【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年12月19日

【高齢者地域生活推進委員会】定例レポート 2024年12月19日

開催概要

開催日時:2024年12月19日
開催場所:オンライン

当日のアジェンダ概要

  1. 事例検討:グループホーム(前回からの進捗)
  2. 小規模多機能の事業紹介および事例検討(新事例)

当日の定例レポート

当日の定例ミーティングでは、事例検討および小規模多機能の事業紹介がなされました。

小規模多機能は、その事業形態が介護歴の長い方々においてもよく知られていないものではありますが、

今回の活発な質問等により、出席者もイメージを持てたのみならず、小規模多機能の果たす重要な役割を共有することができました。

1.事例検討:グループホーム

<概要>
女性の入居者(80代)が、他の男性の入居者のことを息子さん、お孫さんだと思い、世話を焼かれている。

当初はその男性入居者に対して敵対心が見られたが、職員が「この人も苦しんでいる」と状態を説明したところ、息子と認識するようになり、服を着せたりと、気遣うようになってきた。

しかし徐々に言うことを聞かせようとして、叱ったり、叩いたりするようになってきた。

他のことをしていると男性に気付かなかったりするので、職員がご本人と対話をしたり、「息子ではない」などと説明していたが、その内、自分のことを否定されていると感じるようになり、混乱が見られた。

そこからは、「私たちがお手伝いするからいいですよ」と、声掛けを変えているが、やはり叩いていたりすることがあるので、どう対応するべきか困っている。

<前回からの進捗>
前回のアドバイスを元に、ご本人がもともとお好きな“お手伝い”や“お世話”を中心にしていただくようにした。

ただ、「介護が向いているのでは?」と思うくらい、お手伝いをしながらも、その男性を目の端で追うことができ、段々技術力も上がって、何かあると男性に駆け寄っていくなどもできるようになってきた。

もっとも、お手伝いに集中して、男性に全然、気がいかない時もあるなど、日によって違う感じになってもきている。

また前回のアドバイスより、男性の傍に行った時には、特に男性が嫌がっていなければ、そのまま傍にいる時間も作ってみたところ、「寒い?」などと声掛けしながら、お洋服を着せるなどもあり、そういう時は良い場面だとして見守っている。

ただし、男性を子どもと認識していることから、「オムツが濡れてるんじゃない?」など、おしものお世話をする場面も出てきたため、引き続き、注意は必要だと思われる。

全面解決には至っていないものの、今後はご本人の”性格を知る”ことに取組んでいこうと考えている。

<質問による補足>

・暴力に関しては、叩くなどが多少あるものの、それよりも過剰にお世話をするようになることで、ヒヤリハットが多くなってきた。

例えば、その男性が悪い姿勢で歩いている際に、後ろから支えようとして、嫌がられて共倒れしそうになったり、

男性が他の方の部屋に入ろうとするのを止めて男性が転んでしまうなどもあるということなので、注意するところが増えてきた。

・前回のアドバイスでは「席を変えてみたら」というものがあったが、そもそも男性は色々なところに座るので、席の位置によって息子と認識しているわけではないと思われる。

ただ、本当の息子さんから電話がかかってきたときに、「久しく合ってないけど、元気?」などと話してはいるので、そこは違うのかと。

<アドバイス>

・相手が迷惑がってないのであれば、そのままそっとしておくのもいいと思います。

もし、利用者さんの間でトラブルになるようだったら間に入り、上手く話しをつないだり、少し離れた場所に席をご案内するなどの緩やかな対応でいいのではないかと思います。

<今後について>
継続してアセスメントを行う形へ。

2.事例検討:小規模多機能(新事例)

①事業所の紹介

<小規模多機能とは>
小規模多機能は「通い」「訪問」「泊り」を組み合わせて柔軟な対応ができる施設。

<当事業所の特徴>
当事業所では、小規模施設や在宅サービスもあり、地域とのかかわりも大切にしている。

地域の特性として、独居の高齢者が多いため、近隣住民にお声がけをしたり、デイサービスに来ていただくなどしている。

また、地域の移動販売車に毎週1回、当事業所の駐車場に来ていただき、利用者さんだけでなく、買い物に行くのが難しい近隣住民の方々にも利用していただいたり、

公民館の文化祭に利用者さんと一緒に出掛け、地域の方々と触れ合うなど、地域との取組みを大切にしている。今後は、近くにある保育所の園児の方々との触れ合いができればと考えている。

<質問コーナー>

・小規模多機能では、事業所によっては人員の不足等であまり訪問ができないということですが、そこはいかがですか?

⇒当事業所でも、人員的に1時間など、時間を決めての訪問が難しいため、例えば、日中お一人になる方に、安否確認も含めて15~20分訪問し、

お弁当の温めやお茶・みそ汁の提供、をしたり、30分ほどの掃除の訪問をするなどしています。

・小規模多機能に行きたくない、訪問されたくないなど、拒絶されることはありますか?

⇒デイサービスで来られている方で、お家が乱雑になっている方がおられたため、家族さんにも了承を得て、

お掃除の訪問を考えていましたが、ご本人が嫌がられて介入できなかったなど、いくつか事例があります。

・小規模多機能を利用する方はどういった方ですか?

⇒在宅から移行して来られる方が多いです。
他にも、怪我・病気・リハビリで老健に入っていたものの退去期間が迫り、

ご家族からは「自宅に帰るのは難しいが、施設に入れるのは早い」ということで、小規模多機能を使って、自宅と施設を併用する方が多くおられます。

POINTただ、小規模多機能は、介護保険では「在宅支援」の分野に位置づけられますが、小規模多機能の中のケアマネを使う形になるため、

それまで訪問介護や居宅支援事業所、デイサービスを利用して在宅支援を受けていた方は、そちらのケアマネとは縁が切れてしまう形になります。

通い(デイサービス)を使っている回数が1~2回であれば居宅支援事業所の方が費用が掛かりません。

通いが3~4回くらいで、たまに泊まりを利用する方であれば、小規模多機能のほうが使い勝手によっては安い利用料金で使える形になります。

また、居宅支援事業所(在宅のケアマネ)が担当している場合、たくさん利用すると10割の自己負担分が発生しますが、

小規模多機能では福祉用具をかなり多く利用しないと自己負担が発生しにくいという使い勝手のよさがあります。

・小規模多機能の役割とは?

⇒施設などに入居されると、それまでの生活がブチっと消えてしまう部分が多いですが、小規模多機能では「心の準備」ができます。

グループホームや特別養護老人ホームにおつなぎするまでの間というのは、

これまで家で過ごされてきた中での色々な思い出や人生に関する“気持ち・物の整理”といった、色んな準備のできる時間です。

その時間を大事に、ご家族と過ごしていただけると感じています。

・小規模多機能のメリットとは?

⇒訪問介護では、ヘルパーさんに対して、「あれをしたらいけない」「これをしたらいけない」という“しばり”があり、実際の生活に即した柔軟な動きができにくい面があります。

その点、小規模多機能には、生活援助と身体の区分けがないなど、訪問での“しばり”がないので、柔軟に実際の生活に即した支援ができやすいという利点があります。

②事例紹介

<概要>
対象者:アルツハイマー型認知症(女性) 要介護4
自宅にて転倒・骨折し、入院されたため、現在は契約終了

老健より当事業所に移行してきた。

特に夕方に落ち着きがなくなり、フロアの職員が手薄な時間帯に、長い廊下を一人で何度も行き来されていた。

他の利用者の部屋を開けたり、大声を出すなどはなかったが、小刻みに歩かれるので、職員が後ろから見守ったり、一部介助しなければ転倒の危険があった。

そうしたことより、本来の業務に差しさわりが生じる時があり、家族了承の上で安定剤を頓服として服用していたが、量の調整が難しい面があった。

<質問による補足>

・老健では車いすを使用していたが、良く立ち上がられるため、家族の了承の下、Y字帯をされていたとのこと。

当事業所では、Y字帯は拘束につながるので使用していなかった。

・普段は車椅子に座られているが、ご本人が立ち上がって歩かれるときはフリーで、私たちが後ろから見守り、危なくなったら一部介助という形をとっていた。

・発語によるコミュニケーションが難しく、意思の疎通が難しい

・メインキーパーソンは娘さん

・自宅に帰るのは月2回で、ほとんどが泊り。
自宅では比較的、落ち着かれ、穏やかに過ごされていたとのこと。

<質問&回答>

・誰かを探しているなど、明確なニーズがあって動かれているのですか?

⇒当事業所では、通いで来られている方を午後4時過ぎくらいからお送りしています。

ご本人も、老健から移られた2~3日は夕方も安定して穏やかに過ごされていましたが、当事業所で「家に帰る人がいる」というのを理解されたのだと思います。

そのため、3時半ころになると「もうそろそろかな」という感じで、そわそわとされ始め、4時前後にはその気分がMAX状態になってきます。

また、日中帯も居室にあるオムツ等の荷物を荷造りし、バランスを崩しそうなくらいの量を毎日手に提げて歩かれる状況もあり、恐らく、自分もうちに帰りたかったのではないかと感じています。

・自宅では穏やかに過ごされているということですが、自宅にいる日を増やさなかった理由はなんですか?

⇒家族の仕事の都合がつかず、帰宅日が月1~2回という契約でした。

・小規模多機能は、基本的にはご自宅ベースでデイや訪問を使いながら在宅をして、時には泊りをするというプランニングだと思いますが、今回の方のプランニング(課題と目標)はいかがでしたか?

⇒老健ではY字帯で拘束をせざるを得ない状況でしたが、当時から散歩の時間は確保していたとのことです。

せっかく小規模多機能に来られたので、絶対にY字帯は外し、拘束せずに介護をしたいという強い信念は、相談を受けた時点でもちました。

また、食事も手づかみで食べられる状況でしたので、そこもお箸で食べられるようにと考えていました。

無理強いではなく、傍にお箸を置くことで、自然と普通のお食事ができるようになってきて、段々といい方向に進んできました。

穏やかな時間には、見守りの中で、立ち上がって体操もできましたので、なるべく普通に過ごさせてあげたいという目標はありました。

他には、転倒が気になるので歩行のリハビリや、介護面での一番のニーズとして、ご本人の発語が難しいので、

職員が気持ちを汲み取って支援することを挙げ、そのための目標を立てていました。

・薬剤については?

⇒夕方から頻回にずっと歩かれるので、大変体力を消耗することもあり、本人が楽になるように、薬剤のコントロールをいろいろさせていただいていました。

ただ、薬剤の使用に関しては、かなり慎重になっていて、何のために、どの程度、どうして使うかというところが、スタッフ間で共有できていないと原則使いたくないという思いがあります。

この方の場合は、体力の消耗やしんどい様子でもあったので、老健で使用していた頓用(リスパダール)を酷い時には使っていました。

ただ、この薬剤は即効性はありますが、穏やかな気分にはなかなかなりにくい状況があり、

夜も落ち着かなくなって目覚めて、眠れない日も出てきたので、今度は夜勤者が転倒のリスクを負う状況になりました。

そのため、夜をコントロールして、日中帯を活動的な時間として作れないかと医師に相談し、

就寝前にベルソムラを1錠飲むことにしましたが、異様に効いてしまって、翌朝の朝食も食べられず、

昼くらいまで傾眠傾向になったため、レビーの疑い、薬剤過敏性があるかもしれないとすぐに中止し、そこからは半錠に変更しました。

そうすると、日中帯も体内の血中濃度で比較的穏やかに過ごせて、大分落ち着いてこられたという状況がありました。

<薬剤についての考え方>
小規模多機能管理者:
眠剤や向精神薬等を飲むことによってご本人の穏やかな生活が保たれることもあれば、飲まないことによって尊厳が保たれないケースもあると思います。

飲まないことで、周りから白い目で見られたり、体力を消耗したり、自分らしさが保たれない事例もあると思っています。

飲みすぎて尊厳が保たれないケースもあると思いますが、「この場合はどうだろう」と、高い倫理観で、ご家族と相談しながら、

ご本人が他のご利用者から白い目で見られないように、居心地のいい場所となるように薬剤の使用を判断することが必要だと考えています。

【全体を通しての感想】

・薬剤についての考え方をお伺いしましたが、大事な話だと思います。

薬は歩けない人の杖のようなもので、社会性を保つために必要なこともあります。

今回のように、自宅に帰れば落ち着くことが分かっているケースでは、事業所のみなさんも「家に帰してあげたい」と思われたと思いますが、

ご家族の負担を考えると、ご家族の生活が成り立たず、また施設に入らざるを得なくなる可能性もあります。

そのギリギリのラインのせめぎ合いが可能なのが小規模多機能で、悩ましい部分を担っていただいていると感じています。

・過去に施設で働いていた時、夕方になると落ち着きなくなる方や、家に帰りたがる人が多くいらっしゃいました。

当時は人員がいない中で、散歩に連れていったら落ち着くからと、強引に外に連れ出したりもしていましたが、

人がいないと難しいですし、それによって新たな事故が起きることもあるので、良いとは言い切れないことでもあります。

現場の方は、色んな声掛けを工夫して、「どうしたらいいのか」と日々考えながら対応しているのが、本当に大変だと感じます。

本人が落ち着いてくださるのが一番望ましいですが、薬を飲むことが本当にご本人のためになるのかは考えないといけないですし、

逆に薬がないとさらに転倒につながってご自宅で過ごすことがままならなくなってしまう可能性を招くこともあり、バランスが必要だと感じました。

・老健で20年ほど働いていたので、むしろ在宅復帰をお願いする側でしたが、在宅復帰した後に、

小規模多機能さんがすごく頑張ってくださって、在宅の継続ができた事例も何度も経験しています。

今回のような、月2回しか自宅に帰れないケースは割と少なく、難しいケースだと思いました。

・小規模多機能の事業所の運営の仕方や、利用する側の使い方を聞くことで、出席者も小規模多機能についてイメージできたと思います。

今回の方は、老健から小規模多機能に移られたことで、状況の変化が生じたと思いました。

ご本人のQOLが向上した影響でスタッフが大変になったケースだと思うので、事業所としては良いことをしたけれど、スタッフの対応が困難になったのかと。

そこで安易に薬を飲んで落ち着いていただく発想ではなく、ご本人が辛そうだから、

辛い部分の軽減をするという視点で医師に相談するなど、介護に対する理念があって状況が進んだのかと勉強になりました。

・人間の生活は曖昧ではっきりしないものですが、自宅に帰してあげたいと思って小規模多機能で引き受け、

けれども家族の生活の限界もあるという、この難しいあんばいの対応は、デイサービスや訪問介護だと絶対無理です。

そこが小規模多機能の果たす役割でもあり、貴重な社会資源だと思いました。

今回のケースも、ご本人も幸せで、家族も後悔しない介護をという橋渡しを一生懸命なさったことがうかがえました。

・小規模多機能で管理者をしていたことがありますが、同じく月に2回しか帰れない人のプランを立てたことがあります。

そこのぎりぎりの難しい曖昧なプランを日々考えながら作っていくのがやりがいもあり、悩んで後悔が多かったりもあるのではと感じました。

そして、ご本人が初めの2日間くらいは落ち着いていたところから、

「ここは帰れるんだ」と気づいたということは、失語があっても見当識が保たれている方だと感じました。

認知症だからといってすべてが分からなくなるのではなく、コミュニケーションが取れなくても、ちゃんと分かっていた方じゃないかなと。

私たちも認知症でうまくコミュニケーションを取れないと、認知機能が低下した方と思い込んでしまいますが、

家に帰れるという期待感がそうさせているというのを分析されているのがさすがだと思いました。

・お薬への考え方、小規模多機能の葛藤、やりがいが分かり、勉強になりました。
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