医療的ケア児地域生活推進委員会

医療的ケア児地域生活推進委員会の取組み

 

医療的ケア児をもつご家族の方は、お子さんが生まれてからずっと不安の中で日々を送っています。
誰に何を聞いていいか分からず、病院側に言われるがままに進んでいくしかありません。

情報共有の場も不足していて情報自体を得るのも難しく、なおかつ緊急時に預かってもらえる場所もない中で、ご家族が24時間付き添い、寝る間も惜しんでケアされているのが現状です。

こうした医療的ケア児を取り巻く環境や課題について様々な声を聴く中で、情報共有や預けられる場所の必要性を強く感じると同時に、ケアを提供する側と受ける側に認識の違いがあることも分かってきました。
現在、国も医療的ケア児に目を向け、家族介護から脱却する方向を打ち出していますが、 こうした流れの中で土屋グループにできることは多くあると思います。

とはいえ、ケアを提供する側と受ける側、そして当委員会と現場サイドの思いに相違があると運営にも支障を来たすため、まずは「医療的ケア児」という“ケアを必要とする子どもたち”について広く知っていただくことから始めています。

具体的な取り組み

■情報収集~外部団体イベントへの参加~ 医療的ケア児の問題を考える「全国医療的ケアライン」主催のフォーラムに参加(ブース出展)し、家族団体等から情報収集および意見交換を行いました。今後も積極的に外部のイベントやセミナーに出席し、委員会として知見を深めていければと考えています。

■外部・内部に向けた発信 現在中心としている活動が、医療的ケア児と、ケア児を取り巻く環境について知っていただくための内外に向けた発信です。2024年2月には『未来につながろう』というテーマで、ケアに携わるスタッフをはじめとした様々な方の“生の声を聴く”ことのできるイベントを企画しています。

■研修会・意見交換会の実施 委員会内には、当事者・ケアの経験者等、様々な知見を持つメンバーがいます。そうしたメンバーを中心に、医療的ケア児という未知の領域に対して、『どうすれば積極的に携わることができるのか?』『何を知ってもらい学びを深めてもらえるのか?』といった観点から意見交換の場を設け、発信のベースとしていきます。

今後の展望

現行法制度上、医療的ケア児(18歳以下)は重度訪問介護の枠組みに含まれておらず、居宅介護等の短時間サービスしか使えません。
そのため、土屋グループでは日中短時間サービスで取り組んでいく方針です。
短時間の支援とはなりますが、ケアを求めている方の「小さな声」をこぼすことなくキャッチし、支援を届けられる体制を作ることが必要だと考えています。
そして、そのためにもアテンダントが医療的ケア児への知見や理解を深めることが大切です。
今後は、医療的ケア児を取り巻く環境や必要とされている支援内容、そして医療的ケア児やご家族の考え方や向き合い方をしっかりと理解するためにもイベントや研修会のみならず、ケア児の支援に関わっている介助者やご家族の声を聴きながらアテンダントの理解を促進し、ケアの質も見極めながら、段階を踏んで支援構築という次のステップにつなげていきたいと考えています。

委員長メッセージ

医療的ケア児は重度訪問介護の利用対象外であり、福祉サービスを提供する事業者の不足から、サービスを受けたくても受けられない方がほとんどです。
そのため、ほぼすべてのケアをご家族が担い、孤立状態の中で睡眠時間もわずかしか取れずに疲弊しているのが現状です。

福祉サービスの支援が行き届かない理由としては、事業者不足の他に「ライフサイクルの近似性」が挙げられます。
多くのケア児が日中時間帯は学校等に通い、自宅に戻ると食事・入浴・就寝、そして夜間帯は家族がケアするというライフスタイルを送っています。
それ故、ご家族が事業者に期待するサービス内容と時間帯が重なることで18~19時に依頼が集中し、
当社のみならず他事業所もそれに応えられる環境を整備できず、ご家族が悲鳴を上げている。

当社は重度訪問介護を主軸としているものの、医療的ケア児はその対象外であることから、
ケア児の支援ならびにご家族のレスパイトの実現には当社の社会資源では限界があります。

一方で、当社では、すべてのアテンダントが医療的ケアの資格(喀痰吸引等第3号研修)を有しており、
この点が医療的ケア児ならびにご家族の生活を支える上での我々の強みとも言えます。

この人的資源を活用することで、医療的ケア児を取り巻く課題の解決に向けて当社が取り組めることは多くあると考え、
難易度の高いケア児に対する支援技術の向上などを総合的に学び合いながら、
当社におけるサービスの幅の拡充や提供体制の強化を図れる体制作りを考える場として当委員会を立ち上げました。

今後は新しい支援の在り方を作る必要性もありますし、重度訪問介護を利用できる年齢になった際には、生活介護や就労支援B型等のさまざまな社会資源を組み合わせて生活するスタイルも一つの在り方として考慮すべきとも考えます。

それと同時に、「18歳以下は重度訪問介護を使えない」という制度自体の見直しに向けて、国とのコネクションを生かしながら働きかけていくことも重要です。 医療的ケア児に対するサービスは、まだまだ未開発の領域であることから、当社を含め事業者自体の経験値が低い状態にあります。

だからこそ参入への心理的障壁は大きく、それらを取り除くべく、内外に対して発信・連携の必要性を強く感じています。
しかし、私が医療的ケア児の現場に入る中で、サービスを担うスタッフから強い使命感とやりがい、そして仕事に対する充実感が伝わってきました。

その時、もしかしたらケア児に関わることでスタッフの働く喜び、いうなれば従業員のウェルビーイングを高める機能も当委員会が果たしうるのではないかと期待しています。

今後、当委員会が、医療的ケア児そしてご家族の生活を日本全国で支えるような機関になっていければと願っております。

医療的ケア児地域生活推進委員会 
委員長 澤田由香

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