【第7期 高齢者地域生活推進委員会】第9回 勉強会レポート 2026年7月16日

【第7期 高齢者地域生活推進委員会】第9回 勉強会レポート

テーマ

認知症の被害妄想が起こる仕組みと支援 ~家族だけで抱え込まないために私たちができること~

開催概要

日時:2026年7月16日(木)17:00~18:00
講師:坂本孝輔氏(認知症専門の介護福祉士)

~認知症における「作話」「被害妄想」について学ぶ~

認知症の症状として現れる「事実とは異なる語り」は、大きく「作話」と「被害妄想」に分類される。

これらは全ての認知症当事者に現れるわけではなく、自己の記憶や考えを点検する「メタ認知機能」が低下している場合に生じやすいBPSD(行動・心理症状)である。

下記は「作話」「被害妄想」についての説明画像

1.ポジティブな「作話」を増やし「被害妄想」につながる気分·感情を減らすケアを心掛ける

記憶はビデオテープのように出来事をそのまま記録・再生するものではない。
本勉強会では、記憶を「ティーカップ」に例え、その再構成のプロセスが解説された。

記憶の断片と「接着剤(パテ)」

人間の記憶をバラバラになったティーカップの破片(過去記憶の断片)に例え、現在の記憶で繋ぎ合わせることで形成されるという表現で説明された。

「接着剤(パテ)」の成分は下記の内容。

  • 過去の経験、記憶や自己評価
  • 他者からの噂話や情報
  • 思考の癖
  • その時の感情や気分(最も重要な成分)
認知症による記憶の変化
断片の減少: 記憶障害により、ティーカップの破片そのものが少なくなっていく。
補完: 足りないパーツを埋めるため、過去の似た記憶や別時期の出来事をかき集め、無理に一つのカップを作ろうとする。これが「作話」の正体である。
確信: メタ認知が低下しているため、不完全なカップであっても、本人は「完璧に元通りのカップ(正確な記憶)」であると強く確信してしまう。
感情が記憶に与える影響(現在抱いている感情が、過去の記憶の意味付けを決定する)
  • ポジティブな感情(安心・充実):
    接着剤に良い成分が混ざり、事実と異なってもポジティブな作話として再生される。
  • ネガティブな感情(不安・不信):
    接着剤に「不安」や「孤独」が混ざることで、記憶が被害的な意味付けを帯び、「被害妄想」へと発展する。

2.被害妄想を回避・軽減するための5つのポイント

被害妄想そのものを直接治す特効薬はないが、「現在の感情」を整えることで、ネガティブな作話を減らし、ポジティブな作話へと転換させることは可能である。

  1. 心の暇をなくす(楽しみ、役割、人との繋がり、将来の予定などで心を満たす)
  2. 役割を持つ(「自分は必要とされている」という自信を育む)
  3. 「いい人メソッド」の活用(「この人は敵ではない、味方だ」と思わせる振る舞いを徹底する)
  4. 0秒コミュニケーション(短時間でも、回数を重ねることで信頼を得る)
  5. ザイオンス効果(接触頻度を意識的に高める)

【結論】

認知症ケアにおける「作話」「被害妄想」への対応の本質は、過去の記憶を正そうとすることではなく、「今、この瞬間」の感情を安心と充実で満たすことにある。

その積み重ねが、再構成される記憶の質を変え、当事者と周囲の関係性を再生させていく事でご本人の苦しみを減らし良い影響に繋げられる。

 

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