地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記⑰ ~別れの季節に思うこと~ / 渡邉由美子

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

私は沢山の介護事業所の方の支援を受けて暮らしています。そんな中で自選介護人を専門に派遣してくださる事業所にも利用者登録をして、より自由度の高い暮らしを求めています。

自選介護人専門の事業所とのお付き合いは、まず自分で介護人材を探せるという前提で始まっていきます。大学生の介護者となって欲しい方に最初はボランティアで関わってもらい、続けて頂けるようであったり、興味を持っていただけそうだったりしたらアルバイトになってもらうという流れで、ここ3年くらいで導入した新しい介護を支える方法です。

今を去ること30年ぐらい前からボランティアさんを募るという形態で人材募集を毎年4月にかけていたものを、今の時代皆さん忙しいのにボランティアで関わり続けてもらうのも申し訳ないと思うようになり、アルバイトで介護をしてもらうことを考えたのです。

3月はその自選介護者達の入れ替わりが激しい時期で、せっかくここまで関係性を作ってきたのにお別れを言わなければならないのはとても辛いことです。

今年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、毎年対面でお店を予約して1席設けていた感謝の集いを開くことも出来ず、zoomで集まっていただき感謝の気持ちは何とか伝えることが出来ましたが、最後の思い出作りとしてはなんだか物足りない、何か忘れ物をしたような感じが拭いされない状況となっています。

zoomはとても現代的で便利なツールだとは思いますが、やはり、距離感があるので誰かが話していると話しづらかったり、話しだそうと思ったら被ってしまったりするので、司会進行役を務める事もとても難しいと感じ、参加者同士が話をするのが大変で、私と誰かが話しているとそれを他の人はひたすら聞くような状態となってしまい、忙しい中時間を作ってくれたのに申し訳なく思う状況となってしまいました。早くリアルに会って会食や会合が出来るようになって欲しいと思います。

学生さんを学生の間だけと分かっていながらにわかヘルパーにお願いして生活の一端を担ってもらう状況なので、会った時から別れが来ることは分かっている中で関係性を深め、深まってきた時には終了が見えているということの繰り返しではありますが、その時その時でその瞬間の生活が支えられていくということに心から感謝しながら一期一会を大切にして21年目の生活を歩んでいます。

今までは生活を支えるための介護を頼まなければならない状態で、話す話と言えば中心はいつの介護が埋まっていないとか、何月はいつ来られるかなど、どうしてもシフトを埋めるということを頭に置いた話ばかりしてしまう日々でしたが、社会人になっても忙しくても、もしお会い出来ることがあれば、今度は人と人として同じ厳しい社会を生き抜く者として楽しい話や知り得た知識を共有したいと思います。

いつもこれで終わりではなく、これからも会いたいという会話をして感謝の気持ちを伝え、私の家を巣立っていくのですが、現実はお互いの連絡も途絶えてしまうことが多く、次にその人の情報が入って来るときにはSNSを通じて結婚したとか、子どもが何人生まれたとか、勤めた病院や学校でこんなに偉くなったという事実を間接的に知るという事が多いのです。

トータルすれば何千人になるか分からない人たちに生活の一端を支えてもらいながら生きていく人生の醍醐味は健常者には絶対味わう事のできない事なのだろうと思います。ずっと私の傍に人が居なければ生きられない現実はやはりすごく特殊な生き方なのだと、春の風を感じながら常に思う今日この頃です。

重度の障がい者が施設や病院ではなく一般社会で暮らしていることを若いうちに知ってもらうことで、就職先がみんな様々なので、行った先々で障がい者を排除しない社会を自然に作っていく考え方の基礎になる一助となれば大変嬉しくもあり、ノーマライゼーションを広めていく手段の一つになってほしいと思います。

看護師になれば退院を考える患者さんに介護者を使って地域で生きるという選択肢を、リアリティを持って提示できるかもしれないですし、教師になれば普通学校に障がい児が入ってきても、共に生きることをベースに置いた健常児への教育が出来る可能性に繋がるかもしれないのです。

そして公務員になれば、障がい者だけではなくひとり親家庭や虐待児童、困窮世帯など様々な問題を抱える人たちに対して、少なくとも話をよく聞きもしないでけんもほろろに追い返すみたいなよく言われる血の通わない対応はしないと思うのです。

出来ることと出来ないことは当然あります。いま出来なくても対応の仕方は福祉を求めている人の気持ちに立てば違ってくると思うのです。

私たちはよく現場を見たこともない人が卓上で福祉や教育、医療の問題を制度として作り上げているから暮らしやすい世の中にならないと嘆きますが、今年の3月卒業した人たちが社会の一員となって活躍すれば誰もが生きやすい世の中となっていくと思います。若者たちの将来に幸多かれと思います。4年間、本当にありがとうございました。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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