わたしが介護士になったわけ~わたしの介護観~ / 松本 満(ホームケア土屋 関西)

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

1.年老いても
「年老いてもなお実を結び、命に溢れ、いきいきとし」(聖書)

「わたしたちは落胆しません。たとえわたしたちの『外なる人(=肉体)』は衰えていくとしても、わたしたちの『内なる人(=精神、魂)』は日々新たにされていきます。」(聖書)

人生80年だとしても、体力のピークが20代、知的に成熟するのが30~50代、60~80代は人格の成熟期だと言われています。年を取ると、身体的には衰えてきますが、その分、余計な力みや自我が消え、いわゆる「枯れた状態」になります。若い時のようなエネルギーはありませんが、年輪を重ねた巨木のような、ものに動じない姿が現れてきます。人生の夕暮れは、絶望の時ではなく、人生の成熟期で、落ち着いた最高の喜びにあふれた日々である、という意味だそうです。

そんな歳の取り方をしたいと思って、介護の世界に飛び込みました。
生産性や効率を重視した社会では、子どもや若者、高齢者や障害者を取り巻く環境は厳しいものがあります。
せめて「わたしが年を取ったときには、快適に暮らせる世界が実現すればいいな。それなら、今から、整えていく仕事ができたら・・・」と思ったのがきっかけです。

2.福祉の原理とノーマライゼーション
「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」(日本国憲法第13条)

「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(日本国憲法第25条第1項)

これまで、日本国憲法を特に学んだことはありませんでしたが、個人が尊重され、最低限度の生活を保障し、一人一人が幸福を追求することを国が保証してくれているなんて、すごい!と思いませんか?へえ、日本国憲法ってなかなかやるじゃんと思ったのと同時に、日本も捨てたものではないなと思いました。
経済や効率だけが優先され、一人一人が忘れられがちな社会ですが、皆、一度は学んだらよいのにと思いました。

現在、わたしが勤めている(株)土屋では、「小さな声に耳を傾けよう」をモットーに、単なる能率主義や経済至上主義ではなく、持続可能な開発目標であるSDGsに取り組んでいます。
どういった形で、永続的な自由や平等、公平な社会が形成されていくのか、まだまだ課題は多いですが、ぜひチャレンジしたい取り組みです。
たとえ高齢者であって、障害があっても、また病気があったとしても、普通に生活できるノーマライゼーションを目指したいです。

3.病気になっても病人になるな
ある訪問医師が語った言葉です。「人はみな老い、病気になり、障害を負い、死んでいきます。早かれ遅かれ、誰もが経験することなのです。わたしがよく言うのは、『病気になっても、病人になるな!』です。」

なるほど!と思いました。たしかに体は元気でも、心が死んでいる=病人であり得ることもあります。
逆に、体は不自由でも、心が豊かな人、生き生きとしている人もおられます。
体に不自由を覚えても、心が満たされるような環境づくりを支援していきたいと思います。

4.クライアントとの対話
わたしが仲良くさせていただいているクライアントは、社会経験もあり、わたしもつい相談したり、悩みを打ち明けたりしてしまいます。時には、ああじゃない、こうじゃないと言い合いになることも・・・。
そのクライアントに、何か目標をもって生活してほしいと思い、上記の医師の言葉を紹介しました。そしたら・・・

「松本さん、僕は頑張っているつもりだけど、もっと頑張らないといけないの?」と言われてしまいました。

その時、わたしはハタと気づきました。寄り添っているようで寄り添えていない、分かっているつもりで分かっていないのだな、と。本当に、その人の気持ちを理解することは難しいことですね。

わたしは謙虚になり、精いっぱい支援しようと作業をはじめましたが・・・クライアントから、「ああじゃない、こうじゃない。もっとこうして、ああして・・・」と言われ続けると、「僕らアテンダントも大変なんだよな~。分かってよ~」って心が叫んでいますー。(笑)
人間関係、難しいですね。

5.「励ます」という仕事
妻と子育てに関して口論になったとき、妻から、
「わたしは子どもの世話をしているんじゃない。育ててるの!犬や猫のように、餌をあげるだけだったら、誰でもできるわ!世話と育てるのとは、全く違うのだから!」
と論破されたことがあります。なるほど!確かに!・・・妙に納得してしまいました。

この妻の言葉を、介護をしながら時々思い出します。介護も同じではないでしょうか?
単に食事の介助をし、おむつを替え・・・いわゆる世話をしているのか、それとも、ADLやQOLの向上のために、あるいは生きがいにつながるような支援なのか、ということかもしれません。

聖書の中に、「互いに励まし合いなさい」という言葉がしばしば出てきます。
この「励ます」という言葉は、相手の立場に立って寄り添い、その人が自立できるように、必要なことを支援するという意味だそうです。決して、依存でも、やってあげるのでも、代わりにやるのでもありません。
これって、介護にも言えるのではないでしょうか。

寄り添うといっても、おこがましいかもしれませんが、自分だったらどうしてほしいのだろうと想像力を働かせながら、その人の力を最大限に引き出し、必要なところをさりげなく支える、まるでご本人が自分でしているかのように支援できたら、それこそ介護のプロなのかなと思う今日この頃です。

クライアントとアテンダントの協働、共生、互いに励まし合う、そんな関係づくりができたらと思います。

 

松本 満(まつもと みつる)
ホームケア土屋 関西

 

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