三方よし、の理念 / 小林照

土屋ブログ(介護・重度訪問介護・障害福祉サービス)

江戸時代から明治時代にわたって全国で活躍した近江商人が大切にしていた考え方で「三方よし」があります。
売り手よし、買い手よし、に「世間よし」の社会貢献が加わったものです。売り手の利益だけを優先してはならない、さらに買い手のみならず、地域社会にとって良いこと、を大切にした考え方です。

近江商人は商いの場を、開発が進んでいた東海道を選ばず、当時まだ未開の地であった中山道を選んだといいます。競合しないとはいえ、山間部の行商は割りに合わなかったのではないでしょうか。

彼らは山里に暮らす人々の小さな声を聞き、需要を満たす大きな役割を果たしていました。営利優先ではなく、買い手に寄り添った商いだったことがうかがえます。そして、薄利を貯めて無償で学校や橋を建て、地域に貢献しました。

そのルーツを持つ方々が三方よしを理念として起業しました。現在では大手商社や一部上場へと成長した企業もあることから、この三方よしは広く知られています。昨年も大手商社が経営理念を三方よしに改訂し、原点回帰と注目されました。

「世間よし」は、行商していた当時の地域貢献から、現代ではグローバルな社会貢献へと解釈を広げることができます。事業を行うままが世間よしなのか、収益で世間よしをしていくのか、その両方なのか、など事業者の表現も多種多様です。

しかし、その心は、利己を戒め利他を重んじることで社会に必要とされる。さらに社会貢献してこそ、求められる持続可能な存在になること、を示していることにかわりありません。

また、三方を人間関係に置き換えることで、相手を思いやり傷つけないことの大切さや、二人が良くても、第三者や公を害しては続かないことが知らされます。倫理的にも誰かが犠牲になっている状況は長続きしない、させてはならないと思います。

二方よし、では上手くいかない。「世間よし」が入ることによって売り手よし、買い手よし、の意味合いも一気に深みが増し、三者が活き活きとバランスよく存在感を放ってくるように思います。

しかし、「世間よし」は言うほど簡単ではありません。
私も起業の経験がありますが、立ち上げの頃は、自社の利益確保で頭がいっぱいでした。それは利益なくして事業が継続できるか不安だったこともありますが、一番は信念なき起業だったから、と振り返ることができます。
恥ずかしながら社会に貢献する意識など皆無に等しいものでした。いまだ成長なき零細企業であるのも当然の結果なのかもしれません。

起業してからサブプライムローン問題、リーマンショック、欧州危機、東日本大震災、チャイナショック等、外部要因から突然窮地に立たされることだけでも数々ありました。そして今はコロナ禍…

厳しい苦境に立ったときなど、確固たる理念なき経営は、進むべき方向が見えず存在意義にすら迷うことを実感しています。
事業を行い継続する上で、「理念」は重く大事なものと今はよく理解できます。

一方、新生土屋はどうでしょうか。
ソーシャルビジネスに挑戦し、ケアサービスを広く遍く行き渡らせることを目的に設立されました。これは全ての人の命に関わる「世間よし」を目的としています。よって社内で立ち上がるプロジェクトの成功、その過程、そして何より日々の現場支援が「世間よし」そのものです。

さらにアテンダントよし、クライアントよし、これから出会うクライアントよし、そして、新生土屋の理念に基づいて行うことがそのまま社会よし、をバランスよく質良く継続することで、関わる人みながよし、が実現されていくように思います。

新生土屋には三方よしに勝るとも劣らないミッション・ビジョン・バリューがあります。

小さな声を自ら探し求めて、応え続けることは簡単なことではないかもしれません。ここには営利を目的とした企業とは大きな違いがあります。

しかし、具体的に示されたバリューから、そのミッションを誇り高く遂行しようとするとき、個人が、チームが、それまで以上の力を発揮し、困難なときには協力者や支援者が現れ、なんとか形になっていくことが想像できます。それは人材を大切にする姿勢と、利他を具現化する理念が、新生土屋にあるからです。

三方よしを経営理念の根幹とし起業した企業が、百年以上の歴史を持ち、今なお一部上場企業として、時代に合わせて成長を続けています。
新生土屋の未来はどうでしょうか。

一人ひとりに理念が浸透し、たくさんの種がまかれ、実を結ぶ。組織の大小関係なく、関わる人と社会よし、を実現し続けている。そして、小さな声を探し求め、チャレンジを続ける存在であることと確信しています。

 

◆プロフィール
小林 照(こばやし あきら)
1968年、長野県生まれ

学生時代は社会福祉を専攻し、介護ボランティアに携わる。2005年、不動産会社起業。現在は病気を機に仕事をセーブし、死生観、生きる意義を見直し、仏教を学び中。

 

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