【高齢者地域生活推進委員会】第4回 勉強会レポート 2026年2月19日

【高齢者地域生活推進委員会】第4回 勉強会レポート

テーマ

入浴を断り続ける人 ~入浴拒否から「かたくなさ」への理解~

開催概要

日時:2026年2月19日(木)18:00~19:00
講師: 坂本孝輔氏(認知症専門の介護福祉士)

~「介護拒否」を本人の意思ではなく「かたくなさ(状態)」として捉える視点~

認知症のある人が入浴を拒む現象を、本人のわがままや拒絶(動詞(拒否))と捉えるのではなく、なぜそうなってしまうのかという「かたくなさ」として理解する必要がある。

「かたくなさ」は自己防衛。単なる声かけの工夫に頼るのではなく、本人のプライドや認知機能の低下による不安に寄り添い、「敵じゃない、この人は味方だ」という安心できる関係性を基盤とした「いいひとメソッド」の実践が、解決への鍵となる。

「半年以上お風呂に入れない女性」を事例紹介

アルツハイマー型認知症で独居。
徐々に気難しくなり家族を含めた介護を拒否、服薬や清潔保持も困難。
室温管理もできず体調悪化。入浴は夏に自宅のお風呂に数回入った形跡あり。

1.入浴拒否と認知機能

入浴という行為は、回復行為だが、健康な人が想像する以上に多くの工程と高度な認知機能などのエネルギーを必要とする。

「今日は調子が悪いが、明日は大丈夫だと思うから…」と思い、認知機能低下から半年以上お風呂に入れていないというケースもある。

複雑な作業工程化粧を落とす、脱衣、温度調整、洗浄、すすぎ、乾燥、着替え。
実行機能障害物事を段取りよく複数の作業を並行処理することが困難。
注意の分配転倒防止や清潔用品の使い分けなど、注意点が複数あり負荷がかかる。
体性感覚の変化温度に対する過敏さ、皮膚の痛みなどが負担でストレスになる。
判断力いつ入る?入らない。判断を間違えると思わぬ結果がおきる。
社会的認知自分と周りと人との関係を把握できていない。
自己客観視髪の毛がベトベトなのに、その事に気が付くことができない。
他者への信頼 職員や家族への信頼度。お風呂を誰かに手助けして貰うことへの負担。
2.「介護拒否」から「かたくなさ(状態)」へ

支援者が使用する言葉を変えることで、ケアの視点とアプローチを根本から変える。

  • 「介護拒否」の問題点 : 本人に明確な「拒否する意思」があることを前提としてしまい、スタッフが「拒絶された」と誤った判断をする原因となる。
  • 「かたくなさ」の利点 : 状態を表す言葉として用いることで、「なぜその人が『かたくな』になっているのか」という原因を分析する思考を促す。
3.「かたくなさ(状態)」が生じる心理的要因

本人が「かたくな」になる背景には、「防衛本能」や「自尊心」の維持が深く関わっている。

  • 信頼関係の欠如 : 相手を信用できない、または好感を持っていない。
  • 自己イメージとのズレ : 「自分はまだできる」という思いと、出来ない現実の間で苦悩。
  • 管理への抵抗 : 指示・管理されることへの嫌悪感や、自分の弱さを見せたくない防衛心。
  • 余力が必要 : 疲れや不安で頭がいっぱいになり、判断を先送りしたいという心理。
4.対人関係を解決する方法(信頼構築の技術)

▸いいひとメソッド(技術)
相手との心理的距離を縮め、「かたくなさ」を解きほぐすための技術的アプローチ。

・ステップ1 : 「嫌な人」と思われる言動(無理な誘いなど)をやめる。
・ステップ2 : 「いいひと」だと認識してもらえる態度を継続する。
・ステップ3 : 本心から「いいひと」である必要はなく、まずは「いいひと」を演じる技術として。
・ステップ4 : ケアを一人で抱え込まず、チームで状況を共有する 。

▸ザイアンス効果(単純接触効果)信頼の法則
同じ人と複数回(7回で好感、10回で顔認識)接触することで、関係性は「あんた誰」から「顔なじみ」へと進化する。

▸ユマニチュード : 短時間で安心感を与えられる方法(ケアの準備)

【結論】

入浴は認知症でなくても負担に感じやすく、「風呂キャンセル」という言葉が流行になる程、疲れていると避けがちな行為である。

認知症の人の入浴拒否は、認知機能低下や人間関係による「かたくなさ」の表れであり、自己防衛でもある。

それを、「拒否」と捉えず背景を理解し、「いいひとメソッド」で関わることが、より良いケアにつながる。

「何」を言うかより 「誰」が言うか が大切!

以上

第4回勉強会ポスター

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