信頼とは / 古本聡(CCO 最高文化責任者)

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

土屋のバリューには、次に挙げる項目があります。

⑥ あらゆる人間関係の基盤は信頼、まず自ら信頼を提示しよう

その意味は、対内外どこでも、いかなる人間関係も信頼が最も大事だということを心に刻み、そしてその信頼はまずは自分が他者に対して提示することから始まる、ということを忘れてはならない、という事です。相手を「信じて頼ること・頼りにできると信ずること」なのです。

では、何故「信用」ではなく「信頼」なのでしょう。
それは、「信用」が相手の、これまでの実績を評価することに重きを置いて関係を築こうという態度であるのに対し、「信頼」は相手のこれからへの期待を前面に出していこうとする姿勢だからです。つまり土屋は、人間関係に対して未来志向的なのです。

さて、仕事の場では、同僚、自分と上司、自分と部下、他事業所や他チームのメンバー、とさまざまな人間関係が存在しています。それらの人間関係の性質や度合いが、チームや組織、会社全体がどう成長するかの重要な要因になると考えると、この「信頼関係」をどう捉えていけばよいのでしょう。

信頼は物ではないし、信用と違って記録データで表せないので無形で、見ることも触ることもできません。しかしながら、私たちは、信頼関係がある、ということは実感できます。そして、そう思い込むのです。

別の言葉で言いかえると、信頼関係とは、この「相手に対して信頼という思い込みを持つ実感を得ること」が大切なのではないかと考えられます。

それでは、チームや組織を成長させるために重要な信頼関係を構築するには何が必要なのでしょう。

このことを、私が実際に経験した事例で説明してみたいと思います。

部下のBさんは、上司のAさんを頼り切っていてどんな内容の相談でも、何でも答えが返ってくると思っていました。一方、Aさんは、Bさんから相談を受けても、Bさんには自分で考えて答えを導き出す力を身につけて欲しかったため、答えを簡単に出さないという方法を採っていました。ただし、Aさんの考えをBさんは知りませんでしたし、Bさんの考えも、Aさんには分かっていませんでした。

せっかくお互い、「Aさんを信頼しよう」「Bさんを育てたい」という想いを持ち合っていたのに、AさんとBさんとの間には、「何も答えてくれない上司」「自分で考えようとしない部下」という誤解が生じてしまい、不信感がつのっていきました。とても残念な状態でした。

この二人の間には決定的な間違いがあったのです。

それは、どちらの側からも「私はあなたのことをこう言う風に思っているよ」というコミュニケーションが日常の中で取られていなかったことでした。こういうコミュニケーションがなかった内は、お互い一方通行のまま、不信感を抱き、信頼関係の構築が不可能だったのです。

しばらく経ってから、上司Aさんの方からBさんに対してまずは言葉による働きかけがあって、Bさんもそれに呼応して、かくして二人の間には確かな信頼関係が成立していきました。

このように、信頼関係の構築には日々のコミュニケーションがとても大切なのだということが分かります。

これも、一度言った事があるから理解しているであろう、ではなく、「常日頃から」コミュニケーションを取り、様々な場面で伝えることで、信頼関係は培われていくのではないでしょうか。

信頼関係がある環境では、コミュニケーションが活発に取られ、人と人がお互いを知る機会が多く設けられ、より良く、深く知り合える機会が得られます。

その一方で、双方の思いに対する理解にズレが生じ、誤解が生じることもあるでしょう。
そんな時、お互いが、感情的になったり、不機嫌になったりしてしまう場面もあるかもしれません。ですが、そんな時こそ、コミュニケーションを加速させていくと、その中で自然とズレが修正され誤解が解消されていきます。

このようなコミュニケーションの積み重ねによって、チームや組織の中に信頼関係を高め、そして深める作用が生まれ、安心して話し合える関係が造り出されていくのです。これぞ、土屋でもよく言われている「心理的安全」なのです。

相手を先ずは自分から信頼しようという土屋のバリュー⑥は、他でもなくこの心理的安全を担保するための最も効果的な方法の一つが述べられているのです。

 

◆プロフィール
古本 聡(こもと さとし)
1957年生まれ

脳性麻痺による四肢障害。車いすユーザー。 旧ソ連で約10年間生活。内幼少期5年間を現地の障害児収容施設で過ごす。

早稲田大学商学部卒。
18~24歳の間、障害者運動に加わり、障害者自立生活のサポート役としてボランティア、 介助者の勧誘・コーディネートを行う。大学卒業後、翻訳会社を設立、2019年まで運営。

2016年より介護従事者向け講座、学習会・研修会等の講師、コラム執筆を主に担当。

 

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