【認知症ケア事例】やりたいことを実現するための柔軟なケアアイデアとは?

  • グループホームのがわ
グループホームのがわ

認知症の高齢者のケアでは、一人ひとりの「やりたいこと」を実現するための支援が重要となります。それがどんな小さなことであっても、その要望に応えることこそが、生活の質(QOL)を向上させるための大切な一歩となります。
今回は、認知症の高齢者の「自転車で買い物に行きたい」という要望を叶えたことで、クライアント(利用者)のQOLを向上させることができたという事例をご紹介します。

【事例】

60代 女性
要介護Ⅰ
グループホーム入居直後
ADL自立:レビー小体型認知症 Ⅱa ※誰かの見守りがあれば外出できる

【検討プロセス】Aさんの自転車への思い

新規入居者のAさんは、グループホームでどのように生活したいかを聞かれた際、「自転車で買い物に行きたい」と熱望されました。Aさんはかつて自転車で買い物に行くのが日課だったとのこと。しかし、家族の話によると、ここ1~2年は自転車に乗っていなかったとのことでした。

事業所リーダーが実行したこと

Aさんの要望を叶えるため、自転車の購入を上長に相談しました。しかし、自転車にはリスクが伴うとの意見があり、上長からは再検討を指示されました。上長の指摘したリスクは以下の通りでした。

  1. 認知症は進行性の病気であり、認知症が進んだ時にリスクが高まる
  2. 高齢者は身体的にも衰えていくため、リスクが高まる
  3. 今は乗れるかもしれないが、いつ乗れなくなるかわからない
  4. もし転倒した場合、怪我する可能性が高く、リスクが大きい

 

【実行プロセス】柔軟に解決策を見つけることが重要

リスクを再評価した上で、私たちは新たな提案を行いました。それは、「大人用三輪車」の導入です。
この提案は家族の理解と承認を得られ、上長からも承認を得ることができました。大人用三輪車を購入した後、Aさんは再び自転車で買い物に行く楽しみを得ました。
しかし、もちろん課題も残されており、歩道の凹凸や車道の端での走行が難しいという新たな問題が浮上しました。

新たに見つかった課題

歩道は凹凸が多く、状況に合わせたペダルの漕ぎ方(力の入れ具合)が出来ずに、すぐに止まってしまう。
車道の端を走ると、排水溝への微妙な斜度を自分で調整できず、すぐに補助輪が路肩にぶつかって止まってしまう。

課題解決のために実行したこと

本人の前方を走りながら、常時声掛けを行うことでスムーズな走行が可能になった。

結果・結論

介入の結果、Aさんは自転車での買い物を再び楽しむことができるようになりました。
「やっぱり自転車は気持ち良い!」と、Aさんは非常に喜ばれていました。
大人用三輪車は通常の自転車よりも安定しており、転倒事故などを起こすことなく、Aさんの要望に答えることができました。

【事例のポイント】レビー小体型認知症とは?

レビー小体型認知症は、アルツハイマー病や血管性認知症と並ぶ、高齢者に多い認知症の一つです。
レビー小体型認知症は、脳内に特異的なたんぱく質の塊である「レビー小体」が形成されることによって生じると言われています。

レビー小体型認知症の特徴

レビー小体型認知症は、他の認知症とは異なる特徴的な症状を有しています。

認知機能の変動

同じ日の中で、または日によって認知能力が大きく変動します。良好な認知状態と混乱状態が交互に現れることが特徴的です。

パーキンソン病様の運動障害

手足の震え、筋肉の硬直、動作の遅さ、バランスの悪さなど、パーキンソン病に似た運動障害が現れることがあります。

レビー小体型認知症の治療

レビー小体型認知症の治療は、症状を管理・改善することに焦点が当てられており、根本的な改善よりも症状に対応する「対症療法」が重要になります。認知症の進行を遅らせ、各種症状を緩和するために、薬物療法が行われることがあります。
また、パーキンソン病様の症状に対しては、パーキンソン病の薬が有効となる場合もあります。

レビー小体型認知症のケア

認知症におけるケアは、患者の生活の質を維持し、できるだけ自立した生活を続けられるよう支援することが重要です。
レビー小体型認知症の場合も同様で、以下のようなケアが必要となります

適切な環境

変動する認知機能や幻覚に対応するため、安全で、理解しやすい、そして安心感のある環境を提供することが重要です。家具の配置を変えず、日常生活のルーチンを一貫して保つことが有効です。

適切なコミュニケーション

混乱を最小限に抑えるためには、明確で短い文を用いる、一度に一つのことだけを伝える、話を理解する時間を確保するなどのコミュニケーション方法が有効です。

安全な運動の機会

運動障害がある場合でも、適切な運動は筋力やバランスを保つために重要です。ただし、安全を確保するためには、適切な監督やサポートが必要となります。

認知症ケアには柔軟なアイデアが重要

認知症の発症によって QOL が著しく低下してしまうことが分かっています。

しかし、適切なアセスメントと柔軟なアイディア、一人ひとりの「やりたいこと」に焦点を当てたケアを実行し続けることで、「今まで」と変わらない暮らしを継続していただくことも可能です。 

株式会社土屋グループでは、「一人ひとりの想い」に寄り添っていきたいと思います。

※画像は全てイメージです。

 

有限会社のがわ公式サイトへ

TOP