
【環境平和貧困対策委員会】高浜将之常務の対談シリーズ 第2回
第1部「サステナブルに取り組む企業に聞く、10の教え」
<第2回目ゲスト>
▸大井明弘 氏(株式会社アトリエDEF 代表取締役)
<会社紹介>
株式会社アトリエDEFは、長野県や山梨県を中心に家づくりを行う工務店です。
「日本の山を守り、育てる」という理念のもと、30年以上にわたり、国産材の自然素材にこだわった家づくりを続けています。
住む人が安心して健康に暮らせること、そして未来の子どもたちにつなげることをモットーに、伝統技術と自然素材を活かした環境負荷の少ない住まいづくりを実践しています。
アトリエDEFの取り組みについては、こちらをご覧ください。
第1章 アトリエDEFさんの家
▸アトリエDEFさんの作る家はどんな家?
<高浜常務>
私はアトリエDEF(以下、デフ)さんに10年ほど前に家を建てていただき、そのご縁で今回対談させていただくことになりました。
本日はデフさんの事業や環境への取り組みについてお伺いさせていただきます。
まずは、事業内容からお願いいたします。
<大井社長>
弊社は家づくりを行っていますが、自然素材100%で、自然素材以外(住設等は除く)のものは使わないんですね。
それに木造の家を作っているので、木を大量に使いますが、日本の山の木だけを使って、外国の木は一切使いません。
壁も土壁で、断熱材も木の繊維を壁の中に吹き込む方法を取っています。
なので、最近のナフサ問題の影響も殆ど受けずに済んでいますね。
<高浜常務>
そうした形で家づくりをされているのには、どんな理由があるのでしょうか?
<大井社長>
一つは「日本の山を守り育てる」こと、もう一つは「未来の子供たちのために、何かできることをやろう」ということです。これが、デフの目指していることなんです。
人工物はいつか朽ちる時が来ます。
それが50年後か100年後かは分かりませんが、必ず朽ちる時が来るんです。
その時に、それをゴミとして残さないように、土に戻る素材で家を作るという考えです。
土壁や木の断熱材、火山灰などの自然素材であれば、朽ちても土に還るのでゴミにならないんですね。
そうすると未来の子どもたちの迷惑にならないんですよ。
<高浜常務>
天然の木はゴミになりませんが、一般的な住宅がゴミになってしまうのは「合板」が使われていることが大きいと思うのですが、その点については社会的にあまり知られていないように感じます。
<大井社長>
合板も木だと思っている人がいるんですね。
でも合板は、大根の「かつらむき」のように木を薄くむいて、それを接着剤で何層にも貼り合わせたものです。
なので結局、朽ちた時に土には戻らないんです。
それに接着剤を使うので、シックハウスの原因にもなります。
だからデフでは糊や接着剤は一切使いません。塗料も使わないんです。
塗料を使うと、そこから化学物質が揮発するので、住む人に良くない影響があるんです。こうした考えで、木と紙と土だけで家を作っていますが、その分、お客さんは少ないですね(笑)
<高浜常務>
いえいえ(笑)
家って、人生で最も高い買い物だと思うんです。
私も家を建てようと思った時に、デフさんのそうした考え方に共感して、「社会や子どもに誇れるような家を建てたい」と思って、ご連絡させていただきました。
ただ建てるだけではなく、自分が亡くなった後のことまで考えられているのがデフさんの家づくりなので、日本の中でも稀有な存在だと思います。
▸アトリエDEFさんの家
<高浜常務>
私は実際にデフさんの家に住んで10年以上になりますが、非常に快適です。
無垢の木で作られているので、すごくいい木の匂いがしますし、お風呂も木なので、水に濡れると木の香りが広がります。
それに夏は涼しく、冬は暖かいです。
木と漆喰が水分を吸ってくれるので、夏でも湿気をほとんど感じず、ムシムシしません。
冬は-10度くらいまで下がることもありますが、無垢の木は外気の影響を受けにくいので床も暖かいですし、薪ストーブにしてもらったので室内もすごく暖かいんですよね。
電気代も少なくて、光熱費はかなり抑えられています。
あと、デフさんの家は、凍結しないことで有名ですよね。
<大井社長>
1週間ほど家を空けても、家の中が凍結することはまずないですね。
<高浜常務>
デフさんは、家を建てた後のアフターサポートがとても手厚いところも魅力です。
軽微な不具合が生じた際にもすぐに対応してくださるため、住み始めてからも安心感があります。
一般的な住宅では、屋根や外壁の塗装を約10年ごとに行う必要があるといわれていますが、デフさんの家は、そうした定期的な塗装メンテナンスの負担が少ないと聞いています。
そのため、長く住むうえでのランニングコストを抑えやすい点も、大きな魅力だと感じています。
<大井社長>
でも蜂はね(笑)
<高浜常務>
木なので蜂が寄ってくるんですよね(笑) 田舎ということもあって蜂の巣はできやすいので、初夏は毎日チェックしてますね。
でも快適だし、旅行から帰ってくると、「結局うちが一番いい場所だね」と、妻ともよく話しています。それに、不思議と子どもたちのたまり場になるんですよ。
玄関がなくて、戸を開けると広い土間になっているので、開放的なせいか、みんなが集まってきますね。
家づくりが始まる時、「玄関って必要ですか?」というところからスタートされますが、デフさんは家作りを通して、生活そのものを問い直されているように感じます。
第2章 日本の山問題
▸日本の山の現状
<高浜常務>
デフさんは日本の山の木だけを使い、山を守ることを重視されていますが、その背景には何があるのでしょうか?
<大井社長>
日本の山は戦後に伐採され、植林されたものの、放置されてきたんです。
なので今、日本の山が荒廃しているんですね。
山というのは、一旦、人が入って木を切ったり植林すると、自然の力だけでは再生しないんです。
人の手が入っていない原生林や森は自然の力で再生できますが、一度でも人が入れば最後まで人が育てないといけないんです。
けれど、外国産の木で家や家具を作ることが主流になり、日本の木が使われなくなったので、日本の山にお金が循環しなくなりました。
そうすると山が整備されないので、どんどん荒れていったんです。
<高浜常務>
たしかに山に行くと、細い木が立ち並んでいたり、光が入らず暗い場所も多いですね。
生物が生きている気配もあまり感じられません。
あれは杉やヒノキといった人工林ですよね。
そうした山になったのも戦後の伐採と植林のせいですが、そもそも戦後にどうして山に手を入れたかというと、戦争で家がたくさん焼失したからですよね。
日本は昔、家も電柱もすべて木でできていたので、自然の山に手を入れて伐採し、どんどん家を建てていったわけです。
戦後の政策として国を挙げて進めたことのツケが、今さまざまなところで問題を生んでいると思います。
<大井社長>
だからこそデフでは日本の木を使って、そのお金を山に戻す仕組みを作っているわけです。
そのお金で、林業に携わる人が間伐や植林といった山の整備をしてくれるので、日本の山を守ることができるんです。
<高浜常務>
日本の木といっても、デフさんは吉野や木曽のヒノキといった、いわゆる銘木は使われませんよね。
<大井社長>
そうですね。そうした銘木はまっすぐで太くて素晴らしいんですが、デフはそうした木は使わないんです。
というのも、銘木の産地は昔から林業家が山を整備して守ってきたので、デフが関わる必要はないんです。
木曽のヒノキといった名木と比べると、デフで使用する木は質は劣りますが、そうした木を使わないと日本の山は守れません。
だから私たちは、質が劣る木を職人の技術によって活かし、価値を高めて使っていくという考えを大切にしています。
AIではできない職人の技術を守り育てながら、日本の山を守っていくことが大事なんですね。
<高浜常務>
ちなみに家を一軒建てるのに、木はどれくらい使われるんですか?
<大井社長>
20~25mくらいの木を180~200本ほど使いますね。
だから年間1棟や2棟では全然山を守れないんです。
30~40棟でようやく一つの山を守れるので、全国に仲間を増やしながら、国産材を使う家づくりを広げているところです。
ただ、今そういう流れやブームはあるんですが、大手のハウスメーカーさんたちは日本の木はほとんど使わないんです。ほぼ輸入材ですね。
▸輸入材とトレーサビリティ
<高浜常務>
輸入材が日本の山をダメにしているとも言えるわけですね。
<大井社長>
そうなんです。それに輸入材は、どこの山から来たものかが分からず、環境破壊につながっているケースも多いんですよ。
発展途上国ではやみくもに木が伐採されて、それがただ同然で売り買いされているので、その国は裸の山になってしまって環境問題が起きるんですね。
<高浜常務>
家を建てた時にデフさんから頂いた絵に、どこの山の木を使っているのかが書かれていたんですよね。
その山とつながっているような気になったんですが、そうしたことも重要だと思いました。
<大井社長>
どこの山の木か分からないものはデフでは使いません。
木も壁材も、すべてトレーサビリティの明らかなものだけで家を作るんです。
今は家を建てるお客さんにも一緒に山に行ってもらって、自分の家の大黒柱を切ってもらっています。
そんな儲からないことをしてますね(笑)
<高浜常務>
(笑)
工務店が輸入材を使うようになったのは安さが理由だとは思いますが、外国の木は日本の木に比べて質が良いといった面もあるのでしょうか?
<大井社長>
外国の木が必ずしも良いというわけではありません。
例えば暖かい国の木は成長が早いので、同じ直径30センチの木でも、木曽のヒノキだと100年ほどかかるところが、10年ほどでそこまで成長します。
そうすると木の年輪が太くなり、豆腐みたいに柔らかくなってしまうんです。
つまり弱い上に、虫にも食べられやすいので、シロアリの宝庫になるんですね。
それに日本に輸入する際に防虫・防カビ処理が必要になるんですが、そういうものを使って家を作るのは私たちの本意ではないので、それもあって日本の木を使っているんです。
<高浜常務>
なるほど。あと、良い木というのが、ヒビが入っていないとか、曲がっていないという見た目の良さを指すように思われがちな気がするんですが。
<大井社長>
一時期、節のあるものを嫌った時代があったんですよ。
「無節(むぶし)=節のないもの」が良いとされて、例えば床や天井の木に節があるものを使う人は貧乏人と言われていました。
それで節のない合板が出始めたんです。
合板やプラスチックに木目をプリントして、代用したんですね。
今は節を受け入れる人も多いですけど、あの“無節信仰”が日本の山をダメにしたんです。
けれど、枝が出るから節があるわけで、木は節があって当たり前なんですよね。不思(節)議な話です。
<高浜常務>
(笑)
対談シリーズ第2部では、日本の山が抱える課題と、その課題が私たちの暮らしに与える影響についてお話を伺いました。ぜひあわせてご覧ください。













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