見直し、振り返りの機会をもつことの必要性が打ち出されました。

<各事業所の誇らしい取り組みと事業所の課題の発表>

■誇らしい取り組み


○地域密着型通所介護(他事業所)

当社は大きく2拠点あり、研修や会議はそれぞれで行っていましたが、今年から社内の全体研修をオンラインですることを提案しました。今までは私が中心となって行ってきましたが、今回初めて全てをスタッフに任せ、年間研修委員会を作って計画から運営までをお願いしました。

それが成功し、年間計画もしっかりとできました。私が思っていた以上のきめ細やかさ、あるいは想定していなかった大事なことも計画してくれたことが嬉しかったです。

自分なしでも動いていくことが、こんなに幸せなことなのかと感じました。これからのスタッフの成長に大いに期待が持てました。

〇定期巡回

開設してまだ1か月半の事業所ですが、先日、最初のターミナルの支援に携わりました。クライアントは意思疎通の難しい状態の方で、身体を冷やしてほしいというご要望から支援が始まりました。

ご本人に意識はないのですが、きれい好きな方だと伺っていたので、例えばぬれタオルを作るときなどにも、シンクに少しの汚れも残さないで退出しようなど、スタッフが積極的に、ご本人の生活歴等を強く意識して支援してくれたのが誇らしいと感じました。

〇グループホーム

グループホームでは、寒さや暑さなどで外出支援がはぶかれてしまい、外に出る機会がなくなってしまうことがありますが、先日のケア会議で、外出支援を業務の一つに組み込もうという社員限定の取り組みをお試しで始めることにしました。

社員に限った理由としては、去年の業務改革の中で、社員の遅番業務が8時間から6時間労働になったことがあります。空いた2時間で今までは衣替えや普段できないことをしていましたが、ここを外出支援に充てることとしました。

まずは月に10日ほど、対象者を絞っておやつを買いに行くことから始めます。ただ、外出支援を業務に組み込んだ以上、今後は歩ける方だけでなく、全員を対象にして、買い物以外にも散歩や外気浴という形で外出支援を行うのが可能かどうか、PDCAサイクルを回しながら検討する方針です。

〇グループホーム

最近、利用者さんが立て続けに骨折し、当グループホームで見ている方と、入院した方がおられます。グループホームで見ている方は、生活する上で訴えも多くなっていますが、スタッフが「骨折して不安なはずだから、ご本人の気持ちを考えて〇〇していこう」と取り組んでいるのがすごいと思っています。

入院した方に対しても、自由に動けない現状を耳にした際は「早く戻ってきた方がいいね」と言っていて、それもすごいなと。自分の事業所の職員を褒めるのも変ですが、そう感じています。

◎感想

「事業所の誇らしいこと」については特別な取り組みでなくとも、職員のファインプレーや優しさを垣間見れた時も十分誇らしいことであり、その人がその人らしく、いい仕事をできたという、その環境を作り出せている職場環境が大切だと思われる。

他のスタッフもそれにちゃんと気づいて認めてくれたなど、そういう些細なことでもよいと思われる。

■課題

○地域密着型通所介護(他事業所)

会社の代表取締役である自分とスタッフの距離感をぬぐうのが難しいのが課題です。例えばコロナウイルスに関して、5日間の経過観察で介助してもよいというルールが昨年定められ、当社もそれに準じていました。

その中で、コロナに感染した利用者さんがおられ、無症状で経過観察も終わったことから、予定通りの利用日に戻られました。それで問題ないと考えていたのですが、コロナに感染したことを知らなかった職員から

「なんで言ってくれなかったんだろう。5日間の経過観察が終わった後も後遺症もあるかもしれないし、一緒に働く身としては自分の身を守ったり、他の利用者さんの身を守るという意味でも、感染リスクが全くゼロではないのだから知っておきたかった」

という声が、だいぶ遠回りして私の耳に入ってきました。

そうした疑問の声はすぐに伝えてもらってよかったのにとは思いましたが、私が決めたルールなので、スタッフが異を唱えるのが難しくなっているとも感じました。

発言力があったり、言うことを聞かなければいけない存在に自分がなっていると改めて気づいて、気を付けなければいけないと。そうならないために、日々スタッフとコミュニケーションを取り、権限やルールを変えてもよいということ、そしてその権利を渡すことも意識していかなければと思いました。

〇定期巡回

自費サービスをお受けした際の対応についてです。ショートステイから一時帰宅をされる前に、外来で病院受診する方がおられましたが、その受診の付き添いを自費サービスで依頼されました。自費サービスかつ外でのサービスというところで、介護保険外の動きとイレギュラーな対応が多く、報連相が上手くいきませんでした。

現場で考えながら対応しなければならなかったり、管理者・ケアマネ・ご家族にどのように連絡するかなどの混乱もあり、現場のアテンダントから「もっとスムーズになるように手配してほしかった」などの意見が出されました。

介護保険であれば対応も一定決まっていますが、自費サービスで、さらに外でとなると、なかなか決まった対応がなく、「報連相をしっかりしよう」ということしか現在考えられていません。どこに連絡するのか、どう対応するのかが課題だと感じます。

〇グループホーム

ホーム長が替わって、主任も新しい人が増えたので、今までの事業運営を継続できるかというところで、私たち自身がちゃんと理念を理解していくことが課題です。そして、課題を見つけられるようになること、隅々まで見て、それを抽出できることが課題だと思っています。

〇デイサービス

私が管理者に就任してから期間が経っていないこともあり、職員からマイナスの意見がちらほら出たり、仕事が大変なのが嫌なのか、楽をしたがっているところが見受けられるので、今後はそういった意識を改善していければと思います。

◎感想

・スタッフから意見や気持ちが上がりにくいというのは、管理者の方や役職者に付いて回る問題であるため、コミュニケーションの場を設けたり、連絡の手段をフランクにしてみるなど、現場の意見をしっかり聞けるチーム・組織作りを考えることが重要。

・自費サービスの件では、どんなケアで統一するかが決まっていなかったことが、連絡体制が整わなかった要因に思われる。枠組みのない自費サービスでは、我々が枠組みを作る必要があるが、アテンダント・ケアマネ・マネージャー・ご家族等、全員でコミュニケーションを取ってルール決めやケアの統一を図り、介入するのがよいと思われる。

・スタッフからのマイナス発言や、楽をしたがっているというところに関しては、それが業務の負担の部分なのか、役割に不公平さを感じているのか、それとも利用者への接し方に悩みがあるのかなど、いろんな視点でスタッフとコミュニケーションをしっかり図ることで解決方法が見えてくる可能性があると思う。

・現場から反対意見が上がることは、事業所の改善や成長につながるので非常に良いと思われる。心理的安全性が確保されているからこそ反対意見や苦言を呈することができるので、各事業所でそのような環境や体制が取れるように頑張っていただきたい。

全体を通しての感想のまとめ

本日の定例ミーティングでは、「課題がたくさん出てきたのが良かった」との声が多く上がりました。大切なのは、課題を課題として認識できるかどうかであり、課題があっても、それを課題と認識できないところが問題なので、皆で考えられる体制作りが必要だという意見が出されました。

また、課題としてまず考えるべきは、事故や失敗ではなく、自分自身が気づいていないミスや、周りが思っているけれど自分には見えていない至らなさ・偏りであり、それを日々考える必要があるとの声が寄せられました。

そして、課題とは改善すべき問題、改善できることであり、そのような視点で考えることによって事業所も日々良くなる可能性があるので、悪い所を良くするものも大事だし、いいところをもっと伸ばすのも課題と考えるのがよいという意見や、そこも含めて課題を考えることで報告の幅や視点も拡がるだけでなく、スタッフに事業所の課題について尋ねることで色々な人の意見・価値観を併せることができ、ミーティングの充実度も高まるといった見解が打ち出されました。

 

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