【環境平和貧困対策委員会】高浜将之常務の対談シリーズ 第2回 第2部 大井社長に聞く「日本の山の問題が引き起こす社会課題」

【環境平和貧困対策委員会】高浜将之常務の対談シリーズ 第2回
第2部 大井社長に聞く「日本の山の問題が引き起こす社会課題」

<第2回目ゲスト>

▸大井明弘 氏(株式会社アトリエDEF 代表取締役)

<会社紹介>

株式会社アトリエDEFは、長野県や山梨県を中心に家づくりを行う工務店です。
「日本の山を守り、育てる」という理念のもと、30年以上にわたり、国産材の自然素材にこだわった家づくりを続けています。

住む人が安心して健康に暮らせること、そして未来の子どもたちにつなげることをモットーに、伝統技術と自然素材を活かした環境負荷の少ない住まいづくりを実践しています。

アトリエDEFの取り組みについては、こちらをご覧ください。

1.水問題

日本の山の荒廃は、林業の問題にとどまらず、私たちの生活全体に影響を及ぼしています。

日本の山を守るということは、実は水を守ることでもあるんですね。本来、山は雨水を吸収し、長い時間をかけて濾過する役割を持っています。

私たちはそうした水を飲むわけですが、今は山が悪いので水道水の水を直に飲めません。
というのも、法律で水道水に“塩素”を入れることが定められているからです。

それに、今は山にお金が循環していないので、山の手入れができず、山の中に太陽の光が入っていきません。

本来であれば、太陽の光で雑草が生え、それが枯れて腐葉土になることで土が良くなり、雨水も濾過されるんですが、今は光が入らず雑草も生えないので土がコンクリートのように固くなっていて雨水が浸透しないんです。

その結果、土砂災害のリスクも高まっています。

木が根を張れないので土砂崩れが起きた際には真っ先に木が倒れてしまい、それが民家を襲っていくんです。

土だけが崩れるわけではないんですね。

2.地球温暖化

山の木はCO2を吸収し、光合成によって成長していきますが、年を取った木はそれほどCO2を吸いません。

今はそういった古い木がたくさん立っています。
であれば、その古い木を切って建築の柱や床材、家具にして使い、苗木を植林することが大切になります。

そうすると、その苗木たちはCO2をたくさん吸ってくれるので、温暖化に歯止めがかかるんです。

よく言われるように、「紙の無駄遣いを減らしましょう」ということではなく、山の木を切って、チップや紙などに活用しないとダメなんです。

もちろん切りっぱなしはいけませんが、そこに苗木を植えて、山を再生させていくことが山の生きる道であり、私たちの生きる道なんです。

3.熊問題

今、熊の問題が日本中で騒がれていますが、昔は民家の近くまで降りてこなかった熊や鹿、イノシシがなぜ町中にまで来ているのか。

これはやはり、山に食べ物がないからです。
戦後の伐採でドングリの木をどんどん切り、人間の欲によって杉やヒノキといった実のならない木を植林してきました。

その結果、山に食べ物がなくなってきて、動物が里に下りてきているんです。

4.放置竹林問題

今、竹が繁茂し、日本の山に深刻な影響を及ぼしています。
竹は1日に1mほど伸びるので、数年で20m近くになり、それが太陽の光を全て奪ってしまうことで山の木が枯れていっています。

日本人はタケノコやメンマをよく食べますが、その産地の90~99%が中国です。

目の前に竹があるのに、そのタケノコを食べないので、どんどん放置竹林が増えているんです。

大井社長のコメント

山を守り、育てるということは、水を守ることであり、CO2を削減することであり、土砂災害から命を守るということです。

山というのは非常に大事なところなんですね。

第3章 課題解決に向けたアトリエDEFさんの取り組み

<高浜常務>
山が枯れていることが様々な問題を引き起こす中で、デフさんはいろいろな取り組みをされていますが、それについてお話を伺えればと思います。

<大井社長>
現在、健全な森作りに向けて、歌手・俳優の小泉今日子さんと一緒に、「明日の森プロジェクト」という植林活動を始めています。

「動物たちが食べられる森を作ろう」、「動物たちのために3,000本のどんぐりを植えよう」というプロジェクトで、この秋に植林を行います。

ぜひ、ご寄付をお待ちしております。

明日の森プロジェクトについて、詳しくはこちらをご覧ください。

<高浜常務>
ほかにも、放置竹林問題に力を入れていると伺っていますが。

<大井社長>
そうですね。竹をそのままにしておくと山が枯れてしまうので、環境事業部のスタッフで日々、竹林整備に取り組んでいます。

ただ、竹の使い道がないので、デフでもいろいろな形で商品化して販売したり、使用する紙をすべて鹿児島の製紙会社さんが作る竹紙に切り替えたりしています。

あとは移住者の方々に向けて、農業や暮らしを学べる場も提供しています。

今、移住者がすごく増えていて、デフでも多くがそうした方たちの家づくりとなっています。

皆さん、第二の人生として、心豊かな暮らしを求めて移住されるんですが、農業経験のない方がほとんどなので、私たちがコミュニティ農園を開き、そこで農業を学んでいただいています。

無農薬・無肥料の農業を実践して、「自分で食べるものは自分で作る」という暮らし方を推進しているんです。

<高浜常務>
デフさんに入社すると、一定の広さの畑を自由に耕すことができるという取り組みがあったと思うんですが、それも生活や食について、社員さん一人ひとりに考えてもらい、実践する機会をつくるためということですか?

<大井社長>
そうですね。入社すると、まず1週間山に入って、チェーンソーで木を切ることから学びます。

山の仕事を一通り覚えたら、次はかまどで毎日ご飯を炊き、まかないを作ってもらうんです。

そのうちに畑の土作りが始まるんですね。
無農薬・無肥料でどうやって土を作るかが課題なので、有機物を入れたり微生物を育てながら畑づくりを学んでもらいます。

1ヶ月ほどは本業に入れないんですが、みんなそれを楽しんでるんですよ。

たまに、「私は何のために入社したんだろう」って悩んでる子もいますけど(笑)

<高浜常務>
でもそうした生活が、事業の現場に根付いていくということですね。

<大井社長>
そうですね。「自分の家にもかまどを作りたい」と言われるお客さんも増えてきて、私たちと一緒にかまどを作ったり、畑をされるんですが、スタッフがそれを実践できないと伝えられないので、最初の 1か月間は悩み苦しむ時期があるんですね。

だけど、そのうちにそれが当たり前になり、楽しくなっていくので、それは本当にいいことだと思っています。

<高浜常務>
そう考えると、極めて一貫していますね。

<大井社長>
そうですね。「未来の子どもたちに、私たちができることをやりましょう」というのがデフのテーマなので、地球温暖化についても真剣に考えていますし、小学校から大学まで講義に呼んでいただいています。

特に小学校が多いですが、そこで子どもたちにテーマを出して、環境問題について考えてもらうんです。

たとえば、「チョコレートを食べたよね。そのチョコレートのカカオはどこから来てるんだろうね?」とか「今日、テレビを見たよね。そのテレビの電気はどこから来てるのかな?」といった感じです。

カカオを作るために児童労働で苦しんでいる子どもたちが世界中にたくさんいること、それを食べるのは本当にいいことなのかな、といった疑問を投げかけると、子どもたちの考え方も変わっていくんですよね。

電気についても、10年以上前に「電力の自由化」が国の法律で決まり、自分で使う電気を自分で選べる時代になりました。

でも、知らない人が多いんですね。

なので、電気には火力発電や原子力、風力、太陽光などいろんな作り方があること、火力発電は石炭を使うのでCO2が一番多く発生すること、その上で、どの電源を選ぶかは自分で選択できることを伝えたりしているんです。

<高浜常務>
最近は企業でも、アクティビストの株主が、仕入れ先などにおいて環境や人権面で問題があるものを使用していないかを注視するようになってきていますね。

<大井社長>
私も事業をやっている者として、経済優先の考え方はよく分かるんですけど、やはり先を見ていかないと経済も行き詰まると思います。

環境と経済の両輪で回していかないと、共倒れしてしまうと考えています。

たとえば北九州のある石鹸会社さんでは、以前は合成洗剤を販売していた時期もありましたが、そうした環境負荷のかかる製品は一切扱わない方針に切り替えられたんですよ。

その際には倒産の危機に落ち込んで相当苦労されたみたいですけど、今、その商品は全国に広がっています。

<高浜常務>
経済はもちろん大切ですけど、社会全体として、経済だけではなく持続可能性へと意識が向かってきていることは感じますね。

<大井社長>
私は30数年こうしたことをずっと続けてきましたけど、はじめは誰も相手にしてくれなかったんです。

「教祖様」なんて言われてね(笑)
それが今は「デフさんで家を建てたい」と言ってくださるお客さんが毎日来てくれるんです。

やはり世の中が求めているのは、そうした在り方なんだと思います。もちろん経済も大事ですが。

第4章 私たちにできること

<高浜常務>
今、デフさんが取り組んでいるような森林問題に私たちがコミットするには、どのようなことができるんでしょうか?

<大井社長>
そうですね。身近にあるもの、例えばお箸一つでもいいので、国産の木で作られたお箸を使うとかですね。

ただ、ウレタンなどの塗料でピカピカに加工されたお箸ではなく、自然なお箸を選ぶことで森を守れると思ってもらえれば、それが山を育て、自分たちの未来を築いていくことになると思います。

「自分にはそんな大きいことはできない」と、みなさんよく言われますが、お箸一つを変えることならできると思うんです。

些細なことでもいいので、ぜひ、みんなで未来のために取り組んでいきましょう。

<高浜常務>
我々のような企業には、どのような取り組みをしてほしいと思われますか?

<大井社長>
例えば、土屋さんのようにいろんな施設を運営されている場合、その施設で使われるお箸やコップ、お皿などから変えていってもらえればいいと思います。

今は割り箸も国産でないものが増えていますが、国産のものに切り替えてもらうだけでも意味があると思います。

木を植えたり、家を建てるのは大変なことなので、まずは身近にあるものを一つ変えることから始めるだけでも良いのではないかと思います。

<高浜常務>
ありがとうございます。
我々も、地球の未来を守るために、できることから始めていければと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

※本記事は「高浜将之常務 対談シリーズ」の第2部です。第1部もあわせてご覧ください。

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